2022年3月 アメリカ移民法ダイジェスト
April 8, 2022
1. 米国 移民局は、2023年度H-1B発給枠申請の選考を完了
概要
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- 米国移民局(USCIS)によると、2023年度H-1Bビザ発給枠対象申請の登録受付期間内に、年間発給枠である85000件の新規登録の枠を満たしたとのことです。
- 同局は、通常枠および院卒者枠の選考抽選を完了し、選考結果を雇用主に通知しました。雇用主は、H-1Bキャップ登録アカウントにログインすれば、当選者がわかります。
- これまでの当選通知によれば、申請受付期間は2022年4月1日から6月30日とされています。
- もしUSCISがこの申請受付期間中に、年間85,000件分のH-1B発給枠対象申請を受領しなかった場合、近年のように、上限を達成するためにもう1回または複数回の抽選選択を行う可能性があります。
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詳細
USCISは、2023年度のH-1B発給枠申請の年間上限を満たし、抽選選考が終了したことを発表しました。スポンサーとなる雇用主およびその弁護士には選考結果が通知され、登録アカウントで抽選結果を確認することができます。
初回登録期間中、雇用主は通常申請の発給枠である65,000件と米国の大学院卒者枠の20,000件の枠を満たすために十分な登録を提出しました。正確な登録件数はまだ公表されていません。
次のステップ:オンラインで抽選結果を確認する
抽選結果を知るには、御社の移民法弁護士と御社の署名権者がmy.USCIS.govアカウントにアクセスし、各登録対象者のステータスを確認する必要があります。また、当選した登録者に関しては、政府から雇用主の署名権者と移民弁護士に対し、登録状況に変更があったことを通知するメールが届いているはずです。
USCISのオンラインシステム上では、各登録者の登録状況に関し、下記のいずれかの記載がなされているはずです。
当選(Selected):雇用主は4月1日から2023年度H-1B請願書を提出することができます。
提出済み(Submitted): 最初の抽選で選ばれませんでしたが、USCISが申請期間中に年間割当数を満たすに十分なH-1B請願書を受領しなかった場合、年度末(22年9月30日)まで選考の対象となります。雇用主は、USCISから別途通知がない限り、2023年度のH-1B発給枠申請を行うことはできません。近年では、USCISは発給枠申請の期間中に2回以上の抽選を行う必要があると判断し、最初の抽選が行われた後でもH-1B請願書を提出する機会がありました。
却下(Denied):雇用主が同じ対象者のために重複した登録を行ったことを意味します。重複登録が拒否された場合、その対象者に対する雇用主の登録はすべて無効となります。
無効-支払い不履行(Invalidated - Failed Payment)。登録は行われたが、支払い方法が拒否された、照合されなかった、争われた、またはその他の理由で無効とされたことを意味します。
発給枠対象のH-1Bビザ請願書の提出は4月1日から
USCISは、2022年4月1日より抽選当選者のH-1B請願書の受付を開始します。請願書の提出期間は、その後90日以内に終了します。3月19日から3月29日の間に当選した登録者の2023年度発給枠対象のH-1B請願書は、すべてこの期間中に提出しなければなりません。これまで政府が送付した抽選当選通知には、2022年4月1日から6月30日の申請期間が記載されています。
ほとんどの場合、発給枠対象のH-1Bビザ請願書は申請期間中いつでも提出できますが、特定の時期に提出する必要がある場合もあります。OPT(オプショナル・プラクティカル・トレーニング)を受けているF-1学生で、「キャップギャップ」と呼ばれる救済措置が必要な場合は、OPTの雇用許可証の期限が切れる前に請願書を提出しなければなりません。当選者が必要な学位の取得または授与を待っている場合、学位が発行されるか、当選者が学校関係者から学位取得要件を満たしたという書類を入手するまで、請願書を提出してはいけません。
発給枠抽選に登録された外国人への意味
H-1Bのスポンサーである雇用主とその代理弁護士は、2023年度の抽選結果を確認するためUSCISの登録システムへアクセスし、結果確認後に予め社内で決められた連絡方法に従って当選した社員へ当選の通知を行います。抽選に外れた場合は、雇用主とその弁護士と共にH-1Bビザに代わる移民法関連の手続きについて協議をすることになります。
次の抽選の可能性
今回の抽選で選ばれなかった登録はシステム内に保存され、USCISが6月30日までに発給枠対象のH-1Bビザ申請書を受け取り、年間85,000件のH-1B枠を満たすのに十分な申請が承認されなかった場合に選考の対象となる可能性が残ります。抽選を複数回行うかどうかは、今回の抽選でUSCISがどれだけの登録を選んだか、また当選した登録の内どれだけの数が実際に申請としてUSCISのへ提出されたかによって決まります。
過去2回(昨年度と一昨年度)の発給枠対象のH-1Bビザ申請シーズンでは、USCISは2回以上のH-1B登録選択抽選を実施しています。2021年度には、2020年夏に追加抽選を行い、2020年8月中旬から11月中旬まで、新たに選ばれた登録のH-1Bキャップ申請を受け付けました。 2022年度には2回の追加抽選(計3回の抽選)を行い、2回目の抽選は2021年7月に実施し、8月初旬から11月初旬までH-1Bキャップ申請を受け付け、3回目の抽選は2021年11月中旬に実施し、11月下旬から2022年2月末にかけて申請受付を実施しました。
今後の予定
御社の署名権者と移民法弁護士は、登録システムにログインし、当選者を確認し、各当選者へUSCISが送付した当選通知を取得する必要があります。また、御社のH-1B登録担当者は、USCIS登録システムから御社の登録に対し何らかの動きがあったことを知らせるEメールにも注意する必要があります。同様なEメールは、御社の案件を担当する移民法弁護士にも届きます。
発給枠対象のH-1Bビザ申請書の提出を容易にするため、USCISの選考通知書、会社に関する資料、対象者の学歴などに関する書類、その他必要な文書を含む重要な証拠書類がまだ収集していない場合は、速やかに収集できるよう御社の担当弁護士と緊密に連携するべきでしょう。
2. 国土安全保障省は、特急審査サービス(プレミアム・プロセッシング・プログラム)を段階的に拡大する最終規則を発行
概要
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- この規則により、プレミアム・プロセッシングサービスは、I-140請願書の追加カテゴリー、I-765雇用許可証(EAD)申請の一部、およびI-539資格変更・延長申請の一部をなどへ拡大されます。
- この規則は連邦官報に掲載されてから60日後に発効しますが、実施は国土安全保障省(DHS)のリソースに応じて、少なくとも3年間かけて段階的に行われる予定です。
- 段階的な施行は、I-140移民ビザ申請のEB-1 Multinational Manager/Executive(多国籍企業の管理職枠)およびEB-2 National Interest Waiver (NIW - 国益に基づく免除) 枠、Fビザ、Jビザ、Mビザへの在留資格変更申請書、F-1 Optional Practical Training (OPT) およびJ Exchange Visitor の就労許可(employment authorization)取得の為のI-765就労許可申請をを皮切りに今会計年度中(22年9月30日迄)から始まると予想されます。
- 2025年度には、H、L、E、O、P、Rの主要な非移民ビザの扶養家族のための延長および資格変更のためのForm I-539申請と、まだ特定されていないEAD申請タイプのForm I-765申請に対しプレミアムプロセスが可能になると予想されます。
- この規則はまた、上記の対象案件に対するプレミアムプロセシングサービスに基づく実際の審査開始は、要請を受け取った時ではなく、移民局が 「判断のためのすべての前提条件 」を受け取った時からとしており、これはケースの処理にかかる実際の待ち時間を長くする可能性があります。
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問題点
3月30日、国土安全保障省(DHS)は、米国移民局(USCIS)のプレミアム・プロセッシング・プログラムをいくつかの案件に追加拡大するための土台となる待望の最終規則を発表しましたが、実施開始は今会計年度後半に延期される予定です。
USCISは、審査時間を短縮し、労働許可証保持者に一定の救済を与えるための措置の一環として、この新規則を発表しました。この規則は、2020年10月に議会が可決した「Emergency Stopgap USCIS Stabilization Act」の一部として署名された法律を実施することを意図しており、その法律に詳述されているプレミアム・プロセッシングのケースタイプ、手数料、審査期間をほぼそのまま反映しています。2021年2月、USCISは同法に基づき、プレミアムサービスをE-3ビザ申請請願書に拡大しましたが、これまで他のケースタイプへの拡大には着手していませんでした。
特急審査サービス拡大の為の、長期的な段階的導入プラン
最終規則は連邦官報に掲載されてから60日後に発効しますが、プレミアム・プロセッシングの拡大の実際の実施は、少なくとも3年間かけて段階的に行われ、プレミアム・サービスの利用には条件や制限が課される可能性が高いと思われます。
本年度末である2022年9月30日までに、USCISはEB-1 Multinational Manager/ExecutiveおよびEB-2 National Interest Waiver(NIW)カテゴリーのForm I-140移民ビザ申請、Fビザ、Jビザ、Mビザへの在留資格変更申請、F-1 OPTおよびJ交換訪問者のForm I-765雇用許可申請にプレミアム・プロセシングサービスの適用を拡大する予定です。プレミアム・プロセッシングの詳細および適用される条件については、USCISのウェブサイトで発表されます。
最終規則で定められた対象ケースのリスト、改訂された申請料、および審査期間は以下の通りです。
案件タイプ |
審査期間 |
申請料 |
導入予定時期 |
ほとんどのForm I-140 雇用ベースの第一優先枠、第2優先枠、第3優先枠の移民ビザ請願書
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15暦日 |
$2500 |
導入済み |
Form I-140雇用ベースの管理職枠と国益に基づく免除枠の移民ビザ請願書 |
45暦日 |
$2500 |
2022年度中 |
Form I-129 非移民労働者請願書(H-2BビザおよびRビザを除く)
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15暦日 |
$2500 |
導入済み |
Form I-129 ベースのH-2BビザおよびRビザ非移民ビザ請願書
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15暦日 |
$1500 |
導入済み |
Form I-539に基づくF、J、Mビザへの在留資格変更申請
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30暦日 |
$1750 |
2022年度中 |
Form I-539 ベースのE、H、L、O、P、Rビザ扶養家族のための在留資格変更または延長 |
30暦日 |
$1750 |
2025年度 |
Form I-765 ベースのF-1 OPTおよびJ交流訪問者の雇用許可申請書
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30暦日 |
$1500 |
2022年度中 |
Form I-765ベースの 追加グループの雇用許可申請書
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30暦日 |
$1500 |
2025年度 |
** 本最終規則では、関連法案の規定に従い、USCISが全都市消費者物価指数(Consumer Price Index for All Urban Consumers - CPI-U)の変動に基づき、年2回、プレミアム・プロセッシング料金を調整することも認めています。
USCISは、新しいケースタイプがプレミアム・プロセッシングの対象となった場合、自らのウェブサイト上で発表する予定です。このウェブサイトでの発表では、新しいケースタイプへプレミアム・プロセッシングを利用する際に条件を付けることもできます。そのような条件には、例えばプレミアム・プロセッシングの利用を少なくとも一定期間移民局で審査中である案件に限定したり、抽選を行うなど、事務的な理由で実際の審査開始時期を遅らせるなどが含まれます。
また、プレミアム・プロセッシングの対象となる新しいケースタイプについては、USCISが「判断のためのすべての前提条件」、つまり、ケースタイプに応じたすべての必要書類、面接、バイオメトリクス、バックグラウンドチェックを受け取ってから、プレミアムプロセシングサービスに基づく審査が始まることになります。ケースの種類とその要件によっては、請願者および申請者は、正式なプレミアム・プロセッシングの審査期間よりも長く待たされる可能性があります。
政府の関連施策
これに関連して、USCIS は審査のやり残し案件の増加と審査遅延に対処するため、特定の雇用許可書更新申請者に対する 雇用認可の自動延長を一時的に拡大する見込みの臨時最終規則を近日中に発表する予定です。最終規則が自動延長期間を延長するのか、自動延長の対象となるEADのカテゴリーを拡大するのか、あるいはその両方なのかはまだ明らかではありません。
雇用主および外国人に対する影響
最終規則が発効し、USCISが新たに対象となるケースのプレミアム・プロセッシングの詳細を発表するまでは、現在対象となるForm I-129とForm I-140を利用した請願申請のみにプレミアム・プロセッシングが適用されます。雇用者と外国籍社員は、移民法弁護士と協力して、今年度中にプレミアム・プロセッシングの適用が予定されている案件のうち、プレミアム・プロセッシングの利用を検討すべき一刻を争う案件の洗い出しや検討をしておくべきでしょう。
現在、在米の多くの企業と外国籍の方々の間で大きな問題になっているのは、就労許可証(Employment Authorization Document – EAD)申請審査の遅延です。EADは、永住権申請中であったり、EビザやLビザ、H-1Bビザ保持者の配偶者、学生をはじめ、様々な条件に基づき多くの外国人に発行されています。これら対象者全てのEAD申請の新規・更新申請の審査が大幅に遅れ、承認に1年近くを要する状況が続く中で、期限迄に就労許可を取得できないためにEAD保持者を一時帰休や解雇せざるを得ず対象者に経済的な大きなダメージを与えているだけでなく、そのような社員を雇用する企業の業務にも大きな影響を与えています。人手不足に悩み、雇用逼迫に直面する多くの企業にとって、暫定的に代替の社員を雇うことは容易ではありません。今回の政府の施策は、そのようなEAD申請に対し特急審査が適用されるようになるのかが大きな焦点の1つでした。
しかし、残念ながらUSCISは全てのEAD申請をプレミアム・プロセッシングの対象とすることは意図していません。最終規則の内容から、EAD申請案件のかなりの割合が、最終的にプレミアム・プロセッシングの恩恵を受けられない可能性があります。今年度は、F-1 OPTとJ交流訪問者のEAD申請のみがプレミアム・プロセッシングの対象となる予定ですが、政府によるとこのカテゴリーはEAD申請件数の約10%に過ぎないとのことです。他のEADカテゴリーへの拡大は2025年まで待たねばならず、その年にどのEADカテゴリーが対象となるかは決まっていませんが、最終規則で示されたデータによると、2025年の拡大はEAD申請全体の5%程度にとどまる可能性があります。
3. 米国政府は、追加証拠提出要請(RFE)、却下する意思の通知(NOID)、控訴(Appeals)、およびその他の政府への回答に関する既存のCOVID-19 便宜措置を、2022年7月25日まで延長することを発表
概要
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- COVID-19の緊急事態が続いているため、USCISは期限延長ポリシーを2022年7月25日まで延長することになりました。
- 2020年3月1日から2022年7月25日までの間に出された証拠提出の要請、却下または取り消しの通知、EB-5地域投資センターの終了の通知、その他特定の通知に対して、請願者および申請者は引き続き60日間の追加回答期間が設けられています。
- また、雇用主や外国人は、2021年11月1日から2022年7月25日の間に発行された移民局の却下・否認判断に対する再審理要請の期間の期間を、本来の30日ではなく90日とする暫定方針を継続することになりました。
- 移民局は、コロナウイルス緊急事態に伴う優遇措置期間の延長は、これが最後になる可能性が高いと発表しています。
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詳細
COVID-19パンデミックへの継続的な対応が求められる中、移民局は様々な連邦機関への対応に関する期限延長ポリシーを2022年7月25日までさらに延長することになりました。この措置は、今後も下記への対応に適用されます。
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- 追加証拠提出依頼書(Request For Evidence - RFE)
- 却下する意思の通知(Notice of Intent to Deny - NOID)。
- 取り消しまたは取り消しの意思表示( Notice of Intent to Revoke - NOIR)。
- EB-5 地域投資センター終了の意思表示(Notice of Intent to Terminate - NOIT)。
- 証拠請求の継続(N-14)。
- 8 CFR 335.5条に基づくN-400帰化申請を再開するための動議、許可後の不適当な情報の受領。
- 移民局が下した却下・否認判断に対する再考や控訴をする際のForm I-290Bに基づく手続き、および
- Form N-336, Request for a Hearing on a Decision in Naturalization Proceedingsの提出日に関する要求事項。
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COVID-19による悪影響を最小限に抑える手段として2020年3月に発表されたこの便宜措置は、当初2020年9月に終了する予定でしたが、これまで何度か延長されてきました。
詳細
2020年3月1日から2022年7月25日の間にRFE, NOID, NOIR, NOIT, N-14を受け取った申請者および請願者は、USCISに回答を提出する為の回答期限が、通知に記載された日からさらに60暦日を延長されます。
2021年11月1日から2022年7月25日の間に移民局が下した却下などの不利な決定に対しては、決定日から90日(現行規則ではほとんどの場合30日)内にForm I-290Bに基づく上訴または申し立て、あるいはフォームN-336の聴聞請求の提出をすることになります。
雇用主および外国人に対する影響
この期限延長により、アメリカの多くの会社が業務の一時中断を経験し、また社員の遠隔勤務を続く中、雇用主や外国人が移民局への問い合わせや不服申し立てに対応するプレッシャーが引き続き緩和されることが期待されています。しかし、USCISはこの緩和措置が7月25日に終了する可能性が高いと発表していますので、雇用主は7月25日以降に受け取る政府からの通知に対する対応については、それなりの計画を立てておく必要があります。
尚、この緩和措置は滞在期間延長や雇用許可申請には影響しません。これらの申請は、引き続き失効前に政府が受理している必要があります。