アメリカ移民法ダイジェスト 2020年7月/8月合併号
September 2, 2020
1. 学生ビザ: 国土安全保障省は、2020年秋からの新入生に対し完全オンライン授業による履修を禁止
概要:
- 国土安全保障省の発表によると、F-1ビザの新入生は、2020年秋学期に完全にオンラインの学習コースを米国で受講することはできません。
- 国務省は、今秋完全にオンラインのプログラムに登録している新入生にはビザを発行せず、米国税関・国境警備局(US Custom and Border Protection -CBP)も入国を認めません。
- F-1へのステータス変更の要請を移民局により許可された学生が、この秋に完全オンラインの就学を行った場合は、学生ステータスに違反したと見なされる可能性があります。
- 2020年3月9日時点でF-1学生ステイタスを維持していた学生は、学校の指導形式に関係なく、就学を続け、F-1ビザを取得し、同ビザで米国に入国することができます。
問題
アメリカ政府の学生および交換ビジタープログラム(Student and Exchange Visitor Program - SEVP)の発表によれば、2020年秋学期中、完全にオンラインで授業を行う学校に通う予定の新入生は、F-1ビザでアメリカへ入国し、または移民局を通じF-1資格へ移行し、オンライン授業を履修することはできません。2020年 3月9日の時点で、政府のシステム(SEVIS)上F-1学生として登録されていて、その日以降も学生ビザステイタスを維持していた学生のみ、政府が3月20日に発表したCovid 19に伴うオンライン学習に便宜を図る指針に基づき就学を続けることができます。
今回の新しいポリシーは、国務省が2020年秋学期に完全にオンラインのプログラムに登録している新入生にF-1ビザを発行せず、CBPがこれらの学生を米国に入国させないことを意味します。 米国移民局によりF-1ステータスへの変更申請が許可された外国人は、完全なオンラインプログラムに参加すると、学生資格を違反したものと見なされます。在留資格をF-1に変更手続き中の場合、就学予定の学校が完全にオンライン形式で授業を行う予定であったり、申請者の履修授業が全てオンライン授業の場合は、ステータス変更申請は否認されます。これらのポリシーは、M-1ビザを申請する職業訓練生にも適用されます。
アメリカ政府は学校の留学生担当職員に対し、米国外にいる、授業を完全にオンラインで受講する予定の新規F-1ビザ申請予定者に対し、F-1ビザ申請に必要なForm I-20を発行しないように指示を出しています。この指示は、米国内で移民局を通じ学生以外の資格から学生資格へ在留資格を変更する外国人へForm I-20を発行することにも影響を与えるようです。
背景
今回のSEVPの発表は、SEVPのオンライン学習へのポリシーに対するこれまでの一連の目まぐるしい変更に続くものです。 政府は、3月にCOVID-19の緊急事態への対応としてオンライン学習へ便宜を図るためのいくつかの対応策を発表し、その便宜はCOVID-19への対応期間中ずっと継続すると述べました。オンライン学習下でも学生ビザを維持できるという、これまでの方針を緩和した対応策に基づき、F-1ビザの学生は米国に留まりつつ、従来より多くのオンライン授業を履修しながら、学生ステイタスを維持することが許されてきました。
ところが、7月上旬にSEVPは上記の方針を突然変更しました。いくつかの大学と米国の州がこの変更に異議を申し立てる訴訟を起こし、7月14日には訴訟の1つに対応して、国土安全保障省は再び方針を変更した。政府は7月の変更発表を取り消し、2020年3月時点の方針に戻すと発表した。今回の最新のSEVPの発表は、政府が3月発表のガイドラインを解釈して、オンライン学習への便宜は既存のF-1学生のみに限ることを示しています。
既存のF-1学生
3月9日時点でSEVIS 上有効な学生ステータスにあり、その日以降もステータスを維持している学生は、SEVPの2020年3月の方針に従って、2020年秋に米国で完全にオンラインのプログラムに参加できます。
これは、3月9日時点で海外からアメリカの大学のオンライン授業を履修していた学生にも当てはまります。理由は、3月の方針は米国国外にいる学生も対象にしているためです。
3月9日から合法的な学生資格を維持している学生は、新しいオンライン学習コースを開始したり、対面/オンラインのハイブリッド学習コースに参加したり、ハイブリッドからオンラインだけの授業へ切り替える場合も米国に留まることができます。すべての場合において、学生と学校は政府への報告要件を遵守する必要があります。
学校による手続き変更計画およびForm I-20の発行
2020年秋の手続き変更計画をすでにSEVPに提出している学校は、さらに実質的な変更がない限り、計画を再提出する必要はありません。
SEVPの7月上旬のガイダンスに従ってFビザまたはMビザの学生にForm I-20を既に発行している学校は、フォームI-20の更新が必要となる他の実質的な変更がある場合にのみ再発行する必要があります。
Practical Training期間中のF-1学生への影響
大学・大学院を修了し、12か月のOptional Practical Training(OPT)またはSTEM OPTの延長期間を利用し働いているF-1ビザ保持者は、今後もSEVPのオンライン学習ポリシーの影響を受けません。この方針は、学生がF-1ステータスを維持している限り、学習コースに在籍しており、カリキュラム実習(CPT)の期間に従事している人にも影響を与えません。
学生ビザ発給
3月9日からF-1ステータスを維持している留学生は、米国領事館でF-1ビザを申請できます。国務省は、オンライン学習に関するSEVPの最新のガイダンスを認識していると述べています。
実際には、COVID関連のアメリカ入国制限および領事業務の一時停止により、学生のビザ取得が妨げられる可能性がありますが、国務省は、一部の米国領事館がビザサービスの段階的再開を開始するため、学生ビザの発行を最優先事項としています。同省はまた、イギリス、アイルランド、およびヨーロッパのシェンゲン圏から留学する学生のためのいくつかのCOVID関連の入国制限を緩和すると発表しました。これらの分野での学生ビザ発行の手順と方針は、各米国領事館が個別に導入しています。
この次に起こる事
オンライン学習に関するSEVPの最新方針の発表により、多数の新しい留学生が当初の予定どおりに米国で勉強を始めることができなくなります。大学と米国の州は、今回の方針に対し訴訟を通じて救済を求める可能性があります。
このニュースレターは、情報提供のみを目的としています。ご質問がございましたら、当事務所の弁護士までご連絡ください。
2. 米国-カナダおよび米国-メキシコの越境制限を、9月21日まで延長へ
概要
- 米国とメキシコおよび米国とカナダの国境を越えての必須の旅行だけを許可するアメリカ政府の越境制限は、9月21日まで延長されることになりました。この制限は、空路によるアメリカ入国には影響しません。
- 必須の旅行には、米国市民、合法的な永住者、および米国で働くために渡米する外国人による旅行が含まれます。
- ビザ免除プログラムを利用する、またその他のビジネス旅行者は、国境で追加の諮問を受ける可能性があります。
- 「必須でない旅行」は許可されていません。これには、観光またはレクリエーションと見なされる旅行が含まれます。
問題
米国税関国境警備局(CBP)は、トランプ政権による米国国境を越えた「必須でない」旅行およびメキシコおよびカナダとのフェリー旅行を、9月21日まで引き続き禁止しました。この越境制限は、8月20日に期限切れになる予定でした。
米国の北と南の国境を越えた必須ではない旅行の禁止は、COVID-19の発生に対応して3月21日に始まりました。当初は4月20日に期限が切れる予定でしたが、延長期限が幾度か延長され、現在は8月20日に失効を予定していました。COVID19の緊急事態の状況に応じて、更なる延長の可能性について再度見直される可能性があります。尚、この入国制限は、カナダからの空路による入国には影響しません。
詳細
CBPは「必須でない」旅行を、観光、ギャンブル、文化イベントへの参加など、原則観光またはレクリエーションと見なされる旅行と定義しています。
新しい制限の下で国境を越える「必須」の旅行には、次のものが含まれますが、これらに限定されません。
- 米国に帰国する市民および合法的永住者
- 国境を越えた合法の貿易のための旅行(例:貨物を運ぶトラック運転手)
- 米国で働くための旅行
- 医療目的で旅行する(例:米国で医療を受けるため)
- 教育機関に通うための旅行
- 緊急対応および公衆衛生目的での旅行(例:COVID-19またはその他の緊急事態に対応する政府の取り組みを支援するために米国に入る政府職員または緊急対応者)
- 米国に帰国する米軍のメンバーとその配偶者および子供たちの旅行
- CBPがケースバイケースで決定するその他の旅行形態
また、政府は貿易や出張の為の越境は、追加の審査の対象となることを表明しています。実際には、3月21日以降、出張者の扱いに一貫性がありません。
これが雇用主と外国人にとって何を意味するか
既存のガイダンスでは、米国市民や永住者、および外国人は、国境制限の期間中でもカナダとメキシコの国境を越えてアメリカへ入国することはできます。ただし、CBPの係官は入国希望者の審査に関し幅広い裁量権を持っているため、外国人出張者は米国での雇用や出張業務内容ついて詳細な質問を受ける可能性に留意してください。
3. 米国移民税関法執行機関(US Immigration and Custom Enforcement)は、Form I-9の記入や管理規則に準する為の、COVID 19対応の暫定ルールの適用期間を、さらに9月19日まで延長します
概要
- 今も続くCOVID-19緊急事態のため、米国移民税関法執行機関(US Immigration and Custom Enforcement-ICE)は、Form I-9を作成する際の書類確認を遠隔で行うことを許した現在の暫定方針を、2020年9月19日まで延長しています。更にICEは、3月に公布されたI-9の監査通知に対し、これ以上対応期間の延長は認めないと発表しました。
- 雇用主は、暫定方針の有効期限が切れるか、またはCOVID-19の緊急事態が終了してから3日後のいずれか早い日まで、従業員の身分証明や雇用許可書類の確認をする際に、本人の立ち合いを義務付ける必要はありません。
- 緩和されたこの暫定方針は、COVID-19緊急事態のために会社の従業員が自宅など遠隔で仕事をしている場合にのみ適用されます。
詳細
ICEは、新規雇用者のForm I-9を作成する際に、提出された就労許可や身分証明の書類のオリジナルを確認を義務付ける通常の方針の緩和をさらに2020年9月19日まで延長することを発表しました。したがって、雇用主は、COVID-19緊急事態の間、Form I-9作成に伴う書類の検証を引き続き遠隔で行うことができます。 ICEはまた、7月19日以降、企業が3月に受け取った監査通知への対応延長は認めないことを改めて発表しました。
暫定方針とその限度
暫定方針では、COVID-19により従業員が自宅など遠隔で仕事をしている企業は、緊急事態が終了するまで、従業員の立ち合いのもとで身分証明書および雇用許可書を確認する必要はありません。この残的な緩和方針は、100%遠隔で仕事がされていない職場や、一部の従業員が出勤して仕事をしている職場では許可されていません。 ICEはまた、新しく採用された従業員が州や地方時自治体の方針により自己検疫やロックダウンの対象になっている場合は、ケースバイケースでこれらの遠隔検証の利用を許可する場合があります。これらの緩和方針を利用する雇用者は、遠隔による入社及びテレワークの会社方針を、各社員用に文章で残しておく必要があります。オンボーディングおよびテレワークポリシーを各社員へ文章で提供する必要があります。
暫定方針を使用する条件を満たし、またそれを使用する雇用主は、Form I-9のセクション2に記載する書類を、ビデオ、ファックス、または電子メールを通じ遠隔で検証し、その書類のコピーを保持する必要があります。 尚、法律上Form I-9を完成には時間的な制約がありますが、この点はこの暫定方針下でも変更はありません。Form I-9のセクション1は従業員が就業を開始する日までに完了し、セクション2は開始日から3営業日以内に完了する必要があります。
この暫定方針の利用は、義務ではありません。雇用主は、雇用主に代わって確認を完了するための代理人の使用を含む、通常のForm I-9作成手順を引き続き履行することができます。
暫定的な方針は、当初2020年5月19日で失効予定でしたが、その後3回延長され、直近では2020年8月19日まで延長されました。これらの手続きは、現在も続く緊急事態を考慮して、さらに延長されています。この暫定方針は、新たに設定された失効日(9月19日)、または国家の緊急事態が終わってから3日後のいずれか早い方まで、継続されるでしょう。また、 COVID-19緊急事態に応じて、さらに延長される可能性もあります。
I-9監査への対応期間の延長はありません
ICEの発表は、3月に発行された監査通知に対応するための期間延長はしないという方針も確認しました。 COVID-19の緊急事態の発生時に、ICEは、2020年3月に監査通知を受け取りながらも、まだ監査に応答していない雇用主には、応答するまでの期間を自動的に60日間延長しました。この配慮は、5月と6月にさらに30日間延長されました。しかし、先月ICEは、6月の延長が最後になることを示していました。
緊急事態が終わった後に何が起こるのか
今回の暫定方針に基づきI-9の作成を行っていた雇用者は、通常の業務が再開されれば、3営業日以内に、緊急事態期間中に遠隔でI-9の確認を行い、勤務を開始していた全ての社員のI-9関連書類を実際に確認しなければなりません。雇用主は、通常の業務が再開された後に対象者の雇用許可証明書類を実際に確認し、Form I-9のセクション2の追加情報欄に実際の書類確認が遅れた理由として「COVID-19」と記載する必要があります。書類を実際に確認したら、雇用主は確認日が記載された「実際に確認した書類」をセクション2の追加情報欄(または、I-9の再確認(Reverification)の場合はセクション3)に追加する必要があります。
4. 米国移民局は、企業や申請者が移民局へ支払う申請費用を大幅に値上げし、申請料金体系の大幅な変更を決定しました
- 今回の決定を受け、グリーンカード申請の最終過程であるAdjustment of Status申請やそれに伴う申請の申請料は、倍増します。
- 移民局は、H-1B、L-1、およびその他の非移民ビザのタイプについて、個別の料金を設定し専用のフォームを作成します。
- 移民局は、特急審査(Premium Processing Service)における審査期間を、これまでの15歴日から約3週間に増やします。
- 亡命申請者およびその他の人道的申請者は、新規および追加料金の対象となります。
- 新しい申請料は、2020年10月2日以降の消印の申請に対し発効する予定です。
問題
8月3日に発表された最終規則によれば、2020年10月2日に発効する予定の新しい移民局申請料は、ほとんどの申請主体者と申請者にとっては値上げとなり、多くのケースタイプに対し新しい申請料と手数料要件を課します。
最終規則の下では、Adjustment of Status申請とそれに付随する申請の申請料の合計がほぼ2倍になり、帰化申請の手数料もほぼ倍になります。外国籍社員に対し就労ビザの請願を行う雇用主は、申請する就労ビザの種類に応じて、申請料が最大75%の増額となります。帰化申請やグリーンカードの変更または有効期限延長の要請など、一部のケースタイプでは、郵送ではなくオンラインで申請をする申請者に対しては、申請料が$10割り引かれます。
料金の値上げに加えて、最終規則は特急審査(Premium Processing Service)の審査期間を、15暦日からほぼ3週間に延ばし、亡命申請者およびDACA申請者に新しい料金および/または追加料金を課し、全体の従業員比率と比較しH-1BおよびL-1ビザの社員数が規定を超えている場合は、これらの従業員のビザ申請をする際に、追加の国境警備費を支払う必要があります。
今回の料金値上げの提案は、奇しくも移民局が米国議会に対し12億ドルの緊急資金提供を要請し、申請数の激減による収入減・予算不足を補おうとするタイミングで発表されました。米国移民局は、主に申請手数料で運営されており、申請数が減少し申請料の収入が減る中では、議会からの追加の資金がなければ、1万3千人以上の職員を一時帰休する必要があるだろうと示唆しています。
日系企業に影響を及ぼす主な提案内容と主要な料金変更をまとめた表は、巻末に掲載しております。
H-1B、L-1およびその他の就労ビザ申請の申請料と新しいフォーム
非移民ビザ請願申請の準備と審査に対する大きな変更として、移民局は標準の申請用紙であるForm I-129 (非移民労働者請願書)をビザ分類ごとに異なる形式に分け、申請をする就労ビザの種類毎に異なる料金を課すことを計画しています。現在のForm I-129に伴う申請料は一律$460ですが、今後は雇用主は請願申請をするビザ固有のForm I-129に基づき新しい申請料を提出します。この変更は、H-1B、H-2A / B、L-1、O、およびTNを含む、Form I-129を使用して行うすべての就労ビザ分類に影響します。
提案されているH-1B申請料の値上げ率は21%で、$460から$555に上がります。最も急激な増加の1つはL-1ビザ申請で、新しい料金は805ドル、これは現行の申請料と比較し75%増です。
特定のH-1BおよびL-1雇用者に対する追加の国境警備費の支払い
政府はまた、H-1BとL-1の従業員数の割合が高い雇用者が国境警備費を支払う必要がある場合に関する方針を、変更しています。現在、50人を超える従業員を抱え、その50%以上がH-1BまたはL-1ビザ保持者である雇用主は、最初の申請および雇用主の変更の際にH-1B請願申請ごとに追加で$4,000の費用(Border Security Fee - 国境警備費)を、最初のL-1申請及び雇用主変更申請では$ 4,500の国境警備費を支払う必要があります。 今回発表された規則では、2020年10月2日以降、最初の申請と雇用主の変更に加えて、H-1BまたはL-1の在留期間延長ごとにこの手数料を支払う必要があります。
Adjustment of Status申請とそれに関連する申請の新しい申請料
グリーンカード申請の最終工程であるAdjustment of Status申請と、それに伴う申請(就労許可申請や渡航許可申請)の申請料も大幅に増加します。
現在、Adjustment of Status申請者は$ 1,225の申請手数料を支払います。この料金は、Adjustment of Status申請と、最初の雇用許可書(Employment Authorization Document - EAD)と渡航許可書(Advance Parole - AP)の申請に適用されます。また、Adjustment of Status申請が審査中における、EADおよびAPの更新申請もカバーしています。
新しい料金体系では、この「一纏め」の料金体系を廃止し、代わりに新規および更新毎にEADとAP申請に個別の申請料が必要になります。これにより、Adjustment of Status申請とEAD、そしてAPを全て申請した場合の申請料は$ 2,270に増加し、申請者はEADおよびAPの更新ごとにそれぞれ$ 550および$ 590の申請料を支払う必要があります。
特急申請の審査期間の延長
政府はまた、特急申請の審査期間を15暦日から15営業日に延長します。これにより、審査期間は1週間延長されることになります。また、今後特急審査費用の値上げを発表する場合は、政府が正式なルール作成のプロセスを回避しようとする可能性があることを示唆しています。
今回発表された新しい申請料には、特急審査費用の値上げは含まれていません。現在の特急審査費用は、2019年12月2日に$1,410から$1,440に値上げされました。
人道申請者への影響
前例のない措置として、政府は亡命申請者または国外追放を差し控えを求める申請者に、$ 50の申請料を課し、永住申請が承認された際に返金することにしました。また、申請者は、就労許可(EAD)の最初の申請または延長申請時に、30ドルの生体認証料金と550ドルの申請料を支払う必要があります。この種の料金は、これまでこのような人道的保護を求める人々に課されたことはありませんでした。
政府機関は当初、幼少時に親に連れられてアメリカに不法入国した子供を対象にしたDACA(Deferred Action for Childhood Arrival)プログラムに基づき、就労許可(EAD)の延長を希望する申請者に対し新たに$ 275の申請料を課すことを提案していましたが、この提案は最終規則から削除されました。しかし、先日移民局が発表した提案では、DACAの申請者が2年ごとではなく毎年の就労許可を申請することを義務付けることが示唆されており、そうなれば毎年$410の申請料を支払うことになりかねず、実質的な値上げとなります。
生体認証料金の変更
最終規則では、Adjustment of Status申請やForm I-539を伴う一部の非移民ビザ保持者の在留資格延長や変更申請、そして帰化申請者等に課している生体認証情報(Biometrics)を採取する際に課している$85の料金を廃止します。このサービスに個別の支払いを要求するのではなく、政府は生体認証情報を収集するコストを、個々の申請の申請料に組み込みます。
主な案件に対する申請料の変更は、次の通りです。
申請用紙名 |
現在の申請料 |
新しい申請料 |
変更比率 |
I-129 H1 |
$460 |
$555 |
21% |
I-129 L (L1A, L1B, ブランケットプログラム) |
$460 |
$805 |
55% |
I-129E & TN (E-1, E-2, E-3, & TN) |
$460 |
$695 |
51% |
I-539 (オンライン申請の場合) |
$370 |
$390 |
5% |
I-539 (郵送申請の場合) |
$370 |
$400 |
8% |
I-140 (移民ビザ申請) |
$700 |
$555 |
-21% |
I-485 (14歳以上の申請者) |
$1,140 |
$1,130 |
-1% |
I-485 (14歳未満の申請者) |
$750 |
$1,130 |
51% |
I-765(就労許可申請) |
$410 |
$550 |
34% |
I-131 (渡航書類申請) |
$575 |
$590 |
3% |
5.米国議会下院は、移民局の特急審査サービスを拡大し、移民局職員の一時帰休を食い止めるための措置を可決しました。但し、上院の対応は不明です。
概要
- 米国下院は、移民局の特急審査サービスの拡大を認める暫定法案を可決し、8月30日に予定されていた移民局職員70%の一時帰休を防ぎました。
- この法案が、米国議会全体で成立する可能性は現在不明であるため、8月30日の一時帰休と、その結果としての移民局での審査遅延の可能性は残っています。
- 雇用主は期日前の請願書を提出し続けると同時に、審査遅延が起きた場合に外国人の雇用許可に影響を与える可能性があることを認識しておく必要があります。
問題
米国下院は満場一致で、8月30日に約13,000人の公務員の一時帰休を防ぐために米国移民局の特急審査プログラムを拡大する緊急の応急処置法案を可決しました。
議会全体で可決され、大統領が法に署名した場合、この法案は移民局が最近求めた12億ドル運用費用の要求に代わるものとして、特急審査サービスで徴収する費用を移民局の通常業務にあてることができるようになります。また、特急審査費用を値上げし、特急審査の対象を拡大することで、特急審査サービスを通じた移民局の収入も増えることになります。
上院は9月まで議会に戻る予定がないため、議会全体での法案の可決の見通しは依然として不明です。また、この法案が上院で可決されるのに十分な賛同を受けるかどうかも、不明です。
背景
米国内では広く報道されているように、米国移民局は現在、予算不足を解消するために追加の資金援助を受ける事が出来なければ、8月30日に従業員13,400人(全体の約70%)を一時帰休措置とする予定です。移民局は、過去数年間の申請数の減少により失われた申請料収入を補うために、議会からの12億ドルの援助が必要であると主張しています。一時帰休が導入された場合、移民局での申請案件の審査は、停止されることはないかもしれませんが、大幅に遅延することになるでしょう。
移民局の運営の大部分は、申請手数料で賄われています。特急審査サービスの費用は、通常特急審査サービスの運用と一部のインフラの改善のみに使用されるよう使途が制限されています。下院の法案は、これらの資金の一部を増やして解放し、通常の移民局の運営に利用することを認めるものです。
特急審査サービスへの変更提案
現在の特急審査プログラムでは、$1,440ドルの申請料の支払いを受ける代わりに、移民局は15暦日(10月2日は15営業日に変更予定)以内に審査する必要があります。すべてではありませんが、ほとんどの非移民就労ビザ申請や移民ビザは、現時点で特急審査サービスの対象です。
下院の法案には、特急審査サービスの対象申請と申請料に関し、次の変更提案が含まれています。
- 現在特急審査サービスの対象となっているカテゴリーの手数料の増加:特急審査サービスの対象となるカテゴリーの特急審査費用を、現在の$1,440から$2,500に値上げ(H-2BおよびRビザ申請を除く)。 15日間の審査期間に変更無し。
- 特急審査サービスの対象を、次の新しいカテゴリーに拡大すること提案しています
- 雇用ベース第一優先枠である多国籍企業の管理職者枠と、雇用ベース第二優先枠である国益免除枠での移民ビザ申請:特急審査申請料は$ 2,500未満で、審査期間は45日未満である必要があります。
- 非移民ステータスをF、J、またはMビザに変更する申請:特急審査申請料は$1,750未満で、審査期間は30日未満でなければなりません。
- E-1 / E-2、H、L、O、P、またはRビザの扶養家族のステータスの変更または延長:特急審査申請料は$1,750未満で、審査期間は30日未満でなければなりません。
- 雇用許可申請書:特急審査申請料は$ 1500未満で、審査期間は30日未満でなければなりません。
法案では、上記の審査期間が営業日と暦日のどちらを指しているかは明記されていませんが、特急審査サービスの審査期間は10月2日から15暦日ではなく15営業日に変更となる予定です。
雇用者と外国人にとって、移民局が検討する一時帰休は何を意味するのか
下院の法案が法律になるためには議会全体を通過する必要がありますが、上院で可決されるかは現時点で不明です。その間、8月30日に移民局が一時帰休を実施する可能性は依然として残っています。
状況は依然として流動的ですが、雇用主は次のことに注意する必要があります。
- 一時帰休が発生した場合、審査が遅れる可能性があります。
- 雇用主は、申請の受領やその他の処理が一時停止または遅延した場合でも、請願申請や追加証拠の提出要請への応答を期日までに提出し続ける必要があります。
- 一部の外国人の労働許可は、現在の許可の期限までに延長申請が認められない場合、または自動延長期間の期限までに延長が認められない場合は、許可が失効します。
また、一時帰休の期間も不明です。議会は 9月30日までに、2021年度の連邦政府に資金を提供するための歳出パッケージまたは暫定措置を可決する必要があります。これには、当時の政府機関の資金調達と運営状況に応じて、移民局への追加資金が含まれる可能性があります。
6. 移民局は、就労許可証(Employment Authorization Document - EAD)の生産遅延のため、一時的なI-9検証措置を発表
概要
- 2020年12月1日まで、雇用主はI-9手続きで雇用確認を確認する際に、Form I-9のリストCの文書として雇用許可証申請の承認通知を使用することができます。
- 2019年12月1日以降から2020年8月20日までに発行された承認通知のみが、この暫定処置の対象となります。
- 雇用承認が2020年12月1日以降も継続するためには、雇用主は新しい証拠で従業員が就労許可を維持していることを再確認しなければなりません。2020年12月1日以降は、 EAD承認通知書を証拠書類として使用することはできません。
詳細:
米国移民局は、COVID-19の影響でEADの製造が遅れていることを理由に、特定の外国人はI-9手続きに際しEAD申請の認可証を使用して就労許可の証明ができると発表しました。本来、認可証は就労許可の確認書類として使用できないことになっています。
この暫定措置は、EADカード発行の最近の大幅な遅延による被害を主張し移民局に対して提起された集団訴訟で、当事者間で和解が成立したことで発表されました。
この暫定措置に基づくI-9手続き
2020年12月1日まで、雇用主はI-9手続きを行う際に、EADに代わりEAD申請の認可証を就労許可の証拠として受け入れることができます。尚、この認可証は、2019年12月1日から2020年8月20日までに発行されたものに限られます。通常の手続きでは、認可証でI-9手続きをすることはできず、実際のEADの提示が必要です。
この措置により、EAD申請の認可証を持つ従業員は、実際のEADの発行を待つことなく就労を開始することができます。
移民局によれば、認可証はForm I-9のリストBに列挙されている身分証明書の代わりにはならず、またリストAに列挙されている身分証明と就労許可の両方の証明の代わりにはならないとしています。
Form I-9の記入の際、就労許可申請の認可証を提示する従業員は、州の運転免許証、政府のID、または有権者登録カードなどの身元を証明する書類としてForm I-9のリストBに列挙された書類の1つも雇用主に提示する必要があります。使用できる身分証明書のリストは、フォームI-9の解説に記載されています。
暫定措置終了後の対応
暫定措置の失効日である2020年12月1日までに、雇用主は承認通知を雇用証明書類として従業員に対し、再度就労許可の確認をする必要があります。従業員は、リストAまたはリストCのいずれかに列挙されている、雇用許可の新しい証拠を雇用主に提示する必要があります。
移民局は、12月1日以前であっても、従業員が新しいEADを提示すればそれを受け入れるよう雇用主に奨励しています。ただし、新しいEADを提示するか、リストAまたはリストCに掲載された別の書類を提示するかは従業員次第です。また、Covid 19への対応の為、遠隔でI-9用の書類確認の暫定措置も、2020年9月19日まで延長されています。
このニュースレターは、情報提供のみを目的としています。ご不明な点がございましたら、当事務所で御社案件を対応するスタッフまでお気軽にご連絡ください。