2025年7月 アメリカ移民法ダイジェスト
July 31, 2025
1 9月2日より、国務省はほとんどの非移民ビザ面接免除措置を廃止へ
-
-
- 9月2日より、米国在外領事館での非移民ビザ面接免除の対象は、特定のBビザ更新および外交・公用ビザ申請のみに制限されます
- H-1B、L、Fを含む他のすべての非移民ビザカテゴリーの申請者は、直接面接を受ける必要があり、面接が必要な年齢範囲は14歳未満から79歳以上に拡大されます
- この新しい制限の下では、B非移民ビザ申請者は、過去に申請したBビザが過去12ヶ月以内に失効しているか、まだ有効であるなどの条件を満たせば面接が免除されます。以前は、12ヶ月の条件を満たすビザ更新者は、どのカテゴリーでも面接免除方針を導入している米国大使館・領事館では面接免除の資格がありました
-
詳細
国務省の発表によると、9月2日より、米国領事館は非移民ビザ(Non Immigrant Visa - NIV)の面接免除(Interview Waiver - IW)プログラムを大幅に縮小し、ほとんどの外交ビザ申請者と特定のB-1/B-2ビザ申請者を除き、ほぼすべての申請者に面接を義務付けます。この新しい方針では、14歳未満と79歳以上の申請者にも面接が義務付けられます。
詳細
国務省の発表によると、9月2日より、米国領事館は非移民ビザ(Non Immigrant Visa - NIV)の面接免除(Interview Waiver - IW)プログラムを大幅に縮小し、ほとんどの外交ビザ申請者と特定のB-1/B-2ビザ申請者を除き、ほぼすべての申請者に面接を義務付けます。この新しい方針では、14歳未満と79歳以上の申請者にも面接が義務付けられます。
免除を受ける資格のある人
新しい方針の下では、面接免除の一般的な要件を満たしていることを前提に次の方々が米国領事館での面接を免除されます:
- 有効期限内のBビザ(メキシコ国籍の場合は国境通過カード/フォイルを含む)を更新する申請者で、前回のBビザ発給時に18歳以上であった場合
- ほとんどの外交非移民ビザ(A、G、NATOなど)および外交・公用ビザの申請者
今回の面接免除方針は以前のそれと同様に、非外交の非移民ビザを申請する申請者は、国籍を持つ国または居住国で申請する必要があり、過去にビザ申請を拒否されたことがなく、明らかな又は潜在的な不適格要件に該当しないことが条件です。尚、過去にビザ申請が一旦拒否されても、それが後に覆ったり免除されていれば問題ありません。
背景
2025年2月、国務省は面接免除の資格をCOVID時代に拡大した方針から大幅に縮小しました。それまで面接免除を認めていたのは、同じ分類のビザが48ヶ月以内に失効した申請者であり、場合によっては、当該分類のビザを初めて申請する申請者にも面接免除を認めていました。2月の変更では、この資格基準を、ビザが依然有効であるか、過去12ヶ月以内に失効した同じ分類のビザを更新する者に絞りました。今回新たに発表された9月発効のIWプログラムの変更により、申請資格はさらに狭められることになります。
米国領事館は通常、IWプログラムを実施する必要はありません。実施するかどうかは、あくまで各米国領事館の判断です。しかし、IWプログラムを実施する領事館は、9月2日に施行されるIWプログラムの新しいに準拠する必要があります。
今後の見通し
9月2日より、面接免除の新基準を満たさない外国人は、新たにビザを取得するために海外の米国領事館で直接面接を受ける計画を立てる必要があります。この場合、領事館やビザの種類によって直接面接の予約が可能かどうかが大きく異なるため、慎重な渡航計画が必要となる可能性があります。また、対象者が狭められた新しいIWの資格基準により、面接を必要とする申請者が大幅に増えるため、面接の予約待ち時間が増加することが予想されます。また、これまで年齢上対面面接が不要であったビザ申請者は、米国領事館に直接出頭する必要があります。
2 第9巡回控訴裁判所、出生に基づくアメリカ市民権付与を制限する大統領令の効力差し止め命令を全米で実施することを支持
概要
- 第9巡回区控訴裁判所は、トランプ大統領の出生に基づく市民権の取得を制限する大統領令(Executive Order – EO)の実施を禁止する連邦地裁の差止命令の全国的な適用範囲を支持し、原告である米国各州に完全な救済を提供するためには全国的な適用範囲が適切であるとしました。
- この控訴審判決は、差し止め命令に関する連邦裁判所の権限を制限し、原告を完全に救済するために必要な範囲でのみ適用される差し止め命令を出すよう裁判所に指示した6月27日の最高裁判決を受けたものです。
- 今回の判例により、出生に基づく市民権取得に関するEOの実施に関する現状に変更はありません。米国政府はすでに、別の訴訟における全国的な集団訴訟の仮差し止め命令に従って、EOの実施を禁じられています。
- 米政府は第9巡回区判決を不服として最高裁に上告する見込みです。
問題
7月23日、第9巡回区控訴裁判所は、トランプ大統領が1月20日に発表した出生に伴うアメリカ市民権取得に関する大統領令(EO)の実施を禁じるワシントン連邦地裁の差し止め命令の全国的な適用範囲を認めました。第9巡回区判決は、6月27日の最高裁判決を受け、連邦裁判所が全国的(裁判所の用語では「普遍的」)な差し止め命令を出す権限を制限し、原告を完全に救済するために必要な範囲でのみ差し止め命令を出すよう裁判所に指示しました。
これに対し、原告の米国4州(アリゾナ州、イリノイ州、オレゴン州、ワシントン州)は、第9巡回区に対し、出生権市民権EOの執行からの完全な救済には全国的な範囲が必要であると主張しました。なぜなら、地理的に限定された差止命令の下では、差止命令がない場合と同じ損害を被るからです。第9巡回区はこれに同意し、連邦地裁が全国的な差し止め命令を出したことは裁量権の逸脱ではないと判断し、全国的な保護をそのまま残しました。この訴訟は、ワシントン州等対トランプ氏等、25-807(第9巡回区)およびワシントン州等対トランプ氏等、2:25-cv-00127(ワシントン州)です。
米国政府はすでに、別の訴訟の裁判所命令に従ってこのEOの実施を禁じられています。ニューハンプシャー州の連邦地裁は7月10日、全国的な集団訴訟に基づく仮差し止め命令を出しました。
今後の展開
米国政府は第9巡回区判決を不服として最高裁に上告し、このEOに異議を唱える現在進行中の様々な訴訟において、政府に不利な下級審判決を不服として上告を続けると予想されます。しかし、全国的な法的救済措置が残っている限り、EOは実施できません。現在行われている仮差し止め請求や控訴の結果にかかわらず、EOの合法性そのものは下級審で引き続き争われることになります。
3 F、J、I ビザ保持者のI-94に記載される在留期限を、従来のD/S(資格存続期間)という記載から、具体的な期限の記載に置き換える 国土安全保障省の規則変更案が 審査へ
概要
- 国土安全保障省は、留学生、交換訪問者、外国情報メディアの代表者に一定期間の滞在を義務付ける規則案を、連邦規則制定プロセスの最初の段階である行政管理予算局に提出しました
- 提案された規則の正確な内容はまだ明らかになっていませんが、おそらくF、J、I非移民ビザの入国に関して長年行われてきた「在留期間中の滞在を認める」ポリシーを廃止し、最初の入国期間を超えて活動を続けるためには在留期間延長を申請することを義務付けるものであろうと見込まれています。同様の規則は2020年に提案されましたが、トランプ大統領が1期目を終えて退任する迄に最終決定されませんでした
- この草案が連邦政府の審査(数週間から数ヶ月かかることもある)を通過すれば、連邦官報に掲載され、一般からの意見を求めることになります
問題
国土安全保障省(DHS)は、留学生(Fビザ)、交流訪問者(Jビザ)、外国情報メディア代表者(Iビザ)、およびその扶養家族がアメリカへ入国した際に認める在留期間を、現行の「在留期間」(D/S‐Duration of Statusの意味)の滞在を認めるという具体的な期限を記載しない方針から、有限の滞在期間とする方針に置き換えることを求める規則案を、行政管理予算局(OMB)の審査に提出しました。
この規則案の内容はまだ明らかになっていませんが、同名の規則案は2020年の第1次トランプ政権時に出され、F、J、Iの非移民の滞在期間を有限に制限し、就学、雇用、赴任を完了するためにさらに時間が必要な場合は滞在延長を申請するよう求めていました。
今回提案された変更は、F、J、Iビザ保持者の不法滞在に関する現行政策の変更にもつながり、他の非移民カテゴリーと同様に不法滞在の発生対象となる可能性が高いとみられています。現在、F、J、I非移民は、移民局が正式に非移民資格違反を認定するか、移民判事が申請者の排除、強制送還、または退去を命じて初めて不法滞在が発生します。その他の非移民ビザ保持者の場合は、限られた状況下を除き、滞在許可期間の最終日を過ぎると不法滞在となります。
草案の次の段階
OMBは草案を審査し、その後DHSに対し変更を要求するか、一般への公表を許可します。OMBが草案を承認すれば、規則案は連邦官報に掲載されます。DHSは、連邦官報公布後30日または60日間、規則案に対する一般からの意見の公募受付を行います。そして、寄せられた意見を検討した後、DHSは規則の最終版を公表します。最終ルールの公表に決まった期限はありませんが、通常このプロセスには数ヶ月以上かかります。