2023年8月 アメリカ移民法ダイジェスト
September 6, 2023
1. E-Verifyを利用する雇用主が遠隔でI-9手続きを行えるようになることを受け、国土安全保障省がForm I-9の改訂版を発行
概要:
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- 2023年8月1日付の新しいForm I-9は、2023年11月1日よりすべての雇用主に対して使用が義務付けられます。
- 2023年10月31日までは、雇用主は2019年10月21日付の現行版を引き続き使用することができます。
- 新様式には、現行版からの実質的な変更はありません。しかし、Form I-9の構成に変更があり、I-9手続きに関する移民局の資料への参照説明が追加されています。
- この新しいフォームの公表は、特定の雇用主がForm I-9書類をリモートで確認する代替プロセスを使用することを許可する新しく公表された規則に対応するためです。本来、I-9の手続きは就労許可書類を提示する社員の立会の下で実際の書類を確認して行いますが、E-Verifyを利用する雇用主はこの手続きをリモートで行うことが許されるようになります。
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詳細:
当初予想されていたとおり、国土安全保障省(Department of Homeland Security - DHS)は2023年8月1日付で新しいForm I-9を発行しました。新しいフォームはすぐに使用可能ですが、雇用主への義務付けは2023年11月1日以降です。雇用主は、2019年10月21日付の現行版を2023年10月31日まで引き続き使用するオプションがあります。
新様式は、就労資格の確認または再確認に関わる雇用主または被雇用者の義務を変更するものではありませんが、新様式の構成が新しくなっています。新しいフォームのセクション3は、現従業員の就労許可の再確認や、場合によっては元従業員の再雇用に使用されますが、このセクションがフォームの最後にある補足欄に移動しました。同様に、翻訳者証明書も補足欄へ移りました。さらに、雇用者が就労許可の証明書類として受理できる書類リストは従来通りですが、新様式では受理可能な書類リストA、B、Cにそれぞれ受理可能な領収書の例が記載されています。また、新様式には移民局の資料へのリンクもあります。最後に、新フォームでは雇用主がI-9プロセスにおいて、後述する新しい代替リモート書類検査プロセスを使用しているかどうかを記入することができます。
フォームI-9書類の遠隔検査代替手続き発効
この新しい書式は、Form I-9書類の実物検査に代わる代替手続きに関する新しいガイダンスの発効と機を同じくしています。E-Verifyを利用する雇用主は、下記の要件を満たすことを条件に、従業員の身元および就労許可書類の遠隔検査を実施することができます:
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- 遠隔検査は E-Verifyを利用する 雇用主が利用できますが、E-Verify に登録されている雇用場所でしか利用できません。雇用主が E-Verify に登録していない雇用場所では、遠隔検証は利用できないので注意してください。
- 遠隔検査は、2023年8月1日以降に新規雇用される従業員に対して、E-Verify雇用主が利用できます。E-Verify雇用主であっても、8月1日以前に雇用された社員に対しては遠隔での検査は認められません。ただし、後述するDHSの COVID 19対応のためのI-9手続きに対する、一時的な柔軟施策の特別な実物書類検査要件への対応は除きます。
- 条件を満たす E-Verify 雇用主が、雇用オフィスで新入社員に代替の遠隔手続きを使用しI-9手続きをする場合、その 雇用場所の全従業員に対して一貫してそうしなければなりません。しかし、E-Verify雇用主は差別的な目的でこの慣行を採用したり、市民権、ビザステータス、または国籍に基づいて従業員を差別的に扱ったりしない限り、遠隔雇用される従業員に対してのみ遠隔検査を使用し、毎日出勤する社員やハイブリッド勤務で雇用される従業員に対しては、引き続き対面での書類検査を行うことははできます。
- 従業員が遠隔での書類提出を拒否する場合は、雇用主はその従業員に対し直接書類を提出し、実物検査を受けることできるよう許可しなければなりません。
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条件を満たす雇用主は、遠隔による代替検査プロセスを利用する必要はなく、直接実物の書類検査を方法を続けることも可能です。いずれにせよ、E-Verifyに登録する雇用主は、E-Verifyのすべての要求事項に従わなければなりません。
遠隔検査手順
従業員は、雇用初日までにフォームI-9のセクション1を記入しなければなりません。そして、従業員の雇用初日から3営業日以内に、遠隔による代替手続きを希望する雇用主は次のことを確実に実行してください:
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- 従業員は、I-9書類のコピーを雇用主に送付する。書類が両面の場合は、表と裏の両方のコピーを提出する。
- 雇用主は、従業員から提示されたI-9書類のコピーを精査し、その書類が本物であり、当該従業員に関連したものであることを確認する。書類が両面の場合、表と裏のコピーを確認する。
- 雇用主は、提出された書類が本物であり、従業員に関連したものであることを確認するため、従業員とビデオ対話を行う。従業員は、コピーとして会社へ送付した就労許可証明書類を雇用主に示す。
- 改定された新しいForm I-9では、フォームのセクション2の記入または再確認のための書類確認に代替手続き(遠隔確認)を使用したことを示すボックスに雇用主がチェックを入れる。2023年10月31日までは現行版のForm I-9も使用できるので、現行版のフォームを使用する場合は、雇用主はセクション2の追加情報欄に「代替手続き(Alternative Procedure)」と記入しなければならない。
- 雇用主は、従業員が提示した書類の鮮明で読みやすいコピーを保管する。書類が両面の場合は、表と裏のコピーを保管する。
- 政府による監査や調査が行われた場合に備えて、雇用主は従業員から提示されたI-9書類のコピーをいつでも提示できるようにしておく。
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DHSが導入した、COVID-19後の代替遠隔手続きの影響
DHSがCOVID-19対応の一環として導入したI-9手続きの柔軟対応期間中に従業員のI-9書類を遠隔で検査した雇用主は、2023年8月30日までにその従業員の書類を直接検査する必要があります。今回DHSが発表したE-Verifyを利用する雇用者に対し遠隔確認を許可する施策は、2023年8月30日の期限を守るルールとは別です。しかし、この新規則により、DHSの一時的なCOVID-19への柔軟対応施策中にE-Verifyに登録し、その手続きを利用してリモートまたはバーチャル書類審査を利用してForm I-9を完成させた雇用主は、COVID-19柔軟対応手続き中にリモートで審査したForm I-9書類を物理的に審査する要件を満たすために、新しい代替リモート手続きを利用することができます。
このオプションを利用するには、雇用主は以下の条件を満たしていなければなりません: (1) COVID-19に伴う柔軟対応期間中に、I-9書類の遠隔検査または再確認を実施した時点でE-Verifyに登録していたこと、(2) 就労許可の再確認(Re-verification)以外の理由で従業員のE-Verifyケースを作成したこと、そして(3) 2020年3月20日から2023年7月31日の間に遠隔検査を実施したこと、です。雇用主が今回導入される新しい代替オプションを利用する資格がある場合は、Form I-9の追加情報欄に "alternative procedure "と記入し、雇用主が従業員の書類を確認するためにビデオ対話を行った日付を記入する必要があります。
COVID-19による従業員の書類の遠隔検査を実施した時点でE-Verifyに登録していない雇用主はこの代替手続きを利用することはできず、8月30日までに従業員立会いのもとで物理的にI-9書類を検査するというDHSの要請に従わなければなりません。
2. 米国移民局は、2回目の抽選で77,000人以上のH-1B発給枠対象者を追加で選出
概要:
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- USCISは、8月初めに行われた2回目の抽選で77,609件を追加で選出し、2024年度のこれまでの当選案件総数は188,400件となりました。
- この追加抽選の結果、対象となる登録の全体的な当選率は、1回目の抽選後の6%から24.8%に上昇しました。
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詳細:
米国移民局(USCIS)は8月1日、24年度のH-1B発給枠申請の第2次抽選を完了し、2回の抽選を通じ年間定員85,000人に達する188,400人のH-1Bキャップの登録者を選出したと発表した。3月に行われた最初の抽選で110,791件が選ばれているため、今回の抽選で77,609件が選ばれたことになります。
この2回目の抽選は、USCISが2024年度H-1B発給枠対象の申請に向けて受理した758,994件の事前登録者の内、未当選の登録者から選ばれました。この2回目の抽選の結果、資格のある登録者の当選率は、1回目の抽選後の当初の14.6%から24.8%に上昇しました。
USCISは通常、新規H-1Bの年間割当数85,000件を満たすために、最終的に請願書が提出されなかったケースや、却下、拒否、撤回、取り消しされるケースが発生することを想定して、必要な数より多くの登録を選びます。
同一登録者の複数登録に関する最近の取締り活動
2024年度に受理された758,994件の登録申請は記録的な件数であり、昨年の登録総数より60%増加しました。USCISによると、今年受理された758,994件の適格登録のうち408,891件は、複数のスポンサーが代理で発給枠登録申請を提出することによって恩恵を受けた登録者であったことが判明しています。
このように同じ登録者に対する複数の登録が多いことから、USCISはH-1B登録システムが悪用された可能性について懸念を示しています。そして、その結果USCISは不正調査を継続的に実施し、請願書の却下や取り消しを行い、刑事訴追のために法執行機関に照会を行っています。
今年は、複数のスポンサーを持つ個人の登録が大幅に増加し、その結果政府の監視の目が厳しくなったため、USCISに提出されるH-1B請願書の数が減少し、年間発給枠に達するために2回目の抽選が必要になった可能性があります。USCISの報告によると、2024年度の発給枠対象のH-1B申請の比率が過去3年と比較して減少しているのは、不正調査が影響していると考えられるとのことです。
2024年度の最新選考率と過去の選考率の比較
以下の表は、H-1B発給枠申請対象者のオンライン登録の最初の3年の最終的な当選率と、2024年度の現在の当選率を示しています。
会計年度 |
登録者総数 |
資格を満たした登録者数* |
当選者数 |
当選率 |
2021年度 |
274,237名 |
269,424名 |
124,415名 |
46.2% |
2022年度 |
308,613名 |
301,447名 |
131,924名 |
43.8% |
2023年度 |
483,927名 |
474,421名 |
127,600名 |
26.9% |
2024年度 |
780,884名 |
758,994名 |
188,400名(現時点) |
24.8% |
*資格を満たした登録者数は、重複登録、登録期間終了前に雇用予定者が削除した登録、支払い漏れの登録を除く。
3回目の抽選はあるか?
2024年度の発給枠申請への登録者に対し3回目の抽選を行うかどうかは、2回目の抽選で当選した雇用主がUSCISに提出するH-1B請願書の数によって決まります。追加抽選が行われた場合、2024年度の最終的な当選率は現在の当選率24.8%を上回ることになります。
3. 米国税関・国境警備局は、キューバ渡航によるESTA不適格措置を完全実施
概要:
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- 2021年1月12日にキューバがテロ支援国家に指定されたことに伴い、米国税関・国境警備局は同日以降にキューバへの渡航した者に関する不適格の質問をESTA登録申請に含める手続きを終えました。
- 米国税関・国境警備局によると、すでにESTAが承認されている個人が、過去にキューバへの渡航歴がある、またはキューバとの二重国籍であると判断された場合は、ESTA承認は取り消され、米国への渡航にはビザの申請が必要となります。
- キューバ政策の変更によって影響を受ける可能性のある、既にESTA承認を受けている外国籍の方は、米国税関・国境警備局のESTA登録用ウェブサイトで自身のESTA登録の状況を確認してください。
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問題点:
米国税関・国境警備局(US Custom and Border Protection – CBP)の公式発表によると、2023年7月6日以降、ビザ免除プログラム(Visa Waiver Program - VWP)のESTA申請書には、申請者のキューバへの渡航歴およびキューバの二重国籍の有無に関する質問が含まれるようになりました。
今回行われたESTA申請書の更新は、米国政府が2021年1月12日にキューバをテロ支援国家に指定し、キューバをVisa Waiver Program Improvement and Terrorist Travel Prevention Act of 2015(2015年ビザ免除プログラム改善およびテロ渡航防止法)の対象国リストに追加したことによるものです。同法にキューバが含まれた結果、以下のVWP対象国の国民はVWPの対象外となり、米国への渡航には米国ビザが必要となります:
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- 2021年1月12日以降にキューバに渡航した者(特定の軍人および政府職員に適用される免除を除く)。
- ESTA申請時またはそれ以降にキューバとの二重国籍を保持している者。
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2022年11月以降、CBPがキューバへの渡航歴があると認識したことを理由に、ESTA認証済みの渡航者が米国への搭乗や入国を拒否されたという報告が数件ありましたが、今回の変更が行われるまでESTA申請書にキューバに関する質問は含まれていませんでした。CBPによると、キューバへの渡航歴と国籍に関する新たな質問が、CBPウェブサイトのESTA申請フォームと、新しいESTAモバイルアプリの両方に表示されるようになったようです。
現在のVWP渡航者への影響
CBPはまた、ESTAの変更を確認する中で、ESTA申請がすでに承認されており、その後に該当期間中にキューバに滞在していたこと、またはキューバとの二重国籍を保有していることが判明した場合、その個人のESTAは取り消されると述べています。ESTAモバイルアプリまたはCBPのESTAウェブサイトhttps://esta.cbp.dhs.govを利用し、現在有効なESTA認証を持っている者で今回のキューバ政策の影響を受ける可能性のある者は、これらのツールのいずれかで自分のステータスを確認・モニタリングする必要があるでしょう。
背景
2015年ビザ免除プログラム改善及びテロリスト渡航防止法により、VWPの新たな資格要件が設けられ、2011年3月1日以降に特定の懸念国に滞在したことのある者(限定的な例外を除く)のVWPを利用したアメリカ入国が禁止され、またVWP対象国と懸念国の二重国籍者のVWPによる入国も禁止されました。CBPは、この法律に関するよくある質問集(FAQ)をこちらで公開しており、懸念国、例外、免除に関する詳細が記載されていますが、キューバ政策の変更を含めこのページはまだ更新されていません。https://www.cbp.gov/travel/international-visitors/visa-waiver-program/visa-waiver-program-improvement-and-terrorist-travel-prevention-act-faq
キューバは、1982年から2015年までテロ支援国家に指定されていました。同法では、2011年3月1日以降の懸念国への渡航をVWP資格の禁止対象としていますが、CBPはキューバがテロ支援国家に再度指定された直近の2021年1月12日が、キューバに対するVWP渡航制限の発効日であるとしています。
今回の措置が持つ意味
今回の措置は、2021年1月12日以降にキューバへ渡航した外国人のVWPによる渡米を制限したものであり、そのような対象者の米国への渡航を禁止したのではありません。対象となったこれらの渡航者が米国に入国するには、米国大使館または領事館で非移民ビザを取得する必要があります。
現在有効なESTA認証を受けている外国籍の方で、キューバへの渡航歴またはキューバとの二重国籍により影響を受ける可能性があると思われる方は、CBPのESTAウェブサイトまたはモバイルアプリでESTAステータスの変更を示す通知がないか確認し、米国への渡航を実行する前に移民弁護士にご相談ください。