2024年11月8日 アメリカ移民速報
November 8, 2024
選挙の余波: 第二次トランプ政権におけるビジネス移民法
概要
- トランプ次期大統領の二期目の任期中、雇用主は外国人人材を獲得する際に、より多くのハードルに直面する可能性が高いでしょう。
- 渡航禁止やより厳重なセキュリティ・スクリーニングを含む入国制限は、早ければ就任式の日に実施される可能性があります。
- バイデン政権下で既に強化されている移民および移民関連の労働取締りは、国土安全保障省、労働省、司法省にて強化されると予想されます。
- 雇用主は、手続き要件の増加、政府からの証拠提出要求の増加、手続きの遅滞、申請却下率の上昇など、行政上のハードルが上がることを予想すべきです。これらの措置により、雇用主にスポンサーされている外国人労働者の入国、雇用開始、雇用再開が遅れる可能性が高いでしょう。
- 問題点
ドナルド・J・トランプ次期大統領は、2025年1月20日の就任後、様々なレベルで米国への移民を制限すると表明しています。大統領就任後も米国の移民制度は継続されますが、雇用者と外国人は移民手続きを通じてより大きな課題に直面することになるでしょう。
次期大統領は今後数週間のうちに、移民に関する詳細な計画や米国移民局のリーダーシップを明確にすると見られています。以下は、次期大統領の二期目における移民政策の見通しに関する予備的な質問に対する回答です。貴社は、移民法弁護士と協力して、動向を注視し、貴社の外国人雇用・ビザ申請・グリーンカード申請の方針や施策を見直し、移民法へのコンプライアンス・プログラムを再確認し、外国籍社員の採用と雇用維持の戦略を立てる必要があります。
雇用主がスポンサーする移民に関して、第二次トランプ政権の優先事項はどのようなものになると予想されますか?これらの優先事項はどの程度迅速に実施されるのでしょうか?
トランプ次期大統領は、米国の移民制度の抜本的な改革に着手すると見られています。トランプ次期大統領は、自分の政権下で移民法の取締り、外国人とその雇用者の精査、外国人人材のアクセスを制限する「アメリカ人を雇う(Hire American)」政策、および不法滞在者を対象とした徹底的な強制送還に重点を置く方針を示唆しています。
トランプ次期大統領の政策の一部は、大統領令や大統領布告、および国土安全保障省、国務省、労働省の政策の急速な変更を通じて、迅速に実施される可能性があります。いくつかの変更は、就任式当日やトランプ大統領の二期目の最初の数週間から数カ月以内に施行される可能性があります。これには、厳格な入国制限、「極端な審査(Extreme Vetting)」政策の即時実施、一部の人道的プログラムやSTEM移民政策を含むバイデン政権時代の取り組みの停止などが含まれる可能性があります。これらの取り組みの多くは法廷で争われる可能性が高いですが、最近の連邦最高裁判所の判決により、大統領には規則制定や変更手続きに関しより大きな自由裁量が与えられています。
2. 渡航制限と 「極端な審査」
第二次トランプ政権は渡航にどのような影響を与えるのでしょうか?入国禁止は予想されますか?どの国が影響を受ける可能性がありますか?
トランプ次期大統領は、第一次政権発足後の最初の数週間に課したのと同様な渡航禁止措置を復活させると述べています。次期大統領およびその顧問も、将来の渡航禁止措置の範囲については言及していませんが、チャド、エリトリア、イラン、イラク、キルギス、リビア、ミャンマー、ナイジェリア、北朝鮮、ソマリア、スーダン、シリア、タンザニア、ベネズエラ、イエメンの国で生まれた、あるいはその国の国民である個人は、トランプ次期大統領の第一次政権時に一定の渡航禁止措置の対象となっており、新政権でも何らかの形で入国制限の対象となる可能性があります。トランプ次期大統領は、他の国からの入国者に対する制限も検討する意向を示しています。
入国禁止令はいつ発表されるのですか?
入国制限の復活は、トランプ氏の選挙活動中一貫して挙げられてきたテーマです。トランプ次期大統領は、正確な時期はまだ不明ですが、早ければ2025年1月20日の就任式当日にも新たな渡航禁止措置を発動する可能性はあります。
「極端な審査」とは何ですか?米国への渡航を計画している、またはすでに米国に滞在している外国人にどのような影響があるのでしょうか?
極端な審査政策とは、移民局での移民法におけるベネフィット(非市民が米国政府から受けられる様々な合法的地位、許可、またはサービスのことを指し、これには市民権取得、就労許可、滞在延長などが含まれる)の請願書や申請から、在外米国領事館でのビザ申請、米国国境や入国港での検査に至るまで、移民手続きの各段階で外国人に対する生体認証要件、身元調査、セキュリティ・スクリーニングの強化を意味すると思われます。
少なくとも、極端な審査は、ビザ、入国、移民法におけるベネフィットの承認までの待ち時間が長くなることを意味し、個人の米国への渡航、就労開始、米国への再入国、雇用再開を遅らせる可能性があります。また、移民法におけるベネフィットの申請の却下率や米国への入国拒否率が高くなる可能性もあります。
3️. 外国人材へのアクセスと移民手続きへの影響
雇用に基づく移民申請の手続きと審査は、新政権でどのように変わるのでしょうか?
雇用主や雇用主にスポンサーされてる外国人は、第二次トランプ政権において、より厳しい要件、より多くの行政的ハードル、またケース手続きの大幅な遅延に直面する可能性があります。トランプ次期大統領の顧問は、合法的な移民を制限し、アメリカ人労働者を優先するための詳細な計画を策定しています。これらの規制は、実質的なものから手続き的なものまで、様々な形で実施される可能性があります。
規制の中には、長い承認手続きを要する規則が必要なものもありますが、行政指導の発行や既存の行政指導の撤回を通じて、非常に迅速に実施できるものもあるでしょう。
人道的移民プログラムへの影響はどのようなものになるのでしょうか?
トランプ次期大統領とその顧問は、DACA(Deferred Action for Childhood Arrival‐オバマ政権が導入した施策で、子どもの頃に米国へ来た特定の個人を強制送還から一時的に保護するプログラム)の終了、一時的保護資格(TPS)指定の更新拒否、および特定の人道的パロール(人道上の理由による臨時的入国許可)プログラムの終了について協議しています。来年には連邦最高裁判所がDACAプログラムを無効にすると予想されています。
TPS指定や人道的パロールプログラムの終了は法廷で争われる可能性が高いものの、そのような訴訟の影響は予測できません。
現在人道的プログラムの恩恵を受けている外国人の中には、非移民またはグリーンカードのスポンサーになる資格を持つ方もいるでしょう。しかし、その資格については慎重に検討し、リスクを考慮した上で申請する必要があります。Fragomenの専門家は、リスクのある外国人の方に対する戦略を検討するお手伝いをいたします。
4. 取締りとコンプライアンスへの影響
雇用主は取締りやコンプライアンス義務の強化にどのように備えるべきでしょうか?
バイデン政権下での移民の取締りは強固なものでした。しかし、トランプ次期大統領は二期目においてより大規模な取締りを公約しました。これには以下が含まれる可能性があります。
- 雇用主のI-9フォームによる就労資格確認業務に対する監査の強化
- 移民局のFraud Detection and National Security (FDNS)部門(移民法上の不正・偽証申請および国家安全保障・公安に関する問題を調査する移民局の組織)による査察の拡大
- 労働省による労働認定証および労働条件申請書(LCA)のコンプライアンスの監査と調査の強化
- 司法省による米国労働者に対する差別への継続的な取り組み
雇用主は、移民法コンプライアンスに積極的な姿勢を取り、違反や罰則のリスクを最小限に抑えるために、内部監査を検討する必要があります。
5. バイデン政権末期の移民問題
バイデン大統領は任期最後の数カ月で移民問題に対策を講じる予定なのでしょうか?現在進行中の移民規制についてはどうでしょうか?
バイデン政権は、H-1Bプログラムを近代化するための様々な規制を含める移民法関連規制を数カ月間策定中です。それを完了させるための措置を講じる可能性はありますが、今から2025年1月20日までの間に十分な時間があるかどうかは明らかではありません。
6. 次のステップ
第二次トランプ政権に備え、雇用主は今何ができるでしょうか?
雇用主はFragomenの専門家と緊密に連携し、新政権に向けて計画を立てるべきです。これには、移民申請のアプローチや戦略についての協議、コンプライアンス体制の見直し、政権交代が外国人材へのアクセスに与える影響についての従業員、リーダーシップ、事業部門とのコミュニケーションなどが含まれます。
トランプ 政権前のビジネス移民問題で雇用主は外国人材の擁護や提唱活動を検討 すべきでしょうか?訴訟についてはどうでしょうか?
外国人材へのアクセスの重要性を新政権に訴え、米国の競争力を最大化する政策を提唱するには、企業の声が重要になります。擁護や提唱活動には、提案された規制に対する意見、政府機関の政策に関する意見の提供、可能であれば政権幹部との面会など、様々な形があります。場合によっては訴訟も、却下されたケースを覆し、長引く手続きの遅延を解消し、制限的な政策に異議を唱え、影響力の大きい移民プログラムを維持するための効果的な戦略となり得ます。
貴社がそのような活動や訴訟に関心をお持ちの場合は、当事務所の政府戦略・コンプライアンス・グループがお手伝いいたします。