2025年8月 アメリカ移民法ダイジェスト
September 2, 2025
アメリカ政府が8月に発表した移民施策に関する方針をまとめたダイジェストをお送りします。今月のトピックスは、以下のとおりです。
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- 国土安全保障省が、F、J、Iビザの非移民に対し在留資格期間中の滞在許可を固定期間滞在に置き換える規則を提案し、またビザ申請において移民局が過去の審査結果を尊重して審査する方針を廃止することを提案
- 国土安全保障省が、9月30日よりESTA・EVUS・陸路国境におけるForm I-94発行の新規手数料導入を発表
- 国土安全保障省によるH-1Bビザ枠選考プロセスの変更案が、行政管理予算局(OMB)に審査のため送付されました
- 米国移民局は、特定のビザ申請の審査において、外国籍者が反米と見なされる思想や組織を支持しているかどうかを考慮する方針を明らかに
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米国上院が、7月に新しい米国移民局長官(Joseph B. Edlow氏)を承認しました。今回のダイジェストで取り上げているF、J、Iビザ保持者のI-94に記載する滞在期間の変更や、発給枠対象のH-1Bビザ申請希望者の抽選方法の変更規則の提案は、長年トランプ政権が提唱してきた変更案のほんの一部であり、新しい長官の下で今後国土安全保障省と移民局が新しい規則案や既存規則の変更案の発表を増やすことが予想されています。今度の動向に、注意してください。
1 国土安全保障省(DHS)は、F、J、Iビザの非移民に対して、在留資格期間中の滞在許可を固定期間滞在に置き換える規則を提案し、またビザ申請において移民局が過去の審査結果を尊重して審査する方針を廃止することを提案しています
概要
- 国土安全保障省は、留学生、交換訪問者、外国メディア代表者に対し、Form I-94に記載する滞在期間を固定化する規制を提案しています。これにより、これらの個人を在留資格の有効期間中の滞在を許すという長年の政策が廃止されることになります
- 提案通り規則が確定した場合、F、J、Iビザの非移民は、I-94に記載された特定の入国許可期間を超えて活動を継続するには滞在延長を申請し、生体認証情報の採取を受ける必要があります
- F、J、Iビザ保持者が定められた滞在期間を超えて滞在した場合、他の非移民ビザ保持者に適用されている不法滞在規則の対象となります
- 本規則案はまた、非移民審査の大半において、米国移民局(USCIS)が過去の承認判断をその後の申請においても尊重することを義務付ける現行規制の廃止も目指しています。
問題点:
国土安全保障省(DHS)は、留学生(Fステータス)、交換訪問者(Jステータス)、外国報道機関代表者(Iステータス)およびその扶養家族に対する現行の「在留期間―Duration of Status」(D/S)政策を改め、滞在期間に期限を設ける政策に置き換える規制案の事前公開版を発表し、8月28日に連邦官報に掲載しました。DHSは掲載から30日間、本案に対する一般からの意見を受け付けます。
本案が最終決定された場合、F、J、Iビザ保持者は特定の滞在期間で米国に入国することとなり、他の非移民ビザ保持者と同様に、就学・研究・研修プログラム、就労、アサインメントの完了に追加期間が必要な場合には滞在延長を申請することが義務付けられます。
提案された規則は、米国に180日以上または1年以上不法滞在した外国人に対して適用される3年および10年の入国禁止措置の目的上、F、J、Iの非移民ビザ保持者が「不法滞在期間」をいつ、どのように開始するかに関する現行政策の変更をもたらすことになります。現行では、F、J、Iビザ保持者は、USCIS(米国移民局)または移民裁判官が当該個人の非移民ビザ違反を正式に認定した場合にのみ、不法滞在期間の算定が開始されます。提案規則では、他の非移民ビザカテゴリーと同様に、F、J、Iビザ保持者は原則として、I-94の記載された入国許可期間が満了した時点で不法滞在期間の算定が開始されることになります。
DHSは2020年9月、トランプ政権第1期の終盤に同様の規則案を発表しました。その後、バイデン政権移行チームが2021年7月にこの提案を撤回しましたが、トランプ政権第2期は現在、これまで提案されたことのない追加条項を加えてこの施策の復活を図っています。
F、J、Iビザの在留資格について詳しく見る:
ほとんどの非移民は特定の期限まで米国に滞在が許可されますが、F、J、Iビザの非移民はそのビザ区分における在留資格の有効期間中、長期間にわたり滞在が認められてきました。現行規則では、F-1ビザの「在留資格有効期間―Duration of Status」(D/S)とは、当該個人が学術プログラムを修了し、修了後に任意の実習訓練(Optional Practical Training ‐OPT)を完了するまでの期間と、更に60日間の猶予期間を加えたものです。J-1ビザの場合、「在留資格有効期間」とは、交換訪問者がJ-1プログラムを完了するまでの期間に、30日間の猶予期間を加えたものです。また、I非移民の場合、「在留資格有効期間」は一般的に、外国メディア代表者の米国における任務/雇用の期間を指します。
現行規則では、在留資格有効期間で入国した非移民は、就学・研究・研修などのプログラムや雇用が当初の予定より長期化した場合でも、USCISへの在留延長申請は不要です。FビザおよびJビザの場合、スポンサーとなる教育機関または交換プログラムは、プログラム終了日を遅くした修正版I-20またはDS-2019を発行するだけで、学生または交換訪問者の米国滞在を延長できます。また、Iビザの外国メディア代表者は、適格な雇用関係が継続する限り、米国に滞在し続けることが可能です。
提案されている規則は、F、J、Iビザの非移民に対して在留資格の有効期間中を認めるという長年の慣行を終了させ、これらの分類を他の非移民ビザと整合させるものです。具体的には、これらに定められた在留期間を適用し、定められた期間を超えて米国に滞在を希望する場合、在留資格の延長を米国移民局(USCIS)に申請することを義務付けます。
新規入国許可期間
提案される新たなF、J、Iビザの入国許可期間は以下の通りです:
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- F-1ビザ保持者とその扶養家族:
- ほとんどのF-1ビザ保持者とその扶養家族は、F-1ビザ保持者のプログラム期間(修了後の実務訓練期間を含む)を上限として入国が許可されます。ただし、最長4年を超えず、さらに30日間の猶予期間(現行の60日間から短縮)が付与されます。また、以下の外国人についてはより短い在留期間が適用されます:
- 英語研修プログラム受講者は最大24ヶ月の在留期間に加え、30日間の猶予期間が適用されます。
- 公立高校に在籍する外国人は、学校休業期間および年次休暇を含め、最大12ヶ月以内の累積在留期間が適用されます。
- 既に固定期間の在留が認められている国境通学学生については、在留期間の長さを規定する現行規則が引き続き適用されます。
- J-1ビザ保持者とその扶養家族:J-1ビザ保持者とその扶養家族は、保持者のプログラム期間(最長4年)に加え、30日間の猶予期間まで滞在が認められる。
- Iビザ保持者とその扶養家族:Iビザ保持者とその扶養家族は、Iビザ保持者が任務を完了するために必要な期間、ただし240日を超えない範囲で入国が許可されます。ただし、中華人民共和国(香港特別行政区およびマカオ特別行政区を除く)発行のパスポートを所持する場合は、滞在期間は90日を超えないものとします。
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F-1及びJ-1ビザ保持者は、プログラム開始日の30日前まで米国への入国が可能であり、プログラム終了後の30日間の猶予期間は外国人入国記録書(I-94)に記載されます。いずれの30日間も、4年間の最大入国期間には加算されません。
滞在延長の必要性
F、J、またはIビザの非移民ビザ保持者が就学・研究・研修などのプログラム修了、実務訓練、または就労に追加期間を必要とする場合、USCISに滞在延長を申請し、生体認証情報の提出を完了する必要があります。承認された延長期間に関する規則は、初回入国期間に関する上記の規則と同様となります。
提案規則によれば、F-1ステータスの延長が承認されるためには、外国人申請者は以下のいずれかを提示する必要があります:・プログラム修了に追加時間が必要であることを示す、現在発行済みのI-20フォーム・以下の事情を示す書類: - 重大な学業上の理由(例:専攻・研究テーマの変更、予期せぬ研究上の問題など) 疾病、または本人では制御不能な状況(例:自然災害、国家的な疾病上の危機、教育機関の閉鎖)を証明する書類を提出する必要があります。
F、J、またはI非移民が、在留資格の有効期限前に出国、または在留資格の変更・延長を申請しなかった場合、他の非移民と同様に、許可された入国期間の満了時に不法滞在期間が加算され始めます。
本規則案には、規則発効日以前に在留期間中(D/S)の許可を得て入国した外国人の扱いを定める複雑な移行規定が含まれています。
F、J、Iビザプログラムへのその他の変更
F、J、I非移民ビザに対する有限の在留期間設定に加え、本提案ではこれらのプログラムに対し以下の追加変更を求めます:
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- F-1ビザの猶予期間の短縮:現行の60日間猶予期間を30日間に短縮する。この猶予期間(Grace Period)は、学生が初期プログラムまたは実務訓練修了後に米国出国準備、在留資格延長申請、または資格変更申請を行うために設けられています。
- F-1ビザ保持者のプログラム・専攻変更に関する制限:提案された規則では、F-1ビザの学部生は、プログラム開始後1年以内にプログラム・専攻・教育レベルの変更をすることが禁止されます。ただし、移民・税関執行局(Immigration and Custom Enforcement – ICE)の学生・交換訪問者プログラム(SEVP)が特別な事情(例:学校の閉鎖、自然災害による長期の授業中断)を理由に例外を認める場合はこの限りではありません。F-1大学院生は、プログラム・専攻・教育レベルの変更が完全に禁止されます。さらに、外国籍学生が特定のレベルのプログラムを修了した場合、同レベルまたはそれ以下のレベルのプログラムを履修するためのF-1ビザ資格は認められません。(提案規則では、これらの制限の実施にはSEVISシステムの変更が必要であり、規則発効時に技術的その他の理由で実施が不可能な場合、DHSはSEVPウェブサイトでの告知を通じて制限の延期または停止を認める旨が明記されています。)
- 在留期間延長申請中の海外渡航: F、J、Iビザ保持者が延長申請中に海外渡航をする場合、入国地で提示する書類の種類に応じて、前回の入国許可期間の残存期間、または延長申請で請求した延長期間のいずれかで再入国が許可されます。前者の場合、海外旅行による延長申請の放棄とはみなされませんが、後者の場合は延長申請は不要となったため放棄されたとみなされます。
- 在留資格変更申請中の海外渡航:本規則案は、申請中の外国人が米国外へ渡航した場合、在留資格変更申請は放棄されたものとみなすという国土安全保障省(DHS)の長年の政策を明文化しています。
- Iビザの範囲を定義:外国メディアに関しては、提案規則は外国メディア組織の定義を本拠地が外国にあり、ジャーナリズム情報の定期的な収集・制作・発信に従事していること、と明確化します。提案規則の解説では、芸能活動(例:リアリティ番組への出演)は一般的にIビザの対象外となる旨が記されています。
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裁量尊重方針の廃止案:
提案規則は、前文に説明を付さず、在留期間延長やその他のフォームI-129を伴う申請を移民局が審査する際、同一当事者・同一事実に基づく過去のフォームI-129を伴う申請への承認事例を尊重するよう移民局審査官に指示する現行の国土安全保障省(DHS)規則の廃止を図っています。この尊重方針は、本年1月に発効したH-1B近代化規則の一環として追加されたもので、トランプ政権初期に一時停止されていた長年の政策を法典化したものです。
この改正案の意味とは:
提案通り最終決定された場合、この規制は影響を受ける外国人およびその学校、交換プログラムのスポンサー、雇用主に新たな重大なコンプライアンスおよび管理上の責任を課すことになります。
さらに、この規制により米国移民局(USCIS)に提出される非移民ステータス延長申請件数が大幅に増加し、既存のUSCIS処理遅延を悪化させることになるでしょう。
そして、現行の裁量尊重ルールの廃止案は、審査における不確実性を高め、トランプ政権初期と同様に、延長申請に対する証拠提出要請率や却下率の大幅な上昇を招く可能性があります。
提案規則の今後の流れ
本規則は8月28日に連邦官報に掲載された後、30日間の一般からの意見を求めるパブリックコメント期間を設けます。その後、国土安全保障省(DHS)は寄せられた意見を精査し、連邦官報への掲載に向けた最終規則を策定します。提案規則の一部は、パブリックコメントを踏まえ、審査・最終化プロセスにおいて修正される可能性があります。最終規則の公表時期は未定ですが、通常このプロセスには数か月を要します。
学術界および産業界からの意見は、本規則が学校・企業・米国の人材市場における競争力に与える影響を当局に認識させる上で重要です。御社が本規則案への意見提出をご希望の場合は、担当のフラゴメン事務所の弁護士または当事務所の政府戦略・コンプライアンスグループまでご連絡ください。
2 国土安全保障省(DHS)、9月30日よりESTA・EVUS・陸路国境におけるForm I-94発行の新規手数料導入を発表
概要
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- 9月30日より、国土安全保障省(DHS)は、7月に議会で可決されたH.R.1予算調整法案により承認された新たな米国税関・国境警備局(CBP)手数料を実施します
- ビザ免除プログラムに基づくB-1/B-2渡航のESTA申請手数料は、21ドルから40ドルに引き上げられます
- 中国籍B-1/B-2ビザ保持者向けオンライン渡航認証システム「EVUS」申請者には、新たに30ドルの手数料が課されます
- 陸路国境におけるI-94フォームの既存手数料6ドルに24ドルが加算され、合計30ドルとなります
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問題点
連邦官報(Federal Register、以下FR)の通知によると、米国税関・国境警備局(CBP)は9月30日より、7月上旬に議会で可決された予算調整法案(H.R.1)により決まった新たな手数料の徴収を開始します。本通知は、以下の申請およびプログラムに対する新手数料を実施するものです:
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- 電子渡航認証システム(Electronic System for Travel Authorization - ESTA)申請:ESTA手数料は現行の21ドルから40ドルに引き上げられます。ESTA認証は、ビザ免除プログラムに基づくB-1(ビジネス)またはB-2(観光)目的の米国訪問者に必要です。
- 電子ビザ更新システム(Electronic Visa Updated System - EVUS)認可:EVUS認可に30ドルの新規手数料が徴収されます。現在EVUSは無料です。EVUSは、米国渡航を希望する中国籍B-1および/またはB-2ビザ保持者向けのオンライン事前認可システムです。
- 陸路国境におけるI-94申請書:陸路国境でのI-94申請書の新たな総手数料は30ドルとなります(現行の6ドルに加え、追加のH.R.1手数料24ドル)。陸路国境から入国する外国人は引き続きI-94フォームの申請が必要ですが、空路または海路で入国する外国人にはI-94手数料はかかりません。
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これらは2025年9月30日に終了する2025会計年度のCBP H.R.1手数料です。H.R.1法は、インフレ指数に基づくこれらの手数料の年次調整を認めていますので、今後申請料が毎年度変わっていく可能性があります。
次なる展開:
CBPは9月30日より、新たなESTA、EVUS、および陸路国境におけるI-94申請料の徴収を開始します。
H.R.1に基づくUSCIS手数料導入に関する事前発表において、国土安全保障省は、非移民ビザ発給のための米国領事館で適用される「ビザ完全性手数料」や、旅行書類・仮放免書類・出入国記録申請書(I-131)関連手数料を含む、残りのH.R.1手数料の導入に向けて作業を進めていることを認めていますので、他の申請に関しても申請手数料が変更される可能性が高いでしょう。
3 国土安全保障省(DHS)によるH-1Bビザ枠選考プロセスの変更案が、行政管理予算局(OMB)に審査のため送付されました
概要
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- 国土安全保障省が提案した、H-1Bビザの年間上限枠対象案件に特定の申請希望者に重きを置く選考プロセスを適用する規則案が、連邦規則制定プロセスの第一段階である行政管理予算局(OMB)に審査のため提出されました
- 提案規則の正確な内容は現時点で不明ですが、提示賃金水準などの要素を用いて、年間H-1B枠内で割当番号を割り当てる雇用主と受益者を決定する仕組みを導入する可能性があります。これにより、現行の年間H-1B抽選制度が置き換えられる見込みです
- 草案が連邦審査を通過すると、連邦官報に掲載され一般からの意見募集が行われます。OMBの規則制定プロセスは通常数か月を要し、この規則はOMBの全ての過程が終了するまで発効しません
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問題点
国土安全保障省(DHS)は、年間H-1Bビザ枠に特定の申請希望者に重きを置いて抽選選考を行う方法を適用する規則案について、連邦政府による審査を求めています。連邦官報への掲載までは詳細は非公開ですが、この規則案は賃金や教育水準などの特定基準を満たす登録者を選考プロセスで優先させることで、年間H-1Bビザ枠の抽選制度を補完または置き換えることを目指す可能性があります。
上限枠選定プロセスの変更が試みられるのは今回が初めてではありません。トランプ政権第1期の最終週に、DHSはコンピュータによるH-1B抽選をほぼ置き換える規制を最終決定していました。これは労働省の4段階の一般賃金体系に基づきH-1Bビザの数を配分するシステムです。この規則では、まず現行賃金制度の最高賃金区分であるレベルIV以上の賃金が提示された登録者にH-1B枠を割り当て、その後賃金レベルIII、II、Iの順に減少する形で登録者を選抜する予定でした。そして、特定の賃金レベルにおける登録者数がH-1B枠数を上回った場合にのみ、コンピューター抽選が使用される仕組みでした。この最終規則はバイデン政権発足直後に延期され、実施されることなく連邦裁判所によって最終的に無効化されています。
提案の今後の流れ:
連邦規則制定プロセスは通常、数か月以上を要します。国土安全保障省(DHS)のH-1Bビザ割当提案は現在、行政管理予算局(OMB)により審査中です。OMBは90日以内に規制を審査する義務がありますが、実際にはそれより短くも長くもなる可能性があります。提案がOMBの審査を通過すると、連邦官報に掲載され、通常60日間続く一般からの意見募集期間が設けられます。DHSは公衆の意見に対して実質的な審査を行う義務がありますが、この段階の審査期間に最低・最長制限はありません。規則案の文言が確定した後、施行日を明記した形で連邦官報に掲載されます。施行日は通常、掲載日から30日または60日後となります。
ビジネス界からの意見は、この規則が米国での人材獲得競争に与える影響を行政に認識させる上で重要です。御社が規則案公表後に意見を提出される場合は、担当のフラゴメン事務所の弁護士または当事務所の政府戦略・コンプライアンスグループまでご連絡ください。
4 米国移民局(USCIS)は、特定のビザ申請の審査において、外国籍者が反米と見なされる思想や組織を支持しているかどうかを考慮する方針を明らかに
概要
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- 米国移民局(USCIS)は、特定のビザ申請の審査において、外国籍の受益者が反米と見なされる思想や組織を支持・推進しているか否かを、同局が発表したその他の新たな要素とともに考慮します
- USCISはまた、外国人受益者による、または外国人受益者に関連するソーシャルメディア上の活動をより広範に審査します
- この方針は、非移民ビザの延長・変更申請、就労許可証(EAD)申請、永住権への在留資格変更申請など、様々な移民関連申請に適用されます
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政策マニュアル改訂:
米国移民局(USCIS)の審査官は、同局の政策マニュアルを改訂した最新ガイダンスに基づき、特定のビザ申請・請願を審査する際、外国籍者が「反米」思想や組織を支持しているか否か、およびその他多様な新たな要素を考慮することになります。この新しいガイドラインは、同局が米国市民権申請者に対するより詳細な審査を発表したのと同時期に導入されました。
拡大された考慮要素リストには、外国人が「反米的見解、あるいはテロ組織・団体の見解を支持、推進、支援、またはその他の形で擁護したか」が含まれます。これには「反米思想・活動、反ユダヤ主義テロ、反ユダヤ主義テロ組織、反ユダヤ主義思想を支持・推進する組織」も対象になります。改訂された指針では、これには「当該組織・団体の目的達成のために、いかなる人物に対しても身体的嫌がらせを行った」外国人も含まれると追加されています。
このような活動に従事することは、裁量による審査において審査官が肯定的・否定的な要素を評価する際の「圧倒的に否定的な要素」として扱われます。USCISは、このグループに該当する可能性のある個人を特定するにあたり、外国人による、または外国人に関連するソーシャルメディア投稿を考慮します。関連するプレスリリースで同局は、ソーシャルメディア審査の対象となるビザ申請の種類を拡大したことを明記し、反米的な性質を持つ活動がその拡大審査の焦点の一つとなることを示しました。
更新されたガイダンスでは、「反米」の定義は示されていません。組織・見解・活動・思想が反米的とみなされるか否かの判断にあたり、USCISは世界共産主義・全体主義・無政府主義思想の提唱、米国政府転覆、破壊活動、米国政府職員への暴行・殺害、不法な財産破壊に関与する個人・組織に対する帰化禁止の長年の法定基準を参照します。ただし、審査官が裁量権を広く行使し、その他の種類の活動やイデオロギーに対米反逆的と判断する場合もあり得るでしょう。
さらに、このガイダンスでは、審査官は外国人が米国への入国許可または仮釈放申請に関連して法律に違反したかどうかも考慮し得ると述べています。これには、米国スポンサーによる経済的支援の証明を必要とする人道的な仮釈放プログラムで入国した個人で、その経済的支援書類に虚偽または詐欺的な情報が含まれていた場合も含まれると示されています。
これらの追加的新要素は、外国人の行動、家族関係、雇用・移民歴、犯罪歴、公共の安全・国家安全保障・人道的懸念など、USCIS審査官が裁量的審査において従来から考慮してきた多数の要素に加えられるものです。裁量判断を伴う移民案件において、USCIS審査官は通常、法的適格基準を満たし、肯定的裁量要素が否定的要素を上回る場合に案件を承認する。
影響を受けるケース
USCIS審査官は、以下の様々な案件において、これらの新たな追加要素を考慮します:
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- 在留資格延長または変更申請;
- グリーンカードへの在留資格変更申請(Adjustment of Status申請);
- F-1在留資格回復申請;及び
- 就労許可証(EAD)申請の大半(H-4 EAD、F-1 OPTおよびSTEM OPT EAD、在留資格変更に伴うEADを含む)
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これらの案件では、審査に裁量権の行使が伴うため、新たな追加要素の考慮が可能となります。一方、H-1BやL-1ビザ申請、EB-1・EB-2・EB-3の移民ビザ申請などの雇用ベースのビザ申請は、一般的に裁量権の行使を伴わず、申請が承認の法的基準を満たしていることのみが要求されます。したがって、これらの申請は新たなガイダンスの影響を通常受けません。
ただし、更新されたガイダンスでは、EB-2国家利益免除(National Interest Waiver - NIW)およびEB-5移民投資家申請には一定の裁量が伴うことが明記されています。具体的には、USCISはNIW申請において労働認定要件の免除が国益にかなうか否かを判断する裁量権を行使し、EB-5案件では承認が公共の安全または国家安全保障上の理由から国益に反するか、あるいは申請に詐欺、欺瞞、虚偽表示、または犯罪的悪用が関与しているか否かを裁量により判断しなければなりません。改訂ガイドラインは審査官がNIW・EB-5申請審査において新たな裁量要素を考慮できると明記していないものの、これらの案件における判断に裁量行使が伴うことを認めたことで、当該案件においても追加的な裁量要素の検討が促される可能性があります。
今後の見通し:
新たな政策マニュアルガイダンスの影響は、USCISが厳格審査対象案件の決定を開始するまでわかりません。雇用主及び外国人受益者は、ソーシャルメディア利用その他の活動に関する詳細な証拠提出要求の可能性、案件決定までの審査期間の長期化、却下率の上昇に備える必要があります。