アメリカ移民法ダイジェスト 2020年6月
July 6, 2020
1. トランプ大統領、6月24日発効の特定ビザ保持者入国禁止令を一部修正、入国禁止対象者が広がる恐れ
概要:
- 今回改正された大統領令により、H-1B、H-2B、L-1、特定のJ-1ビザ保持者およびそれぞれの扶養家族の入国禁止の免除を受けることが、さらに困難になっています。
- 改正により、次の条件を満たしていれば入国禁止免除となります:(1)制限対象となっているビザが有効であり、(2)そのビザで米国への入国を予定している場合です。 F-1ビザやB-1ビザなど、別種類の有効なビザを所持している人は、この大統領令が有効な間は、新しいH、L、またはJビザを取得できません。しかし、米国内での在留資格変更は認められます。 よって、移民局を通じたF-1ビザからH-1Bビザへの在留資格の変更も、認められます。
- 米国外にいる外国人で、ビザの有効期限が切れている方は、大統領令の発効日である6月24日時点で有効なビザを持っていたとしても、大統領令が有効である限り、H、L、またはJビザを更新または新規取得できない可能性があります。
- また、米国内にいる外国人で、既にビザが失効している、または米国出国予定時点でビザが失効する予定の外国人は、大統領令が有効である新しいH、L、またはJビザの取得が困難または遅延する可能性があります。
問題
トランプ大統領は、6月22日に発表した大統領令を改正し、大統領令の対象免除資格の入手を難しくしました。
改正により、元々の大統領令に記載されていた「有効なビザ」を持っていることによる対象免除措置から、6月24日時点で大統領令の影響を受けるいずれかの非移民ビザのカテゴリー(L-1、H-1B、H-2B、特定のJ-1ビザとそれぞれの扶養家族ビザ)の有効なビザを保持し、そして米国に入国するために新しいビザを必要としない人のみを含めるように狭められました。最初に発行された際の宣言の文言は、6月24日時点でどのカテゴリーであっても有効なビザであればこの大統領令から免除されることを示唆していました。また、6月24日以降にビザが失効した場合でも、外国人はビザの更新申請ができることも示唆していました。この改正により、これらの免除が除外されたようです。
改正された大統領令に基づき、入国禁止の対象となる外国人
改正後も、対象となる外国人は次の通りで、これまでと変わりません:
- H-1BおよびH-2B非移民ビザ
- L-1A管理職者
- L-1B専門知識労働者。
- J-1インターン、研修生、教師、キャンプカウンセラー、ベビーシッター、サマーワークトラベルの参加者、そして
- 上記非移民ビザ保持者の扶養家族と配偶者
しかし、改正版の大統領令は、制限の対象となる外国人を広げるように見えます。次の場合は、入国が制限されます。
- 2020年6月24日午前12時1分(米国東部時間)時点で、米国外にいる
- 2020年6月24日の時点で、上記のカテゴリーいずれかのビザでアメリカ入国を予定し且つ、同カテゴリーの有効なビザを持っていない、そして
- ビザに代わる、有効な米国渡航書類も保持していない
改正された大統領令の文言は明確ではありませんが、これまでの国務省からの通知と共に解釈すれば、ホワイトハウスが方針を明確化するまでは、対象免除の判断が得られない限り、また裁判所が大統領令の発効を一時差し止める判断をしない限り、米国領事館が新しいH、L、またはJビザを発行しない可能性があります。これは、6月24日の時点でアメリカ国内にいた外国人にも当てはまる可能性があります。大統領令の原文を平易に解釈すれば、そのような判断にはならないと考えますが、政府の方針は異なる可能性があります。
誰が改正された大統領令から免除されるのか
- 6月24日に米国に滞在していた外国人で、大統領令で対象となっているカテゴリーのいずれかの有効なビザを保持しており、本人が米国へ再入国する日までそのビザが有効である場合
- 6月24日に米国外にいた外国人が、大統領令で対象となっているカテゴリーのいずれかの有効なビザを保持しており、そのビザが米国入国の時点で有効な場合
- カナダ国民
- 米国市民及び合法的な永住者
- 米国市民の配偶者および子供。
- J-1交換プログラムの参加者で、禁止対象以外のプログラム参加者、そして
- 米国の食品サプライチェーンに不可欠な一時的な労働またはサービスを提供するために入国する外国人。
- 米国政府の裁量により、米国の国益に該当するとみなされる者。米国の即時かつ継続的な経済回復を促進するために必要な外国人や、Covid 19に関連する特定の臨床ケアまたは研究に関与する者、そして米国の国家安全保障または法執行機関にとって重要な外国人
さらに、H-1Bビザへの在留資格変更申請を含む移民局が承認した資格変更申請を受けた外国人も、この大統領令による入国禁止対象にはなるべきではないと考えています。
旅行制限はどのように実施されるのか
国務省、国土安全保障省、そして労働省は、入国禁止の実施、国益に基づく免除の基準と手順、およびその他の問題に関するガイダンスを発行すると考えられています。ガイダンスは、最近の国務省のツイッターを通じたガイダンスを含む、渡航制限に関する多くの未解決の問題に解をもたらすことが期待されています。
今回の大統領令を実施する為のガイドラインが発表されるまで、入国禁止対象の免除または国益に基づく免除を申請する可能性のある人は、海外渡航を行うかどうかを慎重に検討し、宣言が施行されている間は大幅な再入国の遅延がある可能性に留意してください。有効期限が切れたH-1B、H-2B、H-4、L-1、L-2、J-1、またはJ-2ビザを所持し、メキシコまたはカナダに30日以内の短期滞在後に米国へ再入国を予定する場合も、政府による明確な説明が発表されるまで、そうすることは避けてください。
当初発表された大統領の文言に依存し、海外に旅行し、その後に修正された制限のために帰国できない外国人は、御社案件を担当する当事務所の弁護士へご相談ください。
尚、今回修正された大統領令の対象から外れている外国人も、現在も続くCOVID-19に関連した渡行制限の対象であること、そしてそれが故に米国への入国または再入国ができない可能性がある点には留意してください。
このニュースレターは、情報提供のみを目的としています。ご質問がある場合は、当事務所の‘スタッフまでご連絡ください。
2. 米国移民局は、追加証拠要請(Request For Evidence、RFE)、否認意図の通知(Notice of Intent to Deny、NOID)、審査結果に対する異議申し立て、およびその他の対応に関する既存のCOVID-19対応をさらに延長します
概要:
- 現在も続くCOVID-19の緊急事態のため、米国移民局は60日間の期限延長施策を2020年9月11日まで延長します
- 申請主体者や申請者は、追加証拠の要求、否認または取り消しの意図の通知、および2020年3月1日から9月11日までのEB-5地域投資センターの終了意図の通知に返答するための期限が、60日延長されます
- 3月1日から9月11日の間に発行された移民局の判断に対し、再考や異議申し立てをする為の期限は、従来の30日ではなく60日となります
問題:
COVID-19パンデミックへの対応を継続する為に、さまざまな移民局判断に対応する為の期限を60日間延長する現行措置を、移民局は2020年9月11日までさらに延長します。延長の対象となるのは、移民局の次のような判断への対応期限です。
- 追加証拠の要求(RFE)
- 否認意図の通知(NOID)、
- 取り消しの意図の通知(Notice of Intent to Revoke、NOIR)、
- EB-5地域投資センターを終了する意向に関する通知(Notice of Intent to Terminate、NOIT)、および撤回する意向に関する通知、
- 移民局の却下判断に対し再考を要求や異議申し立てをする場合、および
- 帰化手続の決定に関する審問申請の提出日
COVID-19パンデミックの悪影響を最小限に抑えるための手段として、3月に最初に発表された期限延長措置は、当初7月1日で期限切れになる予定でした。
期限延長措置の詳細
RFE、NOID、NOIR、NOIT、または2020年3月1日から9月11日の日付での取り消しの意向通知を受け取った(あるいは受け取る)申請者および請願者には、移民局へ回答を提出する期限が、60暦日延長されます。
移民局は、3月1日から9月11日までの移民局による却下判断に対し再考要請を出したり、異議申し立てをする期限を、これまでの30日から60日へ暫定的に延長します。
雇用主と外国人にとってこれが意味すること
期限が延長されることで、会社が一時的に閉鎖され、社員がリモート勤務を続ける間、移民局からのRFEへの対応や、移民局へ異議申し立てをする際の雇用主と外国人への圧力が緩和されます。
尚、今回の措置は滞在延長や雇用許可の申請には影響しませんのでご注意ください。これらの申請は、移民局が暫定的な救済を提供しない限り、期限前に申請を提出し続ける必要があります。
このニュースレターは情報提供のみを目的としています。ご質問がある場合は、当事務所のスタッフへご連絡ください。
3. 米カナダと米メキシコの国境規制が7月21日まで延長
概要:
- 米国とメキシコおよび米国とカナダの国境を越えて旅行を、必要不可欠な必須の旅行に限る政府の渡航制限は、7月21日まで延長されます。
- 必須の旅行には、米国市民、合法的な永住者、米国で働くために旅行する外国人などの旅行が含まれます。
- ビザ免除およびその他のビジネス旅行者は、国境で追加の諮問を受ける可能性があります。
- 国境を超える「必須ではない旅行」は許可されていません。これには、観光またはレクリエーションと見なされる旅行が含まれます。
問題:
国土安全保障省によると、米国税関国境警備局(CBP)は、米国の国境を越える「必須ではない」旅行とメキシコおよびカナダとのフェリー旅行に関するトランプ政権の禁止措置を、7月21日まで継続します。制限は、6月22日に期限が切れる予定でした。
北と南の国境を越えた必須ではない旅行の最初の禁止措置は、COVID-19の発生に対応して3月21日に始まりました。当初は4月20日に期限が切れる予定でしたが、2回延長され、直近では6月22日まで延長されました。COVID緊急事態の状況に応じて、この措置は再び延長される可能性もあります。
詳細:
CBPは、「必須ではない」旅行を、観光、ギャンブル、文化イベントへの参加など、本質的に観光またはレクリエーションと見なされる旅行と定義しています。
- 新しい制限の下で許されている国境を越えた「必須」の旅行には、次のものが含まれますが、これらに限定されません。
- 米国へ戻る米国市民および合法的永住者
- 合法の国境を越えた貿易のための旅行(例:貨物を運ぶトラック運転手)
- 米国で働くための旅行
- 医療目的で旅行する(例:米国で医療を受けるため)
- 教育機関に通うための渡航
- 緊急対応および公衆衛生の目的で旅行する(例:COVID-19またはその他の緊急事態に対応する政府の取り組みを支援するために米国へ入国する政府職員または緊急対応者)
- 米国に帰国する米軍のメンバーとその配偶者および子供たちの旅行
- CBPがケースバイケースで決定するその他の旅行
また、トランプ政権は、貿易および出張での越境は追加の審査の対象となるとしていますが、実際には3月21日以降、出張者の扱いに一貫性がありません。
これが雇用主と外国人にとって何を意味するか
既存のガイダンスの下では、米国市民、合法的な永住者、および外国人の出張は、国境制限の期間中もカナダとメキシコの国境を越えてアメリカへ入国できることになっています。ただし、CBPの職員は入国者を審査する上で幅広い裁量権を持っているため、外国人は米国での雇用や活動内容について詳細な質問を受ける可能性があることに留意する必要があります。
このニュースレターは情報提供のみを目的としています。ご質問がある場合は、当事務所のスタッフへご連絡ください。