2025年1月21日 アメリカ移民法速報
January 21, 2025
トランプ大統領の最初の移民関連大統領令は、国境の強制、極端な審査、アメリカ出生権に伴う市民権、人道的プログラムの制限に焦点を当てています
概要
- トランプ大統領は、就任後数時間で移民に関する数々の大統領令に署名しました。大統領令には、外国人の極端な審査(Extreme Vetting)を実施する指令、アメリカでの出生に伴う市民権の取得に大幅な制限を設けることを目指す命令、米国の難民・亡命手続きの一時停止、米国とメキシコの国境における徹底的な制限と法執行措置などが含まれています
- トランプ大統領はまた、AIやその他のSTEM人材に対する移民の選択肢の拡大、移民給付に対する行政上の障害の削減、帰化手続きの合理化などを含む、バイデン政権の多くの大統領令も取り消しました
- 初日の大統領令には広範な渡航禁止措置は含まれていませんが、トランプ大統領は連邦政府機関に対し、今後30日から60日以内に渡航制限を勧告するよう指示し、今後数週間から数ヶ月のうちにいくつかの渡航制限が実施される可能性を示しています
争点
ドナルド・J・トランプ大統領は就任直後、数十の大統領令の中で移民関連の大統領令(EO)にも署名しました。最も大々的な移民関連の大統領令は、米国とメキシコの国境における取締りに関するものですが、その他の重要な大統領令は、米国への入国を希望するすべての外国人に対するセキュリティ・スクリーニングの強化(将来的な渡航制限の可能性を含む)、アメリカでの出生に伴う米国市民権取得の制限、米国への亡命や難民申請、その他の人道的プログラムの一時停止を目的としたものでした。
トランプ大統領の移民関連大統領令の概要は以下の通りです。これらの行政命令の多くは、施行前に行政機関による政策や規制の策定が必要となり、そしてその多くは裁判で争われる可能性が高いと考えられています。今後数週間から数ヶ月の間に、移民に関する追加的な大統領令や行政措置が予想されています。
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バイデン政権の行政命令の取り消し: 雇用に基づくビザ申請やグリーンカード申請に影響するいくつかの重要な命令を含むバイデン政権の多くの行政措置が、包括的な大統領令によって取り消されました。トランプ大統領は、合法的移民と移民給付へのアクセスに対する障壁を減らして合法的移民手続きへの信頼回復を移民局へ指示し、その結果移民局の業務や方針が数多く改善されることになったバイデン大統領の大統領令を取り消しました。バイデン大統領が出したこの大統領令は、米国がAIやSTEM分野での外国人人材を惹きつけ、維持するための仕組みを開発するよう移民局に指示したもので、重要な人材獲得のための非移民および永住権取得の道を促進したと評価されていました。
審査強化と将来的な渡航禁止の可能性: 予想通り、トランプ大統領は、米国ビザ、米国への入国、または米国移民給付を申請する外国人に対するセキュリティ・スクリーニングと審査を強化することを求める大統領令を発布しました。この大統領令に基づき、国務長官は、国土安全保障省および司法省、国家情報長官と協力し、ビザおよび移民手当の申請者に対し、トランプ第1次政権時代に施行されたものと整合性のある審査・審査基準および手続きを確立し、特に安全保障上のリスクが確認されている国や地域から入国する外国人に対し、「可能な限り最大限の」審査を実施しなければなりません。ビザやその他の移民給付を申請する外国人は、ほぼ直ちに、より徹底的な審査を受けることになると予想されています。
さらに、大統領令から60日以内に、国務省、国土安全保障省(DHS)、司法省、国家情報長官は共同で、入国制限が推奨される可能性のある国を特定する報告書を提出しなければなりません。また、これらの国の出身者ですでに米国に滞在している可能性のある人物に関する情報を検討し、そのような人物の行動が強制送還に値するかどうかを判断します。
この大統領令はまた、国務長官に対し、同じ上記の省庁と協力して、大統領令から30日以内に、犯罪および安全保障上の入国不許可事由に関連する既存の規則および指針の適切な改正を検討すること、難民および無国籍者の米国入国前に厳格な身元確認を確認・調査を行うこと、米国の安全を脅かす敵対的行為者に利用されないようにすべてのビザ・プログラムを評価することなど、その他の安全保障強化策を講じるよう求めています。
さらに、別の命令では、国務長官が国土安全保障省、司法省、財務省、国家情報長官と協力して、国際的ドラッグ・カルテルやギャングを外国テロ組織として指定された組織のリストに加えるよう勧告することを求めています。
アメリカでの出生に伴う市民権取得に対する制限: トランプ大統領は、2025年2月19日以降に生まれた特定のグループの子供たちの米国市民権に大幅な制限を設ける大統領令に署名しました。この大統領令により、2025年2月19日以降に米国で生まれた下記のグループの子どもは米国市民権を取得できなくなります:
- 母親が米国に不法滞在しており、出生時点で父親が米国市民または米国のグリーンカード保持者でない子供
- 母親が合法的に、しかし一時的に米国に滞在しており、出生時点で父親が米国市民またはグリーンカード保持者でない子供。合法的かつ一時的なステータスには、B-1/B-2、F-1またはその他の学生ビザステータス、H-1B、L-1、TN、O-1、P-1、およびその他の一時的な雇用ベースの非移民ステータスが含まれるが、これらに限定されるものではないとされています
大統領は連邦政府機関に対し、2月19日以降、上記の子供たちの米国市民権を認める書類の発行を停止し、州、地方自治体、またはその他の当局が発行した米国市民権を認めると称する書類の受理を拒否するよう命じました。つまり、2月19日以降、米国でH-1B、L-1、TN、O-1、P、およびその他の雇用に基づく非移民資格(およびその他のすべての種類の非移民資格)で生まれた子供は、米国当局から米国パスポートの発給を拒否される可能性があり、代わりに移民局への申請を通じて子供の扶養家族である非移民資格を証明する書類を入手する必要があります。
一方、この命令に対する最初の異議申し立てが、すでに連邦裁判所に提出されています。米国での出生に伴う市民権取得の法的根拠は、合衆国憲法修正第14条第1項です。今回の大統領令は、この憲法条項を通常の解釈を超え挑戦的に解釈しています。
アメリカ・ファーストの貿易政策: 大統領令は連邦政府機関に輸出規制の見直しを指示し、国土安全保障省と商務省にはカナダ、メキシコ、中国からの不法移民とフェンタニル(違法薬物の一種)の流入を調査するよう命じています。これらの見直しは、雇用主が就労ビザを支援する外国人に何らかの影響を及ぼす可能性のある貿易および国家安全保障上の措置につながると予想されています。
性同一性規制:大統領令は、米国政府は2つの性別しか認めないとし、パスポート、ビザ、グローバル・エントリー・カードを含む政府発行の身分証明書に、所持者が男性または女性のどちらかであることを反映させることを義務付ける変更を実施するよう、国務省と国土安全保障省に指示しました。政府機関はまた、この命令に従って政府の書式を変更するよう指示されています。このことは、現在米国のパスポートや特定の入国管理書類、移民局や国務省の申請書や請願書で利用可能な第3の性別の選択肢が、将来のある時点で利用できなくなることを意味します。この制限やその他の性同一性制限に対しては、連邦裁判所からの異議申し立てが予想されています。
人道的仮釈放プログラムの終了: トランプ大統領の国境警備に関する大統領令の1つは、国土安全保障省に対し、キューバ、ハイチ、ニカラグア、ベネズエラの国民を対象とした人道的仮釈放プログラムを停止するよう指示するものです。このプログラムは2023年1月に導入され、バイデン政権によってすでに失効が予定されていたもので、経済的なスポンサーを持つ適格な外国人に仮釈放と就労許可を与えるものでした。
米国難民プログラムの停止:大統領令により、米国難民支援プログラム(US Refugee Assistance Program - USRAP)は2025年1月27日午前0時1分(東部標準時)より少なくとも3ヶ月間停止されることが発表されました。この期間中、難民申請に対する決定は一時停止されますが、国務省および国土安全保障省の両長官は、国益のため、またこれらの外国人が米国の安全保障や福祉に対する脅威とみなされない限り、ケースバイケースで難民を受け入れる権限を持ちます。大統領令から90日以内に、国土安全保障省と国務省はホワイトハウスに対し、USRAPの再開が米国の利益になるかどうかに関する報告書を提出しなければならず、その後90日ごとに報告することが求められています。同命令はまた、国土安全保障省と司法省に対し、難民の受け入れや再定住に州や地方の管轄権がより大きく関与すべきかどうかを検討するよう指示しています。
国境と国内の取締り: トランプ大統領の初日の大統領令の多くは、米国とメキシコの国境に焦点を当てています。大統領は南部国境における国家非常事態を宣言し、米国内の国内政策の執行に軍の使用を制限する連邦法があるにも関わらず、米軍の関与を正当化する「侵略」であるとしました。この大統領令は、南部国境での亡命手続きを事実上停止します。 大統領令は国防総省に対し、不法な大量移民、麻薬、人身売買、その他の犯罪行為に対処することにより、「国境を封鎖し、米国の主権、領土保全、安全を維持する」ための計画を考案するよう指示しています。関連する大統領令は、いくつかのドラッグ・カルテルを外国テロ組織として指定しました。
また、別の大統領令では、国内の移民取締りに重点を置き、不法滞在する外国人の排除と、移民局、税関・国境警備局(CBP)、移民税関捜査局(ICE)における民事取締りの優先順位の再設定を目的としています。