2024年12月 アメリカ移民法ダイジェスト
December 23, 2024
2024年12月 アメリカ移民法ダイジェスト
1.国土安全保障省(DHS)、 特定の就労許可証(EAD)更新申請者に対する就労許可の自動延長期間を540日とする方針を恒久化へ
概要
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- 国土安全保障省は今後の規則により、就労許可証(EAD)を適時に更新した特定の外国人に対し、540日間の就労許可の自動延長を永久化します。
- この規則は自動延長の対象となるEADのカテゴリーを拡大するものではありません。
- この規則は 2025 年 1 月 13 日に発効される予定で、2022年5月4日の時点でEAD更新申請が審査中、またはそれ以降に適時に提出した申請者に適用されます。
争点
2024年12月13日に公表された規則に基づき、就労許可証(EAD)の延長を適時に申請した特定の外国人は、EADの有効期間を最長540日まで永久的に自動延長されることになります。この規則は2025年1月13日に発効し、2022年5月4日の時点でEAD更新申請が審査中、またはそれ以降に適時に提出した申請者に適用されます。
詳細
2016年、移民局は、同じ就労許可カテゴリーでEAD更新を適時に申請し、就労許可にEAD更新申請者の資格を確立するための基礎となる請願書または申請書の裁定を必要としない特定のEAD更新申請者に対し、EAD失効から最長180日間の就労許可の自動延長を規定する規則を発行しました。
EADの審査時間が大幅に増加したことにより、移民局は2022年5月、更新申請者のEADの有効期限が審査中に失効してしまうリスクを軽減するために、この自動延長期間を一時的に最大540日まで延長する必要があると判断しました。当時、540日の自動延長は、2022年5月22日時点でEAD更新申請中の人、および2022年5月4日から2023年10月26日の間にEAD更新申請を行った人が対象でした。今年初め、国土安全保障省は、2023年10月27日以降に適時に提出し、2024年4月8日時点でまだ審査中のI-765更新申請書がある資格のある外国人、および2024年4月8日から2025年9月30日の間にEAD更新申請書を提出する資格のある外国人に対して、540日の一時延長を再度提供しました。
EADの審査が滞っていることと遅延が続いていることを考慮し、国土安全保障省は現在、資格のある申請者に対して、540日間の延長を一時的なものから永久的なものに移行するための措置を講じています。
540日間の自動延長の対象者
自動延長の資格を得るためには、申請者は以下の条件を満たす必要があります:
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- 現在のEADの有効期限が切れる前、または指定された一時的保護資格(TPS)の再登録期間中に、I-765 EAD更新申請書を適時に提出する。
- 現在のEADの就労許可カテゴリーと同じカテゴリーで更新申請すること、またはTPSに基づいてEADを更新する。
- 資格のある就労許可カテゴリーで申請する。
自動延長の対象となるEADカテゴリーのリストには、以下のカテゴリーと対応する資格コードが含まれています。今後の規則では、自動延長の対象となるEADのカテゴリーは拡大されません。:
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- 在留資格変更申請者(C09)
- 有効期限が切れていないE-1、E-2、E-3のI-94を持つE-1、E-2、E-3配偶者(A17)
- 有効期限が切れていない L-2の I-94 を持つ L-2 配偶者 (A18)
- 有効期限が切れていない H-4の I-94 を持つ H-4 配偶者 (C26)
- 一時的保護資格(TPS)(A12またはC19)
- 難民および亡命者(A3およびA5)
- 亡命および国外追放・強制退去の差止めの申請を適切に提出した非市民 (C08)
- 女性に対する暴力阻止法(VAWA)に基づき承認された自己請願者およびその資格のある子供(C31)
自動延長期間は、外国人のEADカードの有効期限の翌日から始まります。自動延長期間の終了前にEAD更新申請が却下された場合、延長は自動的に終了します。
これは雇用者にとって何を意味するのか
雇用主は、フォームI-9のコンプライアンスに携わる社員にEADの自動延長期間の永久的な実施について認識させ、その恩恵を受ける可能性のある従業員を特定する必要があります。
バイデン大統領の任期の最後の数週間に実施された規則と同様に、次期トランプ政権はこの規則を改訂または撤回する措置を講じる可能性がありますが、そうするかどうかはまだ明らかではありません。
フラゴメンは新たな自動延長期間の実施状況を注視し、さらなる進展があれば、クライアント・アラートを発表する予定です。
2.H-4およびL-2の扶養家族申請と主体者のI-129請願書の一括処理期限は1月18日まで
概要
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- 2025年1月18日をもって、H-4およびL-2の資格延長・変更申請と就労許可申請がI-129請願書と同時に提出された場合、移民局(USCIS)はこれらの申請をI-129請願申請と一括して審査することを義務付ける連邦裁判所の和解協定が終了します。
- 2023年1月より有効であったこの和解協定により、以前はH-4およびL-2扶養家族の申請が、H-1BまたはL-1本人のI-129請願書の審査より数ヶ月遅れていた審査時間が短縮されていました。
- 今後は、H-4およびL-2扶養家族は、H-1BまたはL-1扶養家族のI-129請願書がプレミアムで処理されたとしても、扶養家族の申請の審査期間が再び長くなる可能性があることを覚悟しておく必要があります。
争点
2025年1月18日以降、USCISは、H-1BおよびL-1のI-129請願書と同時に提出された場合であっても、H-4およびL-2の資格変更・延長申請(Form I-539)および就労許可申請(Form I-765)を、H-1BおよびL-1のI-129請願書の数ヵ月後に審査するという慣行を再開する可能性があります。2023年1月の和解合意により、USCISは約2年間、これらの請願書、申請書の審査を一括して行うことを義務付けられていましたが、この合意は1月18日に失効し、USCISはH-4およびL-2申請書とH-1BおよびL-1の請願書の処理を一括化し、合理化する義務はなくなります。この和解合意は、ワシントン州で提起された連邦地方裁判所Edakunni対Mayorkas裁判の際の和解によるものでした。
和解協定の有効期間中に申請され、1月18日の有効期間満了後も審査中の申請が、和解協定の条項に基づいて一括処理されるかどうかは明らかではありません。
背景
2年間のEdakunni和解合意に基づき、H-1BおよびL-1およびその扶養家族であるH-4およびL-2に関する申請について、USCISは、I-129請願書が通常手続きで提出されたか、プレミアム手続きで提出されたかにかかわらず、同時に提出された扶養家族のI-539およびI-765の申請をまとめて審査することに合意しました。この和解により、扶養家族の審査は、H-1B,L-1の申請者本人よリ遅れて1ヶ月から2ヶ月を要したものの、この和解が発効する前の数カ月に及ぶ空白期間と比較すると、大幅な改善が見られました。
1月20日以降のH-4およびL-2申請手続きに関する更なる変更の可能性
1月18日以降、I-129とH-4/L-2申請書の同時提出による一括審査が解除される可能性に加え、I-539申請者に関するUSCISの方針と実務は、バイデン政権下の現在の方針である、既に提出されたバイオメトリクスをUSCISが再利用するのではなく、H-4、L-2、その他のI-539申請者が新規のI-539申請ごとに新しいバイオメトリクスを提出するために出頭することを義務付けるなど、トランプ第一次政権下で実施された方針に戻る可能性があります。もしこのような慣行が再開された場合、H-1B,L-1のI-129請願書の審査と扶養家族のI-539およびI-765の審査期間の間にさらに大きなギャップが生じる可能性があります。
さらに、バイデン政権は、HおよびLの扶養家族のI-539申請にもプレミアム・プロセッシング・オプションを拡大する予定であると述べていますが、トランプ次期政権が、H-4およびL-2扶養家族のI-539申請へのプレミアム・プロセッシングの拡大を継続するかどうかは不明です。
雇用主と外国籍の従業員にとって何を意味するのか
1月18日に予定されているEdakunni和解の期限切れを考慮し、雇用主および外国籍の方は、対象となる扶養家族のためのH-4およびL-2のI-539およびI-765の同時申請が必要なI-129請願書の提出を優先し、1月18日以前にこれらのForm I-129をプレミアム・プロセッシングすることを検討されることをお勧めします。USCISは、1月18日以降に審査中の申請が引き続き和解案に従って審査されるかどうかを明確にしていないため、早期のプレミアム・プロセッシング申請により、まとめて審査される可能性が最も高くなります。一般的に、雇用主および外国籍の方は1月18日以降、H-4およびL-2フォームI-539およびI-765申請の処理時間がますます長くなる可能性に備える必要があります。
3.H-1Bビザプログラム近代化規則が、25年1月17日から発効へ
概要
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- H-1Bビザプログラムに重要な修正を加える最終規則が12月18日に公布され、2025年1月17日に発効します。
- この規則では、H-1B専門職の定義の改訂、H-1Bへの資格変更を待つF-1ビザの学生に対するキャップギャップ保護の強化、移民局の訪問調査権限の強化、非移民請願書の修正プロセスと要件の明確化、過去に承認を出したという事実を優先するという移民局の長年のポリシーの成文化などが規定されています。
争点
国土安全保障省(DHS)は、2023年10月に初めて提案され、長らく待ち望まれていたH-1Bビザ近代化規則の残りの部分を最終決定しました。同規則のH-1B発給枠に関する条項は今年3月に発効し、残りの部分は12月18日の連邦官報に掲載され、2025年1月17日に発効します。最終ルールは、雇用主に有利ないくつかの改訂を除き、当局の提案したルールとほぼ同じ内容となっています。
詳細
最終規則の主な規定は以下の通りです:
対象となるH-1B職業: この規則では、H-1B専門職種の定義が改訂されました。この改正の中には、定義に大きな柔軟性をもたらすものもあれば、適用資格を狭めるものもあります。特に、学士号を「通常」必要とする職業は、「常に」学士号を必要とすることを意味するものではないことを明確にしています。また、H-1Bポジションの職務に「直接関連する」分野であれば、雇用主が様々な専攻分野の学生を受け入れていても、そのポジションが専門職として認められる可能性があることも明確にしています。最終規則では、DHSは「直接関連する」という用語に妥当な定義を加え、要求される学位とH-1Bポジションの職務との間に「論理的な関連」があることを意味すると定義している。最終規則では、経営学やリベラルアーツなどの一般的な学位名を持つ者のH-1B資格に制限を加えるという規則案に含まれていた規定が重要な点として省かれています。
しかし、この規則には、H-1Bビザを持つ社員が第三者に「人材派遣」される場合、そのポジションが適格な専門職業であるかどうかを判断する際に、請願者(H-1Bビザ社員の雇用者)ではなく、その第三者の要件が最も関連性があるとみなされるという規定を含んでいます。最終規則では 「人材派遣 」を、その外国人が第三者と契約し、その第三者の組織の一員となることを意味し、単に第三者にサービスを提供することを意味するものでない、と定義しています。
過去に移民局が下した審査判断の尊重:この規則は、過去の裁定を尊重するという現在の移民局(USCIS)の方針を成文化し、若干拡張しました。これによって、雇用主が就労ビザ申請を行う場合、その審査結果の予測可能性を高めるものになると思われます。同規則は、同じ当事者、同じ基礎となる事実に基づく就労ビザ申請を審査する場合、状況や資格要件に重大な変更があったり、事前の承認に重大な誤りがある、または新たな重大な不利な情報があった場合を除き、USCISは過去に承認を下ろしているという事実を尊重し従うべきであると規定しています。現行のポリシーとは異なり、この規定は滞在延長申請だけでなく、USCISによるすべての就労ビザ申請の審査に適用されます。
この尊重方針は第1次トランプ政権時に取り消され、その結果証拠書類請求(RFE)と案件の却下が大幅に急増しました。バイデン政権はこの尊重方針を復活させ、更にそれを成文化することで、次の政権によってこの政策が取り消される可能性を低くしています。
H-1B社員の勤務場所の変更と請願書の修正: この規則は、H-1B社員の就労場所に重大な変更があった場合、雇用者は変更請願申請を行わなければならないというUSCISの長年の方針を成文化したもので、そのような重大な変更がある前に変更請願書を提出することを義務付けています。この規則はまた、既存のH-1Bビザ申請請願書のベースとなっている労働省の労働条件申請書(Labor Condition Application - LCA)に記載された就労予定地域内で発生する勤務地の変更など、勤務地の変更が修正請願申請を必要としない状況も成文化しています。
企業オーナーのH-1Bビザ申請資格: 同規則は、H-1Bビザの受益者がH-1Bレベルの専門職の職務を大部分の時間遂行する限り、申請企業の支配権を持つH-1B受益者にもH-1Bビザを保持する資格があることを明確にしています。しかし、このような請願書の初回および最初の延長は、通常のH-1B請願書の最長有効期間である3年ではなく、18ヶ月に制限されます。
本当のH-1B雇用:この規則は、現行規則の雇用者-被雇用者関係を示す要件から、本当の雇用関係の存在を立証することに焦点を移し、本当のジョブオファーがあることを立証する契約書やその他の証拠を要求するという当局の長年の慣行を成文化するものですが、H-1B請願書の旅程要件(H-1Bビザ保持者が他社・顧客企業を転々とする場合に、各勤務場所に派遣される期間の明示)は廃止されます。一般から寄せられた意見を基に、最終規則ではH-1B請願書に記載された全申請期間について、請願者は具体的な日々の職務を設定する必要はないことを明確にする新たな規定が追加されました。この規則はまた、H-1B社員の雇用者が米国内に法的に存在し、米国内での訴状の送付が可能であることという要件を追加しています。
F-1 ビザ保持者に対しキャップ・ギャップ保護の拡大:最終規則では、H-1Bへの資格変更申請を適時に提出したF-1ビザの学生に対して、より長いキャップ・ギャップ(H-1Bへの資格変更申請中のF-1学生が、USCISの審査中にOPTが失効してしまい就労を継続できなくなること)への保護期間(10月1日から翌年の4月1日まで延長される可能性がある)を提供しています。この規則は、資格のあるF-1資格保持者がH-1B資格への変更申請の承認を待つ間、F-1資格と就労許可の失効を避けるために、最大6ヶ月の追加資格と就労許可を与えるものです。
請願書の審査長期化による影響の緩和:この規則では、移民局での審査が長引いた結果、請願申請で当初要請した承認期間を既に過ぎてしまった場合、H-1Bビザ社員の雇用主はUSCISに対し請願書に記載した有効期間を修正をすることができます。既存のLCAが新しい有効期間をカバーしない場合、雇用主は新しいLCAを提出し、現在の実勢賃金と実際の賃金のいずれか高い方を満たす必要があり、提示された賃金を当初の請願書に記載された賃金より下げることは認められません。
訪問調査の成文化: 最終規則は、USCISの長年に亘るFraud Detection and National Security (FDNS)ユニットの雇用者訪問調査を成文化し、強化するもので、雇用者が訪問調査に応じない場合、請願書の却下または取り消しにつながる可能性があることを明確にしています。この規則はまた、H-1B従業員が就労している場所、就労していた場所、就労する予定の場所(H-1B就労に関連するその他の場所のうち、第三者の就労場所を含む)において、現地訪問を実施するDHSの権限を成文化しています。
H-1Bビザ発給枠対象免除の小幅な拡大: 最終規則は、特定のH-1B発給枠対象免除の範囲を小幅に拡大します。この改正は、発給枠免除の対象となる非営利団体や政府系研究機関、高等教育機関付属の非営利団体が、研究や教育以外にも複数の基本的な活動や使命を持っている可能性があることを認めるもので、改正規則では研究や教育が団体の基本的な活動の一つである限り、研究や教育が団体の主要な活動や使命でない場合でも発給枠対象からの免除を認めるものです。
雇用主にとっての意味
雇用主は、この新しいH-1B規則が施行される1月17日以降、H-1Bビザ申請の処理と審査に混乱が生じる可能性があることに備えてください。この規則では、申請に使用する申請用紙Form I-129が改訂され、この新しい申請用紙は1月17日に使用が義務化されます。USCISの審査官は、新しい法的基準や規則に慣れるまで時間がかかるかもしれません。企業は、移民法弁護士と協力してこの変更を理解し、準備する必要があるでしょう。
この新規則は、ドナルド・トランプ次期大統領が1月20日に就任する数日前に施行されますが、新政権がこの規則の変更や撤回を求めるかどうかはまだ明らかではありません。もし、そのような措置が取られる場合、一般市民への通知と意見の公募の機会が必要となりますが、このプロセスには通常数ヶ月を要します。
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