Connecticut, US

アメリカ移民法ダイジェスト 2019年11月・12月合併号

明けましておめでとうございます。旧年中は、大変お世話になりました。

さて、年をまたいでしまいましたが、昨年11月と12月に発表されたアメリカ政府の移民法に関する方針の内、日系企業に大きな影響を与えるであろうと思われる3点をまとめました。本年も、アメリカの移民法では企業のビジネス活動や社員の派遣、現地社員の採用に影響をするであろう大きな変更が予想されております。ニュースレターを、皆様の今後のご方針にお役立ていただければ幸いです。今年も、どうかよろしくお願いいたします。

 

  1. アメリカ連邦政府の出入国管理や移民システムを司る機関が、2019年秋以降の連邦規制の変更予定を発表
  2. 国務省は、10月末に発表したブランケットLビザ審査における新しい審査基準を撤回しました。しかし、将来の変更が予想されています。
  3. 米国移民局は、申請料の料金体系を大幅に変更します

 


 

1. 連邦出入国管理や移民システムを司る機関が、2019年秋以降の連邦規制の変更予定を発表

 

概要:

国土安全保障省は、向こう数か月における移民法関連規則の見直し計画の中で、L-1社内転勤者用ビザの適格基準を強化し、L-1プログラムに賃金義務を課す新しい計画を発表しました。

今回発表した規則変更の議題には、現行ルールを変更して、ビザスイタスを違反した者に重大な罰則を課することも予定されています。

加えて国土安全保障省(DHS)は、H-1Bの適格性と賃金の基準を高め、H-4雇用許可プログラムを撤回し、EB-5プログラムをさらに制限し、F-1ビザ保持者のプラクティカル・トレーニングプログラムを制限し、雇用ベースの移民ビザ申請書(Form I-140)とAdjustment of Status申請を同時に移民局へ提出できる現在の方法を廃止することも検討しているようです。

 

詳細

DHSと国務省は、2019年秋の規制見直し計画を発表しました。これは、今後数か月間の各機関の移民規則制定の優先事項の発表です。計画が最終的に認められた場合、これら変更される規則は、H-1B、L-1、およびEB-5プログラム、H-4雇用許可、ステータス提出手続きなど、様々なビザと審査プロセスに大きな影響を与える可能性があります。

 

以下は、政府機関の移民法に関するアジェンダの内、日本企業に影響を与える可能性がある、就労ビザや雇用ベースのグリーンカード申請に重要な項目をまとめたものです。すべての場合において、提案および最終規制の詳細は、発表されるまで外部に公表はされません。また、発表予定日は変更される場合があります。

 

H-1BおよびL-1ビザの改革。 H-4雇用許可の終了

 

2020年9月に発表が予定されているDHSの規則見直しのアジェンダに、新たにL-1Bビザ申請で求めらる専門知識、およびL-1ビザ申請における雇用主と従業員の関係を再定義する提案が加わりました。この変更提案は、L-1雇用主に新しい賃金義務を課すともみられていますが、どのような義務を課すことになるのかはわかりません。H-1Bビザとは異なり、現在L-1ビザは賃金要件の対象ではありません。

 

DHSは、H-1Bビザ申請における専門職業の定義を変更し、最も優秀な外国人を獲得できるようにすることを意図しています。当初、今年8月に一般から意見を求める為に発表予定でしたが、現在の予定では2019年12月に発表の予定です(注:本稿発信の時点で、未だ発表されていません)。この規則は、H-1Bビザ保持者が他社や客先などいわゆるオフサイトで働く雇用体系に焦点を当てつつ、「雇用」および「雇用主と従業員の関係」の定義を改訂することが見込まれています。この提案は、H-1Bビザ申請における賃金条件にも対処するであろうと考えられています。

 

ある一定の条件を満たすH-4ビザ配偶者が雇用許可(EAD)を申請できる現行ルールを取り消すルールは、現在2020年3月に発表される予定です。このルールの詳細も未だ何もわかっておらず、例えば有効なEADを所持するH-4ビザ保持者が、取り消しルール発表後もEADの有効期限まで就労が許されるのかもわかりません。

 

留学生の滞在期間とプラクティカルトレーニング

 

特定のF-1保持者およびその他の非移民ビザ保持者でI-94の有効期限にDuration of Status(D/S)と記載される外国人に対し、現行のD/Sという扱いから、I-94期限を特定期日までに変更するImmigration and Custom Enforcement(ICE)による提案は、2020年2月の発表が予定されています。現行ルールでは、D/Sと期限が記載された者は許可された活動の終了日(および適用される猶予期間)のいずれかの日付まで、米国に留まることが許可されます。

 

さらに、FビザおよびMビザの外国人学生が利用するプラクティカルトレーニングルールを改訂するというICEの提案は、2020年8月に発表が予定されています。この提案では、現在12ヵ月間の研修が許されているプラクティカルトレーニング、STEM分野を専攻した外国人学生のプラクティカルトレーニング期間の延長、そして在学中のプラクティカルトレーニングそれぞれの制限を求める予定です。

 

出張者ビザ

 

DHSと国務省は、B-1 / B-2ビジネス(B-1)または観光(B-2)ビザで許される活動内容を制限し、法律を厳密に履行するための規則を提案する予定です。この規制は、当初2019年10月に提案が予定されていましたが、現在は2020年3月に予定されています。これらの制限には、B-1 in lieu of Hビザと呼ばれるH-1Bビザの代わりにB-1を使用するなど、B-1の訪問者が一定の条件下で米国で仕事をすることを許可する現行ポリシーの削除が含まれる可能性があります。関連する国務省規制の修正案は、B-1ステータスにおける就労を同様に制限します。この提案は2019年12月に予定されています。

 

非移民ステータス違反に対する罰則

 

新しい提案では、不法滞在及び3年・10年のアメリカ入国禁止に関するDHSのポリシーを成文化しようとしています。この提案では、外国人が非移民滞在の条件に違反した場合、例えば、就労ビザで滞在している外国人が、副業として別の会社でも働いたり、ビザで許可されていない活動に従事した期間を不法滞在期間とみなし、結果的に3年または10年の再入国禁止の対象とする可能性があります。

 

グリーンカード申請の審査

 

グリーンカード申請手続きの工程の1つであるAdjustment of Status申請と呼ばれる手続きの申請方法を変更する提案は、2020年4月に発表される予定です。変更案では、現在の申請方法であるAdjustment of Status申請とImmigrant Visa Petition (別名、I-140 petition)の同時申請ができなくなります。この提案が通れば、雇用ベースのグリーンカード申請に大きな影響を与える可能性があり、Adjustment of Status申請やそれに伴う就労・海外渡航許可証の申請提出が遅れることになります。

 

申請料の値上げ

 

米国国務省は、非移民および移民ビザ申請手数料を含む領事申請手数料を引き上げる予定です。提案された料金規則は、2019年11月に予定されています。当初は2019年7月に予定されていました。但し、本稿発行時点で、まだ値上げは発表されていません。

 

今後の予定:規則変更の予定と現在の移民プログラムへの影響

 

政府機関が発表した規則変更に関するアジェンダは、現在の就労ビザやグリーンカードプログラムに即座に影響を与えるものではありませんが、H-1B、L-1、EB-5、およびH-4 配偶者の就労許可プログラムの制限を目論むトランプ政権の計画の最も明確な兆候です。企業は、将来の移民ニーズを計画する際に、今後の政府機関からの規則変更提案に留意する必要がありますが、規則変更は予定通り進まないことが常であり、変更発表予定日の延期が一般的であることにも注意する必要があります。ほとんどの場合、政府機関は予め定められた行政手順に基づき、規則の変更案を発表します。そして、これに対しては個人および企業が意見などのフィードバックを提供できるようにするコメント期間が含まれますが、すべての規則変更提案に対しコメント期間が必ず設けられるわけではありません。提案された規則の変更案は、当局が規制承認プロセスを完了するまで発効しませんが、通常は数か月以上かかります。

御社が規則変更案に対しコメントを希望される場合は、御社の案件を担当する当事務所の弁護士または当事務所のGovernment Strategies and Compliance Groupに連絡してください。

この記事は、情報提供のみを目的としています。ご不明な点がありましたら、当事務所日本企業グループまでお問い合わせください。

 

 

2. 国務省は、10月末に発表したブランケットLビザ審査における新しい審査基準を撤回しました。しかし、将来の変更が予想されています。

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概要

国務省は、申請者が「明確で説得力のある証拠」によってLビザ申請資格を満たしていることを示すよう求める10月末に発表したブランケットLビザ申請の新たな審査ガイドラインを撤回し、申請資格を満たしていることを直ぐに判断できない場合は申請を否認する元のガイドラインへ戻すよう、領事に指示しました。

しかし、国務省と米国移民局および入国管理局は、新しいL-1ビザの資格ポリシーを策定中であるとしています。

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詳細

国務省は、申請者が「明確で説得力のある証拠」によって自らがLビザ申請資格を満たしていることを示すようにとしたブランケットLビザ申請の新しいガイドラインを撤回し、申請者が申請資格を満たしていることが直ぐに判断できない場合は申請を拒否するという、これまでの審査ガイドラインに戻すよう指示しました。

 

長年の審査ガイドラインでは、ブランケットLビザ申請者は領事に対し、「明確に承認可能(clearly approvable)」であることを自ら証明する必要があります。10月末に導入され、そのすぐ後に撤回された「明確で説得力のある証拠」を求める審査のガイドラインは、このClearly Approvableというガイドラインを変更するものではありませんでしたが、本格的に導入されれば恣意的に利用され審査が厳しくなり、申請が頻繁に却下されることが懸念されていました。

 

雇用主と外国人にとってこれが意味すること

 

撤回されたとは言え、今回の動きは領事がブランケットLビザ申請に対し綿密に精査する傾向が続くことを意味すると考えるべきでしょう。ここ数年、アジアや欧州の一部そしてカナダの米国大使館・領事館での審査は厳格化が顕著ですが、今後はこれが他の米国大使館・領事館にも広がる可能性があります。国務省は審査基準の再解釈を撤回しましたが、ブランケットLビザ申請に関する将来の改訂は政府の視野に入っています。 Society for Human Resources Managementの最近の会議で、国務省および米国移民局の高官は、ブランケットLビザの資格に関する新しいポリシーを策定中であることを示唆しています。

 

当事務所では、今後のLビザに関する政府のポリシー変更の動向を注視し、新たな動きがあれば続報をお送りします。

 

 

3. 米国移民局は、申請料の料金体系を大幅に変更します

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概要

Adjustment of Status申請とそれに付随する申請に関する申請料、また帰化申請の申請料は現行費用の倍になります。

移民局は、H-1B、L-1、およびその他の非移民のケースタイプに対して、個別の料金と申請用紙を設定します。

移民局は、特急審査要請に対するタイムラインを現行の15暦日からほぼ3週間に延長します。

亡命申請者および他の人道支援申請者には、新たに追加料金が課せられます。

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詳細

11月14日に連邦官報で公表された規則制定案の通知によると、国土安全保障省(DHS)が提案した新しい申請料金のスケジュールでは、ほとんどの請願者と申請者の費用負担が増え、多くのケースタイプに新しい申請書類と料金を課すことが予定されています。

 

Adjustment of Status申請とそれに付随する申請に関する申請料、また帰化申請の申請料は現行費用の倍になります。就労ビザの申請を行う雇用主に対しては、嘆願申請を行うビザの種類に応じて、申請料が最大77%値上がります。

 

申請料の引き上げに加えて、この提案では特急審査要請を伴う申請に審査期間を、現在の15暦日からほぼ3週間に増やし、亡命申請者とDACA申請者に新しい手数料を課し、H-1BおよびL-1従業員の割合が高い雇用主に対しては、追加の国境警備料金を支払うことを課すようになります。

 

提案内容と主要な手数料の変更をまとめたチャートを以下に示します。 移民局は、公開後30日間にわたり提案内容に対する一般からの意見を受け入れます。

 

H-1B、L-1、およびその他の雇用ベースの非移民申請の申請料値上げと新しい申請用紙



非移民請願申請案件の準備と処理の大幅な変更として、DHSは標準の申請用紙であるForm I-129をビザ分類ごとに異なるフォームに分け、そしてビザ分類ごとに異なる料金を課すことを提案しています。Form I-129に伴う申請に加算されている現在の460ドル(申請するビザの種類に関係なく、一律に同じ申請料が設定されています)の代わりに、提案によると、雇用主は申請するビザの種類に特化した固有のForm I-129を新しい申請料金と共に提出します。この変更は、H-1B、H-2A / B、L-1、O、およびTNビザを含む、Form I-129を使用して申請する対象になっている全ての就労ビザに影響します。 提案されたH-1Bビザ申請料金の引き上げは22%で、560ドルです。最も大きな値上げの1つはL-1ビザ申請に課す申請料で、USCISに提出されたL-1の初回または延長の各請願の現在の雇用主が現在支払う金額よりも77%高い815ドルとなります。

 

 特定のH-1BおよびL-1雇用主に対する追加の国境警備費の支払い

 

DHSは、H-1BおよびL-1従業員の割合が高い雇用主が、国境警備費を支払う必要がある場合の方針を変更することも提案しています。現在、従業員が50人以上で、その50%以上がH-1BまたはL-1ステータスにある雇用主は、初期および雇用主変更のH-1B請願ごとに追加で4,000ドルの追加料金を、L-1ビザ申請の場合はそれぞれの場合で4,500ドルの追加費用を支払う必要があります。今回の提案では、この対象を延長申請にも広げることになります。

 

Adjustment of Status申請とそれに付随する申請の新しい申請料金体系

 

DHSは、Adjustment of Status申請の申請料や、同申請の申請者が申請できる雇用許可や海外渡航許可に伴う申請料の大幅な値上げも提案しています。現在、Adjustment of Status申請者は1,225ドルの申請料を支払います。この料金には、Adjustment of Status申請自体と、初回の雇用許可証(Employment Authorization Document- EAD)および海外渡航許可証(Advanced Parole -AP)の申請が含まれます。

 

今回の値上げ提案では、このような複数の申請を束ねた料金の廃止を目指しており、代わりに新規および更新するEADおよびAPに対して個別の料金を必要とします。Adjustment of Status申請とEADやAP申請を含めた申請料金は2,195ドルに引き上げられ、申請者はEADおよびAPの更新ごとに、それぞれ490ドルおよび585ドルの料金を支払う必要があります。

 

特急審査処理の審査期間の延長

 

DHSは今回のルール作りに便乗する形で、特急審査(premium processing services)要請を伴う申請の審査期間を、現在の15暦日から15営業日に延長することも提案しています。これにより、裁決が1週間延長されます。また、この提案は、特急審査料金の引き上げを発表する際に、DHSが正式なルール作成プロセスを回避しようとする可能性があることを示唆しています。

特急審査対象の申請の審査期間を延長するという提案は、DHSが特急審査の費用を1,410ドルから1,440ドルに引き上げることを発表してから数週間後です。この費用の値上げは、2019年12月2日に実施されました。

 

人道的ビザ申請者への影響

 

前例のない動きとして、DHSは亡命または国外退去要請撤回の申請者に対し、申請を処理するために50ドルの手数料と、最初の雇用許可証(EAD)申請のために490ドルの手数料を支払うことを提案しています。この種の人道的保護を求める人々に、この種の料金が課されることはこれまでありませんでした。

DHSはまた、DACA(Deferred Action for Childhood Arrival -未成年の頃に親に連れられ不法入国した外国人への救済処置)の更新申請に、275ドルの新しい料金を提案しています。既にDACAの救済処置を受けている外国人は、更新の際に申請用紙(I-765)に490ドルの申請料金を加えて申請します。現時点では、USCISがこの救済処置を受けていない外国人からの初回申請を受け付けていない為、DHSは初回のDACA要請申請の申請料は提案していません。アメリカの最高裁判所は、今年11月にトランプ政権によるDACAプログラムの終了に対する異議申し立てについて口頭弁論を聴取しており、2020年夏に判決が下される可能性が高いと思われています。最高裁の判決および/または議会の関連する動きは、今回提案された申請料に影響を与える可能性があります。

 

生体認証手数料の変更

 

DHSは、Adjustment of Status申請、Form I-539という申請用紙を伴う在留資格の延長や変更申請、帰化申請など、ほとんどのケースタイプに対して85ドルの生体認証サービス料を廃止することを提案しています。政府は、このサービスに対して個別の支払いを要求するのではなく、代わりに生体認証を収集する費用を上記の各申請の申請料に組み込んで請求する予定です。

 

移民局の費用とImmigration and Custom Enforcementのオペレーション

この提案は、移民局が聴収した申請料の内2億700万ドル以上を、Immigration and Custom Enforcement (ICE)のオペレーションに割り当てます。この提案は、トランプ政権の2020年度予算要求と一致しています。

 

雇用主および申請者にとっての料金提案の意味

 

今回の新しい申請料は提案段階であり、連邦審査のプロセスを経て、最終的に確定するまで導入されません。通常、このプロセスには数か月以上かかります。今回の政府提案の多くは斬新であるため、米国移民局には企業を含めた利害関係者から多数のコメントが寄せられるものと予想されており、承認されるにはいつも以上に時間がかかる可能性も高いでしょう。

御社が政府の提案についてコメントを希望される場合は、御社の案件を担当する当事務所の弁護士または当事務所のGovernment Strategies and Compliance Groupに連絡してください。

 

雇用ベースの各種ビザ申請の料金変更案

一般的な雇用ベースおよびそれに関連する各種申請の新しい申請料は、次の表をご参照ください。

 

申請用紙番号

現在の申請料金

提案された申請料金

値上げ幅(値下げ幅)

非移民ビザ申請

 

 

 

Form I-129H1(H-1BビザやH-1B1ビザ申請)

$460

$560

22%

Form I-129L(ブランケットLビザ申請を含めたLビザ申請)

$460

$815

77%

Form I-129E & TN(E-1, E-2, E-3, TNビザ申請)

$460

$705

53%

Form I-539(EビザやLビザ帯同家族の延長申請や在留資格変更申請)

$370

$400

8%

移民ビザ申請

 

 

 

Form I-140

$700

$545

-22%

Form I-485

$1140

$1120

-2%

Form I-765

$410

$490

20%

Form I-131

$575

$585

2%

就労許可(Form I-765)や渡航許可(Form I-131)、生体認証(Biometrics)費用を含めたAdjustment of status申請を行った場合の合計額

$1225

$2195

79%

Form I-90

$455

$415

-9%

帰化申請

 

 

 

Form N-400

$640

$1170

83%

 

この記事は、情報提供のみを目的としています。ご不明な点がありましたら、当事務所日本企業グループまでお問い合わせください。