2025年2月 アメリカ移民法ダイジェスト
February 10, 2025
At a Glance
トランプ政権の発足に伴う移民施策の厳格化を受け、米国大使館におけるビザ申請や海外渡航の注意点に関するご質問が増えております。そこで、弊所では海外渡航に関する「よくある質問集」を作成しました。この質問集は、今後発表されるであろう様々な施策に基づき、必要に応じ改訂していきます。25年1月に発表された政府の移民施策の内日本企業にも影響を与えるであろう施策を含め、お役に立てば幸いです。
1 新政権における海外渡航について、雇用者と外国籍社員が知っておくべきこと
2 米国連邦地裁、「出生地主義の市民権」に関する大統領令発効の一時差し止め
1 新政権における海外渡航について、雇用者と外国籍社員が知っておくべきこと
概要
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- トランプ大統領の就任後最初の行動には、渡航と将来の制限の可能性に関するいくつかの大統領令が含まれていました。
- 大統領は直ちに渡航禁止令を発令したわけではありませんが、これらの大統領令により、領事館や入国港で外国人が受ける審査レベルは急速に高まり、今後数ヶ月の間に渡航制限が実施される可能性があることを示しています。
- このように、ビザ申請に対する審査の強化や渡航制限が実施される可能性がある中で、弊所の『海外渡航に関するよくある質問集』が、雇用者とその外国籍社員の方々に少しでも何らかのお役に立てば幸いです。
問題点
トランプ大統領は就任初日に、移民と国家安全保障に関わる多数の大統領令に署名しました。これらの大統領令は直ちに入国を禁止するものでありませんが、今後数週間から数ヶ月の間に海外渡航に影響を及ぼす可能性のある、政権の今後の行動計画を示しています。また、大統領令の原則の多くは、領事館や国境で外国人が受ける審査のレベルや、移民局での審査に直ちに変更をもたらします。
以下は、政権交代が米国への海外渡航および再入国に与える影響について、よくある質問集(FAQ)を編纂しました。これらのFAQは、政策や要件の進展に応じて更新されていきます。具体的なご質問については、弊所の専門家までお問い合わせください。
よくある質問
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- 米国政府は米国への新たな入国禁止措置をとりましたか?
1月24日現在、米国政府は第1次トランプ政権時に実施されたような渡航禁止措置を講じていませんが、新政権は特に米国南部国境において、特定の種類の人道的な米国入国を制限する措置を講じています。
しかし、渡航制限はごく近い将来に導入が予想されています。トランプ大統領は、国土安全保障省とその他の連邦政府機関に対し、大統領令から60日以内、つまり2025年3月21日までに、この問題を検討し米国への入国制限や入国許可制限の可能性について勧告を行うよう命じています。したがって、外国人は、広範な渡航制限が課される場合、またそのような制限がいつ発令されるのかについて、弊所が提供する最新情報や勧告に細心の注意を払うことが重要でしょう。
現在、渡航禁止令は発令されていないものの、新政権が国境と国家安全保障に重点を置いていることから、このFAQで詳しく説明しているように、渡航者は入国審査のあらゆる段階で、ほぼ直ちに厳しい審査にさらされることが予想されます。 - 将来、どのような渡航禁止措置がとられる可能性がありますか?
政府は具体的な計画を発表していませんが、政権のアドバイザーは、安全保障上のリスクが高まったとみなされる国の国民、米国の労働市場に悪影響を及ぼすとみなされる特定のクラスの非移民、公衆衛生上の懸念がある地域に滞在したことのある渡航者、米国政府が自国民の国外退去や本国送還への協力を拒否したとみなす国からの渡航者などに、将来的な渡航制限が集中する可能性があることを示唆しています。
2017年から2021年初頭にかけて、チャド、エリトリア、イラン、イラク、キルギス、リビア、ミャンマー、ナイジェリア、北朝鮮、ソマリア、スーダン、シリア、タンザニア、ベネズエラ、イエメンの国民に入国制限が課されました。COVID-19のパンデミックの最盛期には、公衆衛生上の入国制限があり、またパンデミックに関連した経済不況のため、H-1B、L-1、J-1ビザの発給が一時的に禁止されました。このような入国制限は、新政権が具体的な政策を定めるにつれて具体化する可能性があります。 - 私は有効な米国非移民ビザを持っていますが、今後数ヶ月の間に仕事で海外出張する必要があります。現在の状況で渡航は可能ですか?
すべての外国籍の方は、渡航計画を慎重に立て、突然の変更に備える必要があります。遅延や混乱のリスクを最小限に抑えため、具体的な計画について弊所の専門家に相談することは一考でしょう。過去に入国制限を受けた国の国籍の方は、このFAQでご紹介したように、政府が渡航禁止措置を再開した場合、今後数ヶ月間の海外渡航には特にご注意ください。
過去に入国を禁止された国の国民でなく、有効な米国の非移民ビザやその他の必要な渡航書類を所持している場合、海外旅行で直面するリスクは少なくなりますが、海外から帰国する際には、米国の入港地でより集中的な審査が行われることが予想されます。国境職員は、あなたの旅行、あなたの経歴、あなたの見解・考え方、あなたの海外および米国での活動などについて、より詳細な質問をする可能性があります。いつものことですが、忍耐強く、できる限り質問に答えることが重要です。問題が発生した場合は、雇用主に連絡するよう依頼し、雇用主から弊所へ連絡してもらうこともできます。弊所作成の詳細な渡航ガイダンスや移民法遵守のヒントは、弊所の一般向けウェブサイトでご覧いただけます。 - 数カ月以内に渡航する予定ですが、海外滞在中に新しいビザを申請する必要があります。どうすればよいですか?
米国に再入国するために新しいビザが必要な場合は、計画を確定する前に渡航のリスクとメリットを慎重に検討する必要があります。
上述したように、今後数週間から数ヶ月の間に入国が禁止される可能性があり、個人によっては再入国が遅れる可能性があります。加えて、新政権ではビザ申請手続きはほぼ即座に長期化する可能性が高いとみられています。過去に面接の免除を受けた場合でも、領事館での面接が必要となる場合があります。ビザの予約を確保するのに、長い待ち時間が発生する可能性もあります。また、領事によるセキュリティチェックが長引いたり、より詳しい尋問を受ける可能性もあります。より集中的な身元調査の対象となった場合、あなたのケースが解決されるまでの間、米国外で数週間から数ヶ月の遅延が発生する可能性があります。
海外への渡航が避けられない場合は、できるだけ早く弊所の専門家にご相談ください。 - 性別に関する新しい大統領令は、米国市民、永住権保持者、外国人を含め、トランスジェンダーまたはノンバイナリーである旅行者にとって何を意味しますか?米国市民、永住権保持者、ビザ保持者で、現在「X」識別子のついた書類を所持している人、または出生時の性別以外の性自認を持つ人はどうなりますか?
1月20日に署名された大統領令において、新政権は連邦政府機関に対し、男性と女性の性自認のみを「生物学的実在」として認め、個人が出生時に割り当てられた性別のみを認識するよう命じました。渡航書類に関しては、連邦政府機関に対し、米国のパスポート、ビザ、その他の書類が 「所持者の性別を正確に反映する 」ことを保証するよう指示しています。連邦政府機関はこの大統領令を120日以内、つまり2025年5月20日までに実施するよう指示されました。
この大統領令は法廷で争われることが予想されるますが、国務省はすでに米国のパスポートやビザにおける第3の性別の選択肢をなくす措置をとっています。米国移民局(USCIS)は、帰化申請とグリーンカード申請における第3の性別オプションを廃止する見込みです。現在、第3の性別の識別を要求する国務省が保留中の申請の処理は、大統領令に基づいて一時停止されており、USCISへ提出されている申請者も保留中の申請について同様の扱いを受けることになると想定すべきでしょう。政府はまた、性別変更後の新しい連邦文書の取得にも同様の制限を課しています。
現在、Xの識別子が付いた、あるいは出生時に割り当てられた性別とは異なる性別で発行された米国旅券を所持している個人に関しては、大統領令はこれらの文書を無効にするものではなく、旅行や再入国には引き続き有効であるはずです。国務省は、これらの書類に関する指示を職員に出す予定であると伝えられています。現在のメディアの報道によれば、すでにX識別子で発行された米国パスポートは引き続き有効であるとのことです。一方、これらの書類を所持している旅行者は、米国入国港や米国領事館で、米国市民、合法的永住権保持者、非移民のいずれであるかにかかわらず、この命令に照らして書類をどのように扱うべきかについて不確かな職員から質問を受けることが予想されます。いつものことですが、忍耐強く、できる限り質問に答えることが大切です。問題が発生した場合は、雇用主に連絡するよう依頼し、雇用主から弊所に連絡してもらうこともできます。その他の渡航ガイダンスや移民法へのコンプライアンスのヒントについては、弊所のウェブサイトの専用ページをご覧ください。
具体的な旅行先やプランについてご質問がある場合、また新たな進展があった場合には、御社案件を担当する弊所弁護士やスタッフへお問い合わせください。 - 新政権では、外国人旅行者はどのような保安検査対策の対象になると予想されますか?
1月20日、トランプ大統領は「外国人テロリストおよびその他の国家安全保障および公共の安全の脅威から米国を保護すること」に関する新たな大統領令に署名しました。この大統領令は、国家安全保障上の脅威から米国を守るため、外国人をより集中的に審査する意向を表明したもので、これには米国にとって脅威とみなされるイデオロギーを信奉する人物や、「(米国の)市民、文化、政府、制度、建国の理念に対する敵対的な態度 」が含まれます。政府がそのような脅威をどのように評価するかは明らかではありませんが、この命令は外国人旅行者が従来よりもはるかに広範な身元調査と精査に直面する可能性があることを示していると言えるでしょう。
同命令は、ビザや入国許可、その他の移民・ビザ関連手続きの申請者に対し、「可能な限り最大限の」審査とスクリーニングを行うよう求めています。この命令そのものは、実施しなければならない具体的な審査や審査方法を特定しているわけではありません。むしろこの命令の下で、米国務省は米国土安全保障省および司法省、国家情報長官と協力し、第1次トランプ政権で命じられた審査強化プログラムと整合性のある、強化された安全保障審査および審査の基準と手順を確立することが求められています。
とはいえ、新政権が移民と国家安全保障に集中的に取り組んでいることから、旅行者は、米国領事館や入国港、米国移民局において、より集中的な質問、身元調査、セキュリティチェック、書類提出の要求、追加証拠の要求など、監視の強化がほぼ即座に実施されることを予期しておく必要があるでしょう。 - 新しい強化された審査および審査の対象となるのは誰ですか?
強化された審査と確認の手続きは、米国ビザまたは米国への入国を申請する米国外の外国人に適用されます。さらに、この強化された措置は、非移民資格の延長や変更、就労許可、米国永住権など、その他の手続きを行う米国在住の外国人にも適用されます。 - 新しい強化された審査と確認の手続きは、特定の申請者のみに適用されるのですか?
ビザ、入国許可、その他の移民給付を申請するすべての申請者は、これまで以上に厳しい審査と身元確認を受けることが予想されますが、この命令は、安全保障上のリスクが確認されている国や地域からの申請者の審査強化に特に重点を置くよう求めています。今後数週間のうちに、政府機関は特に厳格な審査が行われる可能性のある国、地域、および/または申請者の種類ついて勧告を行う予定です。 - 旅行者はどのような追加審査や審査を受けることになりますか?
具体的な措置はまだ明らかになっていませんが、この命令は、トランプ大統領の第1次政権時代に実施されていた審査基準と一貫性のある強化された審査基準の実施を求めており、新政権は、トランプ大統領の前任期中に実施された、以下を含む同じ種類の強化された審査措置の多くを復活させる可能性が高いと考えられています。-
- ビザ申請者に対する領事の監視強化: トランプ第一次政権の初期に起こったように、国務省は領事に対し米国ビザ申請者の精査と審査を強化するよう命じる可能性が高いでしょう。これには、より集中的な面接の実施を領事に義務付け、領事が1日に行う面接の回数を制限し、1回の面接により多くの時間をかけられるようにし、特定の申請者層に対してさらに集中的な精査を命じ、すべての申請者が受ける標準的なチェック以外に追加のセキュリティチェックを命ずる裁量を領事に認める、といった措置が含まれる可能性があります。
- 面接の義務化: 現在、雇用に基づく在留資格変更許可申請者のほとんどは、許可前に面接を受ける必要はありませんが、USCISはトランプ大統領の前任期中に実施されていた、雇用主がスポンサーとなる永住権申請者に対するほぼ普遍的な面接要件を復活させる可能性が高いと見られています。同様に、第一次トランプ政権と同様に、国務省は在外米国領事館での非移民ビザ申請における面接免除の利用を大幅に制限する可能性が高いでしょう。
- 個人情報の要件拡大:国務省が第一次トランプ政権下で、特定のビザ申請者に対し、15年分の居住歴、職歴、渡航歴、5年分のソーシャルメディアの公開アカウント情報の提出を要求し始めたように、移民局は現行の申請書やフォームの説明を改訂し、追加情報や書類の提出を要求する可能性があります。外国人は、領事館でのビザ申請だけでなく、米国市民権・移民局でのより広範な申請や特定の移民給付のための請願でも、これらの情報の提供を求められる可能性があります。
- 生体認証要件の拡大: バイデン政権は、一時的就労ビザ申請者の扶養家族、および在留資格の延長や変更を申請するその他の特定の非移民に対して、生体認証を受けることを段階的に廃止しました。しかし、第2次トランプ政権は、この要件を復活させる可能性があり、また第1次トランプ政権末期に提案されたように、生体認証の要件を米国内外の非移民・移民ビザ申請者全員に拡大しようとする可能性もあります。
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- 追加審査やさらに厳しい審査になりそうな要因はありますか?
国務省および国土安全保障省は、特定の案件が新たに強化された審査手続きよりもさらに厳しい審査に値するかどうかを評価する際に、複数の要素を考慮する可能性が高いでしょう。要因としては、申請者の出生国、現在または過去の市民権および居住国、渡航歴、軍歴、所属団体、先端技術分野への関与、ソーシャルメディアの使用、国家安全保障または法執行機関のデータベースへの登録などが考えられます。 - 新しい強化された審査と審査手続きはいつ開始される予定ですか?
新しい審査措置の全容が確立され、実施されるまでには時間がかかるかもしれませんが、ビザやその他の移民給付を申請する外国人は、ほぼ直ちに、より集中的な審査が行われると想定すべきでしょう。 - この新しい措置の影響は?
新たに強化された審査・吟味手続きの結果、雇用主や外国人は、場合によっては従来よりも多くの情報および/または書類を提供する必要があるかもしれません。また、外国人が面接を受けたり、厳しい尋問を受けたりする可能性も高くなります。
さらに、ビザ申請、雇用主がスポンサーとなる請願書、在留資格の延長・変更申請、永住権申請、帰化申請、その他の移民給付金申請において、新たな審査の厳格化により、審査時間が増加する可能性があります。特に、ビザ申請や永住権申請においては、より厳格な審査が行われるため、セキュリティー・クリアランスによる遅延が増加することが予想されます。
また、審査が厳しくなることで、証拠の提出を求められる割合が増える可能性があり、場合によっては、犯罪や安全保障に関連する、あるいはその他の重大な問題を抱えた個人の入国が拒否される可能性があり、最も深刻なケースでは、拘留や国外退去を余儀なくされる可能性もあります。
- 雇用主や外国人は、このような新たな審査・審査強化に備えるために何ができるでしょうか?
審査・入国審査が強化されたこの新しい環境に備え、あるいは適応するために、次のような対応策が考えられます:
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- 現在の手続きや審査の傾向や動向を監視し関係者に知らせておくことで、適切な期待値を設定し、計画を立てやすくする;
- 審査の強化による手続きの遅延の影響を軽減するために、請願書や申請書を提出、そしてビザ申請面接の予約を通常より前もって行う;
- 市民資格、家族、旅行、居住、教育、雇用、移民記録など、米国移民当局から要求される可能性のある重要な情報を含む必要な記録や書類を維持するよう注意する;
- 審査の強化を招きそうな要素を含む案件は、移民法弁護士に相談すること;
- ビザやその他の移民給付申請書を提出する前に、正確を期すた め、記入または見直しに注意する;
- 面接に先立ち、審査される申請書を注意深く確認し、必要に応じて移民弁護士と相談し、面接に十分な準備ができるようにする;
- グリーンカード申請(Adjustment of Status申請)に伴う移民局(USCIS)での面接において、弁護士を代理人として立てることを検討する;
- 外国人が米国でのコンプライアンス責任を認識し、遵守できるようにする。
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- 米国政府は米国への新たな入国禁止措置をとりましたか?
2 米国連邦地裁、「出生地主義の市民権」に関する大統領令発効の一時差し止め
概要
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- ワシントン州連邦地方裁判所は、トランプ大統領が2025年1月20日に署名した出生地主義の市民権に関する大統領令の発効を一時停止する、14日間の緊急一時差し止めを命じた。
- この大統領令は、2025年2月19日以降に米国で生まれた特定の子供に対して市民権を認めないというものである。
- 一時差し止め命令は、この大統領令の合法性を争う訴訟が続く間、一時的に発効を阻止するものである。
- この大統領令に対し、他の司法管轄区でも複数の訴訟が提起されている。
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争点
ワシントン州西地区裁判所は、トランプ大統領が2025年1月20日に署名した出生地主義の市民権に関する大統領令の発効を一時停止する、14日間の緊急一時差し止めを命じた。一般的に、この大統領令は2025年2月19日以降に米国で生まれた子供で、少なくとも片親が米国市民または米国永住権保持者でなければ市民権を認めないというものである。これには、不法入国者の親から生まれた子供だけでなく、B-1/B-2(ビザ免除を含む)、F-1、J-1、H-1B、L-1、E、O-1、P、TNなどの非移民ステータスの親とあらゆる扶養家族としての非移民ステータスの親から生まれた子供も含まれる。
一時差し止め命令の目的は、連邦地裁がその根本的な合法性を検討する間、この大統領令の発効を一時的に阻止するものである。一時差し止め命令が発令されている間、米国政府はこの大統領令の施行・発効を全面的に禁止される。トランプ政権はこの差し止め命令を高等裁判所に上訴する可能性がある。この訴訟は、State of Washington et. al. vs. Donald Trump et. al.であり、ケース番号は2:25-cv-00127-JCC(ワシントン州西地区)である。
出生地主義の市民権に関する大統領令の合法性を争う訴訟は、ニューハンプシャー州とマサチューセッツ州の連邦地裁で起こされた訴訟を含め、他にもいくつか起こされている。
大統領令の背景
問題となっている大統領令は、2025年2月19日以降に米国で生まれた特定のグループの子供の出生地主義の市民権を制限しようとするものである。2月19日以降に生まれた下記のグループの子供が対象である:
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- 出生時点で母親が米国に不法滞在しており、父親が米国市民または米国永住権保持者ではない子供
- 出生時点で母親が合法的だが一時的に米国に滞在しており、父親が米国市民または米国永住権保持者ではない子供。合法的かつ一時的なステータスには、B-1/B-2(ビザ免除を含む)、F-1、J-1、H-1B、L-1、E、O-1、P、TN、およびあらゆる扶養家族としての非移民ステータスが含まれる。大統領令には、いかなる一時的な移民ステータスにも例外はなく、グリーンカード手続き中の外国籍の親にも例外はない。
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大統領令の目的上、誰が母親または父親とみなされるかを定義するにあたり、トランプ大統領は「母親」とは直系の女性の生物学的先祖を意味し、「父親」とは直系の男性の生物学的先祖を意味するとしている。従って、この大統領令では、養子縁組をした子供の親や、法的には親であるが生物学的な親ではない親は、「母親」や「父親」とはみなされない。
出生地主義の市民権に関する大統領令の対象と影響
この大統領令は、2025年2月19日以降に生まれた子供にのみ適用されることが明記されている。この大統領令の発効が許可されれば、2月19日以前に米国で生まれた子供は、その日以降も米国市民とみなされる。2月19日時点で米国市民である者は、この大統領令によって市民権を失ったり剥奪されたりすることはない。
また、この大統領令の発効が認められた場合、連邦政府機関は2月19日以降、影響を受ける子供の米国市民権を認める書類の発行を停止し、州、地方自治体、またはその他の当局が発行した米国市民権を認める書類の受理を拒否するよう命じられる。家族は、米国当局から子供の米国パスポートの発行を拒否されたり、米国市民の社会保障番号の発行を拒否されたりする可能性がある。
さらに、大統領令では、2月19日以降に不法滞在の両親から生まれた子供は米国移民資格を持たないため、これらの子供は強制送還の対象となる。H-1B、L-1、TN、O-1、P、またはその他の合法的かつ一時的ステータスを持つ親から生まれた子供の場合、大統領令には明記されていないが、その家族はおそらく移民局への申請を通じて子供の扶養家族としての非移民ステータス(H-4、L-2、TDなど)を証明する書類を入手する必要がある。
この大統領令は現行の市民憲法をどのように変えるのか
出生地主義の市民権の根底にある法的根拠は、アメリカ合衆国憲法修正第14条第1項と、1898年の連邦最高裁判例、United States v. Wong Kim Ark、169 U.S. 649 (1898)におけるその解釈にある。関連する憲法修正第14条の文言は以下の通りである: 「米国に出生または帰化し、その管轄下にあるすべての者は、米国およびその居住する州の市民である」。
125年以上にわたり、米国は、憲法修正第14条およびウォン・キム・アークにおけるその解釈に基づき、両親の米国における地位に関係なく、米国内での出生のみに基づいて米国市民権が付与される、出生地主義の法原則の下で運営されてきた。この原則の唯一の重要な例外は、米国で外国の外交官に生まれた子供、という限定された状況である。これらの子供は、外交官の親と同様、外交官としての地位により米国法の特権と免除が与えられているため、米国の司法権の対象にはならない。法律違反は、米国の法制度ではなく、外交的に処理されるのが一般的である。外交官の子供は親と同じ外交特権を受けるため、憲法修正第14条の出生地主義条項が要求する米国の「管轄権に服する」ことはなく、従って米国で出生しても米国市民権を取得することはない。
トランプ大統領の大統領令は、憲法修正第14条の 「その管轄権に服する」という条項を、米国で生まれた子供の中でもより狭いグループを包含すると解釈している。この大統領令は、外交官の子供だけでなく、不法滞在の母親から生まれた子供や、合法的だが一時的ステータスを持つ母親から生まれた子供も米国の司法権の対象ではないという立場をとっている。これは、米国憲法や米国市民権法の専門家の間では一般的な見解ではない。
これは雇用主と外国正規の従業員にとって何を意味するのか
出生地主義に関する大統領令は、裁判所命令により少なくとも2025年2月6日まで一時差し止められている。連邦地裁では他にもいくつかの訴訟が提起されており、別の差し止め命令や制限的な裁判所命令が出される可能性もある。しかし、訴訟の結果を予測することは出来ない。もし2月19日以降に出生地主義の市民権に関する大統領令が発効した場合、自分の子供がその影響を受ける可能性があると考える外国人は、資格のある移民弁護士に相談すべきである。