アメリカ移民法ダイジェスト 2020年12月
January 4, 2021
1. 米国・カナダ及び米国・メキシコ間の国境制限が、2021年1月21日まで延長されました
概要:
- 米国-メキシコおよび米国-カナダの国境を越えた旅行を、不可欠な旅行だけに限定する越境制限は、2021年1月21日まで延長されます。この制限は、陸路での越境に限定され、飛行機による入国には影響しません。
- 必須の旅行には、米国市民、合法的な永住者(グリーンカード保持者)、および米国で働くために旅行する外国人などによる旅行が含まれます。
- ビザ免除プログラムやその他のビジネス旅行者は、国境でさらに審査を受ける可能性があります。
- 「必須ではない旅行」目的での入国は許可されていません。これには、観光またはレクリエーションと見なされる旅行が含まれます。
詳細:
米国税関国境警備局(CBP)は、2021年1月21日まで、米国の国境を越えた「必須ではない」旅行およびメキシコとカナダとのフェリー旅行を制限するトランプ政権の政策を継続します。連邦官報に掲載された通知には、有効期限を2020年と記載されていますが、これはタイプミスで、正しい日付は2021年1月21日であると想定されています。制限は、2020年12月21日に期限切れになる予定でした。
COVID-19の発生に対応して、北と南の国境を越えた必須ではない旅行の最初の禁止が20年3月21日に始まりました。当初は4月20日に期限切れになる予定でしたが、1か月単位で数回延長されてきました。 COVID-19の緊急事態の状況に応じて、1月に延長の可能性についてポリシーが再度見直される可能性があります。尚、この制限は空の旅には影響しません
CBPは、「必須ではない」旅行を、観光、ギャンブル、文化イベントへの参加など、本質的に観光またはレクリエーションと見なされる旅行と定義しています。
新しい制限の下で陸路によるアメリカ入国が認められている「必須」の旅行には、以下が含まれますが、これらに限定されません。
- 米国市民と合法的な永住者(グリーンカード保持者)
- 合法的な国境を越えた貿易のための旅行(例:貨物を運ぶトラック運転手)
- 米国で働くための旅行
- 医療目的で旅行する(例:米国で治療を受けるため)
- 教育機関で就学する為の旅行
- 緊急対応および公衆衛生の目的で旅行する(例:COVID-19またはその他の緊急事態に対応するための政府の取り組みを支援するために米国に入る政府職員または緊急対応者)
- 米軍のメンバーとその配偶者および子供による旅行、米国への帰国
- ケースバイケースでCBPによって決定された他の形態の旅行
政権はまた、貿易および出張は追加の審査の対象となることを明記しています。実際には、国境制限が始まって以来、ビジネス旅行者の扱いには一貫性がありませんでした。
これが雇用主と外国人にとって何を意味するか
既存のガイダンスの下では、米国市民、合法的な永住者、および外国人の出張者がカナダとメキシコからアメリカへ入国することは引き続き許されています。ただし、CBPの職員は入国者を検査する幅広い裁量権を持っているため、外国人は米国での雇用や事業活動について詳細な質問を受ける可能性があることは留意しておくべきでしょう。
当事務所では、カナダとメキシコの国境制限を注視しており、進展があれば新たにニュースレターを発行します。
2. 米国移民局(以下、USCIS)は、追加証拠要請(Request For Evidence – RFE)、却下意図の通知(Notice of Intent to Deny – NOID)、控訴、およびその他の対応に関する既存のCOVID-19の便宜的な政策を2021年1月31日まで延長します。
概要:
- COVID-19緊急事態のため、USCISは2021年1月31日まで60日間の期限延長ポリシーを延長しています。
- 雇用者や申請者は、2020年3月1日から2021年1月31日付で発行された追加証拠の要求、却下または認可取り消し意図の通知、EB-5地域投資センターを終了する意図の通知他のある特定の通知に回答する期間がさらに60日延長されます。。
- 雇用主と外国人は、2020年3月1日から2021年1月31日までの間に発行されたUSCISの判断に対する控訴や再考要請を提出する為の期間が、従来の30日から60日に延長されます。
問題
USCISは、COVID-19パンデミックへの継続的な対応の一環として、USCISから出されるさまざまな通知に対する対応期間の締め切り日を60日間延長する現在の方針を2021年1月31日までさらに延長します。この便宜的施策は、下記の対応が対象です。
- 追加証拠の要請(RFE)、
- 拒否の意図の通知(NOID)、
- 取り消す意図の通知(Notice of Intent to Revoke)、
- EB-5地域投資センターを終了する意向の通知 (Notice of Intent to Terminate)、および撤回する意向の通知(Notice of Intent to Rescind)、
- USCISの不利な判定を再考するための控訴/申立の申請、および
COVID-19パンデミックの悪影響を最小限に抑える手段として最初に3月に発表されたこの施策は、当初9月11日に終了するように設定されていましたが、その後数回延長されました。
期限延長施策の詳細
2020年3月1日から2021年1月31日付のRFE、NOID、NOIR、NOIT、または承認撤回の意図通知を受け取った申請嘆願者および申請者は、これら通知に記載されている回答期限に加え、更に60日間回答期限が延長されます。
2020年3月1日から2021年1月31日付で発行されたUSCISの却下通知に対しては、決定日から通常の30日ではなく60日以内に控訴または再考の動機を提出することができます。
これが雇用主と外国人にとって何を意味するか
対応期限の延長は、米国の事業が一時的に中断されたままであり、多くの社員が遠隔勤務を続ける中で、多くの雇用主や申請者に対し、USCISからの追加質問へ対応したり判断を不服として上訴する際の時間的なプレッシャーを引き続き軽減するでしょう。
尚、この便宜策は滞在延長や就労許可の申請には影響しません。これらの申請は、引き続き失効前に移民局へ提出する必要があります。
3. 連邦地方裁判所は米国労働省の賃金規制を取り下げ、相場賃金決定の再発行を命じる
概要:
- 連邦地方裁判所は、米国労働省(US Department of Labor – DOL)が最近公衆への事前の通知が無く発行した暫定最終賃金規制は、通知なく発行する正当な理由がないと判断しました。
- 裁判所は、暫定最終賃金規則に基づいて2020年10月8日以降に行われた相場賃金決定を再発行するようDOLに命じました。
- DOLは、今後数週間で賃金規制を再発行する予定です。
問題
2020年12月14日コロンビア特別区の連邦地方裁判所は、H-1B、E-3、およびH-1B1非移民プログラムとPERM労働認証の相場賃金システムを大幅に改革する労働省の規則を破棄しました。この地方裁判所は、ここ数週間でトランプ政権の規制に反対する判決を下した3番目の裁判所となりました。
この判決は、外国人専門職労働者の一般的な最低賃金が大幅に引き上げられることになった2020年10月8日発表のDOLの暫定最終規則(Interim Final Regulation)に異議を唱える大学と企業グループによって提起された、2つの統合訴訟の結果として出されました。 暫定最終規則として、このルールは一般市民へ告知し意見を公募するという、本来行うべき手続きを省いて政府が発効させました。本来の手続きの一部を省いた理由として DOLは、COVID-19緊急事態の経済的影響の中で、米国の労働者を支援するために迅速な実施が必要であるという点を挙げ、規則の迅速な見直しと実施を正当化しました。裁判所は、公告と意見収集を迂回する正当な理由がないため、行政手続法に違反しているとして、DOLの論理的根拠を却下しました。
DOL賃金決定の再発行
地方裁判所は、規制を撤廃することに加えて、現在無効になっている以前の規則に基づいて2020年10月8日以降に発行された相場賃金決定(Prevailing Wage Determination)を再発行するようDOLに命じました。訴訟の当事者は、今後数週間以内に裁判所の承認を得るために再発行の予定を発表することになっています。発表後DOLは、今回の再発行により影響を受ける雇用者のために、手続き上の便宜を発表すると思われます。
現行の賃金規制の次は
いくつかの不利な判決にもかかわらず、トランプ政権は新しい相場賃金規則を含む、H-1Bおよび他の雇用ベースのビザ申請・グリーンカード申請に重大な影響を与える一連の規制の最終化を進めています。政権は、バイデン新政権の発足前にこれらの規制を実施することを計画していますが、それができるかは未だわかりません。バイデン新政権は、現政権によるこのような土壇場での新規制の実施を延期しようとする可能性があります。
4. 米国移民局が2020年秋の規則改訂に関する行動計画を発表
概要:
- トランプ政権の最後の数週間に、連邦政府機関はH-1Bプログラムを制限し、H-1B、H-1B1、E-3、およびPERM申請の相場賃金を増額する規則を含めたルール改定を進めていくようです
- 政権交代前の1月20日の時点ですでに施行されているいくつかの規則を、トランプ政権は最終決定できる可能性がありますが、全ての規則を完全に実行できる可能性は低いでしょう。
- この行動計画は、トランプ政権下における政府機関の政策的優先順位を反映しており、その一部は1月から始まるバイデン政権により変更される可能性があります。
問題点:
国土安全保障省、労働省、そして国務省は、2020年秋の規制改訂に関する行動計画を発表しました。これは、トランプ政権の最後の6週間における各機関の規則制定の優先事項を明らかにしたものです。発表された内容は、連邦政府機関が2021年1月20日にバイデン政権が発足する前に、トランプ大統領の長年の移民政策上の優先事項のいくつかを最終決定して実施しようと計画していることを示唆しています。
以下は、就労ビザや雇用ベースのグリーンカード申請手続きに関する、政府機関の行動計画の主な項目をまとめたものです。提案された最終的な規制の詳細は、政府が発表するまで機密情報です。また、政府機関が規制の公表予定日迄に規則を発表できない事は珍しくなく、公表予定の規則を最終決定する為にトランプ政権に残されたの時間は2か月を切っています。
H-1Bプログラムの厳格化と相場賃金の引き上げ
トランプ政権は、H-1Bプログラムに大きな影響を与える3つの既存の規則の変更を目指し続けています。国土安全保障省(DHS)は、コンピューターで無作為に選ばれる発給枠対象のH-1Bビザ申請の抽選システムを、労働省の4レベルの賃金に従ってH-1Bビザを割り当てるシステムに置き換える規則を最終決定する予定です。 2020年11月に提案され、通常の告知と意見公募の手続きを経たこの規則は、現在2021年1月に発表される予定です。
法的な異議申し立てにもかかわらず、DHSはH-1Bの専門職の定義を改訂して、「最も優秀な外国人を獲得することに重点を置く」為の規則変更を引き続き進めていきます。 2020年10月8日、H-1B規則は暫定最終規則として発表され、12月7日の一般からの意見公募の検討前に発効するように設定されました。連邦地方裁判所は、DHSが本来採るべき一般告知と意見公募の手続きを省く正当な理由がなかったという根拠でこの規則が違法であるとし、発効前に破棄しました。 この判決を受けDHSは、10月8日以降に一般から届いた意見を検討し、今後数週間で最終的なルールを発行することにより、裁判所から指摘された欠点を修正しようとする可能性があります。確定した場合、管理規則により発効日の遅延が必要になる場合があります。
労働省(DOL)の一般的な賃金暫定最終規則も、連邦地方裁判所によって取り消されているにもかかわらず、今回の行動計画に記載されています。この規則は、10月8日に連邦官報に公表された直後に発効し、一般からの意見公募の機会を設けずに、H-1B、H-1B1、E-3、およびPERM労働認定プログラムの一般的な賃金を大幅に引き上げました。このDOLの規則と一緒に提案・検討されているDHSのH-1Bビザプログラム改訂規則と同様に、実施は停止されていますが、DOLは今後数週間でルールを最終版として公開するための措置を講じているようです。しかし、発効日の遅延やさらなる訴訟が提訴される可能性もあり、2021年1月20日のバイデン政権が発足までに規則の成立が間に合うかはわかりません。
H-4雇用許可の終了
特定のH-4配偶者が雇用許可を申請することができるプログラムを取り消すため規則変更は長期間延期されてきましたが、2020年12月に提案された規制として公開される予定です。現在有効なEADが期限が切れるまで有効であるかどうかなど、提案されるルールの詳細はまだわかっていません。提案は、最終化されるまで発効しませんが、バイデン政権下では最終化されることは無いであろうと考えられています。
留学生の滞在期間の制限や制約
Immigration and Custom Enforcement (ICE)が実施を目指している、特定のF-1およびその他の非移民の滞在期間を、従来のステータスを維持している期間の滞在を認めるDuration of Status (D/S)という取り扱いから、特定の期日とする最終規則は2020年12月に発表される予定です。 当初は20年7月に発表される予定であった規則変更ですが、変更内容が公表された後にかなりの量の意見が一般から寄せられたことを考えると、目標の発表日が達成可能かどうかは不明であり、ICEは最終規則を発行する前に十分な考慮をし、その寄せられた意見に対応する必要があります。
現在、I-94上の有効期間がD / Sとされている外国人は、許可された活動が終了するまで(および該当する猶予期間が終わるまで)米国に滞在することが許可されています。
ビジネス訪問者の制限と新しい要件
Bビザによる訪問者の基準と滞在期間:国務省は、2つの異なる規則を通じて、引き続きビジネス訪問者に影響を与える規則の改訂計画を推進しています。 2020年12月に、国務省は訪問者ビザ(B-1ビザ・B-2ビザ)に関し、許可された活動内容の制限の可能性を含め規則変更の提案をする予定です。
H-1BおよびH-3(研修ビザ)の代わりにB-1ビザ(B-1 in lieu of Hビザ、以下、BILOH)を使用することを排除する国務省の規則は、規制制定の手続きがさらに進んでいます。 BILOHの廃止を提案した規則は2020年10月に発表され、一般から意見の公募がありました。ただし、最終版は2021年6月まで発表される予定はありません。バイデン政権がこの規則の最終化を支持するかは、不透明です。
国務省の提案に加えて、DHSはB-1 / B-2ビザの更に厳密な実施を提案する予定です。規則の提案は2020年6月に予定されていましたが、現在は2020年12月に予定されています。この規則では、Bビザ訪問者のアメリカ入国期間を変更する予定です。
ビザ免除システム(Visa Waiver Program)を利用し陸路でアメリカへ入国する際のESTA申請:DHSは、2020年12月に予定されている暫定最終規則を通じて、ビザ免除プログラムを使用して陸路でアメリカへ入国できるようにするためのESTA登録ができるようにする予定です。暫定最終規則として、一般からの意見を検討する前に、変更は発表直後またはほぼ即時に有効になります。 ESTAは現在、飛行機または船での米国への旅行および入国に対してのみ実施されています。
生体認証(バイオメトリックス)の要件
バイオメトリクスの収集に関する提案も、DHSの議題に残っています。移民法の管理におけるバイオメトリクスの収集と使用を広く拡大しようとする米国移民局の提案が、2020年9月初旬に発表されました。この規則は、外国人が米国に入国した後、定期的に生体認証を収集し継続的な審査の対象となり、生体認証の収集の年齢制限を撤廃し、移民スポンサーと申請書類への署名者(米国市民を含む)を生体認証の収集の対象とします。最終規則の発行予定日は、2020年12月です。
税関国境警備局(Custom and Border Protection、CBP)が提案した、米国の出入国プロセスでの生体認証の使用を拡大する規則は、一般からの意見公募の期間が12月21日で終了しました。CBPは、最終規則の発表予定日を明らかにしていません。
グリーンカード申請手続き
DHSはまた、主に家族ベースのグリーンカード申請で適用される、グリーンカード申請者への財政的サポートを約束する宣誓供述書を管理する規制の修正を計画しています。 DHS提案は、10月初旬に発表され、最終規則は2020年12月に公表される予定です。提案された規則では、グリーンカード申請の主体者たる米国市民や永住者は、信用報告書(credit reports)やクレジットスコア銀行口座情報他のより詳しい財務情報を提出する必要があります。
さらに、グリーンカード手続きにおけるAdjustment of Status申請手続きを変更するDHSの提案は、長期的検討課題から主要な検討課題に政府機関内での優先順位の分類が変わりましたが、2021年9月まで公表される予定はありません。この提案は、移民ビザ申請(I-140申請)とAdjustment of Status申請の同時提出の中止を目指しています。仮にこの改訂規則が確定して実施した場合、グリーンカード申請手続きや渡航許可証の発行が遅れる可能性があります。
L-1ビザ、EB-5およびF-1ビザ / M-1ビザのPractical Trainingに関するルールの発表延期
DHSは、2020年春に発表した際に規則改訂の主要な検討課題の1つとして位置付けていた幾つかの規則改訂プランを、今回は「長期検討課題」リストに移動しました。これは、政府機関内でこれらの規則変更の優先順位が、一時的に下げられたことを示しています。バイデン政権が、これらの長期検討課題を支持するかどうかは不明です。
- L-1プログラムの変更:この提案は、L-1Bビザ申請における専門知識、およびL-1の雇用と雇用者と従業員の関係を再定義します。また、L-1従業員のオフサイト勤務をさらに制限する可能性があります。
- EB-5プログラムの変更:2つのDHS提案を通じ、EB-5地域センターの指定方法が変更され、EB-5プログラムの監視と管理が強化されます。
- Practical Trainingの改革:Immigration and Custom Enforcementによる提案は、FおよびM留学生に認められているPractical Trainingに関する規則を改訂し、12か月間のオプショナルプラクティカルトレーニング(OPT)、STEM OPT延長、および教育カリキュラム期間中のインターンシップ(Curricular Practical Training)の制限を強いる可能性があります。この提案は当初、2020年12月に公表される予定でした。
今後の予定:規制変更の予定と現在の移民プログラムへの影響
今回発表された規則変更の行動計画は、とりわけ、H-1B、H-4 EAD、および留学生プログラムの制限に関して、今後数週間のトランプ政権下における政府機関の優先事項を示しています。
行政が標準的な規則作成手順に従って新規則の実施を目指す場合、規則は最初に提案形式で公表され、30日から60日の意見公募期間があります。このような規則は、行政管理予算局が受け取った一般市民からの意見を十分に検討し、行政管理予算局によるレビューをクリアした後にのみ実施できます。従い、通常のルール作成プロセスは、少なくとも数か月かかります。一方暫定最終規則は、迅速に実施される可能性がありますが、規則が発効する前に告知と意見公募の手続きを省くため、法的な異議申し立ての対象となることがよくあります。 1月20日にまだ発効していない政府機関の規則は、規制プロセスの段階によっては、新しいバイデン政権によって検討や実施が延期される可能性があります。
5. 米国移民局は、就労許可証(Employment Authorization Document – EAD)の発行遅延により、I-9手続きに対する一時的な便宜施策の期間を更に延長します
概要:
- 2021年2月1日まで、雇用主はI-9手続きを通じ社員が合法的に就労できることを確認する際に、リストCの文書として実際の就労許可証であるEADに代わり、EAD申請の承認許可証を証拠書類として採用することができます。この暫定的な対応措置は、当初2020年12月1日に期限切れになる予定でした。
- 2019年12月1日以降、2020年8月20日までに発行された承認通知のみが、この便宜措置の対象となります。
- 2021年2月1日以降も雇用許可を継続するには、雇用主は新しいEADを証拠として正式な終了許可を所持していることを再確認する必要があります。この日以降、EAD承認許可証は証拠として受け付けることはできません。
詳細
米国移民局(USCIS)は、2021年2月1日迄暫定措置を延長し、特定の外国人がI-9手続きにおいて雇用許可を所持している為の証拠書類として、雇用許可証であるEADではなく、EAD申請の承認通知を使用できるようにしました。この通知には、通知を以て雇用許可を持っている事の証拠にはならないことが明記されていますが、EADの発行遅延が続く中で暫定的な対応を継続することになりました。
当初は2020年12月1日に失効する予定だったこの方針は、USCISが訴えられたある訴訟の和解が成立した後、8月下旬に施行されました。 この訴訟はUSCISに対して提起された集団訴訟であり、EADカードの発行が最近大幅に遅れたことによる危害を主張しています。 USCISは、EADの発行が引き続き遅れている理由として、COVID-19関連の運用上の問題を挙げています。
この暫定施策におけるI-9手続き
2021年2月1日までの暫定期間、雇用主は2019年12月1日から2020年8月20日までの日付で発行されたEAD申請の承認通知(Form I-797)を基に、I-9手続きを行う事が出来ます。 通常雇用主は、政府が発行したEADカードを証拠書類として使用しなければならず、承認通知だけを証拠として採用することはできません。
この暫定施策では、Form I-797の承認通知を持っている従業員は、EADカードを発行を受ける前にI-9手続きを完了し、就労を開始できます。
USCISが発行する承認通知には、承認通知だけを以て就労許可の証拠として採用しI-9の手続きをすることができないことは明記されています。
本来、Form I-9を記入する場合、新たに採用された社員が就労許可の証明を提示する際には、州の運転免許証、政府発行の身分証明書、有権者登録カードなど、身元を証明する書類として認められた書類を雇用主に提示する必要があります。受け入れ可能な身分証明書の完全なリストは、フォームI-9に記載されています。
暫定施策の継続
当初発表されたこの暫定施策は、2020年12月1日に失効する予定でした。当初発表された内容に基づき対象者のI-9手続きを行った雇用者は、施策延長を文書として留める為にこれら対象者のForm I-9を更新する必要があります。雇用主は、フォームI-9、セクション2の「追加情報」欄に「2021年2月1日までの雇用許可延長」と記入することでこれを行うことができます。
暫定施策の有効期限が切れたときに
この暫定施策の有効期限が切れる2021年2月1日までに、雇用主は承認通知をForm I-9のリストC#7文書として提示した従業員に対し、雇用許可所持の有無を再確認する必要があります。当該従業員は、リストAまたはリストCのいずれかからの雇用許可の新しい証拠を雇用主に提示しなければなりません。
尚、COVID-19の緊急事態が続いているため、米国移民税関局(US Custom and Border Protection)は、I-9手続きを本来の対面ではなく、遠隔で行うことができるとした暫定措置を2020年12月31日まで延長しています。