2025年10月 アメリカ移民法ダイジェスト
November 4, 2025
10月に政府から発表されたビザ関連施策の内、多くの日系企業とその社員の方々へも影響が予想される内容についてまとめたダイジェストをお送りします。
発表当初はその内容の曖昧さから大きな混乱を引き起こしたH-1Bビザ申請者に対する10万ドルの追加費用徴収に関し、政府の方針が概ね明らかになりました。当初は、対象者の範囲も不明確でしたが、政府からの指針を読む限り対象者が限定されるようです。また、特定の就労許可(EAD)保持者へ認めていた就労許可の効力の自動延長期間を突然廃止したり、ビザ申請書類に署名する者に対し指紋採取などの生体情報採取を義務付ける規則案も発表されています。個人情報保護の観点からも大きな議論を呼ぶ可能性があるこの提案は、今後の動向が注目されます。ダイジェストの内容は、次の通りです。
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- USCISが新たなH-1Bビザ申請手数料に関するガイドラインを発表
- 新しいH-1B手数料について、雇用者及び外国人社員が知っておくべきこと
- USCISは、10月30日以降に提出された多くの就労許可更新申請に対する効力の自動延長を終了へ
- 国土安全保障省、生体認証情報の収集と利用の大幅拡大を提案
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1. USCISが新たなH-1Bビザ申請手数料に関するガイドラインを発表
概要
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- トランプ大統領が9月19日に発令したH-1Bに関する大統領令について、移民局(USCIS)が発表した新たなガイダンスによれば、滞在期間の延長、滞在資格の修正、または滞在資格変更(雇用主変更申請を含む)が承認されたH-1B申請は、本大統領令および関連する10万ドルの手数料の対象とはなりません。
- 米国に滞在中の外国人で、H-1B申請が承認済みの場合、米国を出国しても大統領令及び関連手数料の対象外です。
- 大統領令発効日以降に提出されるH-1B申請で領事館通知を希望した申請に関しては、申請時にその者が米国内に滞在していたか否かにかかわらず、10万ドルの手数料が適用されます。ただし、既存の有効なH-1Bビザを保持する特定の外国人は例外となる可能性があります。
- 国家利益例外の適格性に関するUSCISガイダンスは、当該職務に就ける米国人労働者が存在しないことを証明することを含む高い基準を導入しており、大統領令熨の際示唆されたのとは異なり、企業全体または業界全体を対象とする例外を認めていません。
- 大統領令に異議を唱える訴訟は継続中であり、原告側が暫定的な救済措置を求め、米国政府による大統領令及び関連ガイダンスの実施を一時的に差し止める可能性もあります。
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問題点
10月20日、移民局(USCIS)は、トランプ大統領が9月19日に発令した大統領令の実施に関する追加ガイダンスを発表しました。同令は、雇用主10万ドルの手数料を支払わない限り、H-1B専門職従業員の米国入国を禁止するものです。この大統領令は9月21日から発効しており、政府各局は事前に暫定的なガイダンスを発表していましたが、多くの疑問点が残されていました。今回USCISのウェブサイトで発表された新たなガイダンスは、それらの疑問のすべてではないものの、多くの点について回答を示してくれています。
大統領令の適用範囲
新たなUSCISガイダンスによれば、大統領令は9月21日以降に提出されたH-1B申請のうち、以下のいずれかに該当するH-1B申請者を対象とするものに限って適用されます:
- 米国国外に滞在し有効なビザを所持していない者、または
- H-1B申請の対象外国人が申請時米国内外にいたかを問わず、領事館通知対象として提出済みもしくは領事館通知としてのみ承認可能な申請の対象者
さらに本ガイダンスでは、延長・修正・在留資格変更を求める申請については、USCISが延長・修正・在留資格変更を却下し、かつ当該申請が領事通知として承認された場合を除き、本大統領令は適用されないことを明確化しています。雇用主変更申請についても、領事通知対象として提出または領事通知としてのみ承認可能な場合を除き、本大統領令の対象とはなりません。
詳細な分析
9月21日以降にUSCISに提出される各種H-1B申請書に対する新たなガイダンスの適用を分析し、未解決の主要な疑問点を下記に記載します:
領事館通知を請求するH-1B申請:新たなガイドラインでは、申請書に対する請求が米国領事館・入国港・事前搭乗検査への承認通知申請である場合(すなわち、在留資格変更・滞在延長・修正を請求しない場合)、申請書は10万ドルの手数料対象となると規定しました。
領事館通知を伴うH-1B申請は、申請時に申請の対象となる外国人が米国内にいるか国外にいるかを問わず、手数料の対象となります。ただし、これらの外国籍者のうち既に有効なH-1Bビザを保持している場合の領事館通知申請に手数料が適用されるかどうかは、現時点では不明です。
在留資格変更申請:在留資格変更が申請され、USCISにより承認された場合、当該H-1B申請には手数料は適用されません。ただし、申請審査中に国外へ渡航した、または、在留資格違反が認められたため在留資格変更申請が却下され、領事館通知のみが承認可能な場合、USCISは10万ドルの手数料支払いなしに当該H-1B申請を承認しません(有効なH-1Bビザ保持者は例外となる可能性があります)。
このガイダンスは、2026年春/夏に提出される2027年度H-1B枠対象申請に特に関連してきます。H-1B枠対象申請にあたり、在留資格変更申請を併せて提出し、その在留資格変更が承認された場合、10万ドルの手数料は適用されません。
滞在延長申請:滞在延長が申請されUSCISにより承認された場合、当該H-1B申請には手数料が適用されません。ただし、前述の在留資格変更申請と同様に、滞在延長が却下された場合、USCISは10万ドルの手数料なしではH-1B申請を承認しません(有効なH-1Bビザ保持者は例外となる可能性があります)。
申請内容修正:H-1Bステータスの修正申請がUSCISにより承認された場合、当該H-1B申請には手数料が適用されません。ただし、在留変更・延長と同様に、在留資格の修正申請が却下された場合、USCISは10万ドルの手数料なしではH-1B申請を承認しません(有効なH-1Bビザ保持者は例外となる可能性があります)。
雇用主変更申請:雇用主変更申請において滞在延長を請求し、その延長請求が承認された場合、10万ドルの手数料は適用されません。逆に、雇用主変更申請が領事通知申請として提出された場合、または領事通知のみで承認可能な場合、10万ドルの手数料が適用されます(有効なH-1Bビザ保持者は例外となる可能性があります)。
同一雇用主による雇用継続:同一雇用主による雇用継続を目的として提出される申請が10万ドルの手数料の対象となるか否かは、当該請願書が滞在延長申請と併せて提出されるか、領事通知申請と併せて提出されるかによって異なってくると思われます。
USCISがH-1Bビザの更新は大統領令の対象外とする従来のガイダンスを示していたにもかかわらず、 新たなガイダンスでは、領事通知として申請が行われた場合(または滞在延長申請が却下され、領事通知のみが承認可能な場合)、H-1B従業員の現雇用主による同一雇用継続申請であっても10万ドルの手数料が適用されることが示されています(有効なH-1Bビザ保持者は例外となる可能性があります)。
ただし、雇用主が滞在延長を申請し、その申請が承認された場合、当該申請は手数料の対象外となります。
申請承認後の米国国外渡航の影響:10万ドルの手数料を要さずに申請が承認された外国人がその後米国を出国した場合、その出国を理由に手数料の対象となることはありません。
却下された申請:10万ドルの料金を支払うために作成された新しいオンラインフォームによると、H-1B申請が却下された場合、料金は返金されます。
大統領令の適用範囲に関する未解決問題
新たなガイダンスは大統領令の適用に関する多くの疑問点に言及していますが、いくつかの重要な課題が未解決のまま残されています。既存の有効なH-1Bビザを保持する外国人が、大統領令の対象となる申請を行った場合、当該手数料の支払い義務が生じるかどうかは現時点で不明です。例えば、以前の雇用主から有効なH-1Bビザを保持し、新たな雇用主が提出した領事通知申請が承認された外国人に対して、大統領宣言及び関連手数料が適用されるかどうかは現時点では不明です。
新たなH-1B申請料の国家利益例外適用要件
USCISによれば、新たな申請料の国家利益例外は、雇用主が特定の外国人労働者に関して以下の厳格な基準を全て満たすことを証明できる「極めて稀な」状況に限り認められます:
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- 当該外国人のH-1B労働者としての米国滞在が国家利益に資すること;
- 当該職務を遂行できる米国人労働者が存在しないこと;
- 当該外国人が米国の安全保障または福祉に対する脅威とならないこと;
- 申請雇用主に対し当該外国人に代わって手数料を支払わせることが米国の利益を著しく損なうこと。
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当局は、国家利益例外の申請においてどのような証拠を期待しているかについて言及していません。現政権は他の状況で国家利益例外を認めてきましたが、それらの基準がH-1B手数料の例外にも適用されるかどうかはまだ不明です。さらに、雇用主がH-1B職を埋める米国人労働者が存在しないことを如何に証明するかも不明確です。H-1Bプロセスにおいて労働市場テストが実施されるのは、H-1B従業員比率が高い雇用主、またはH-1Bプログラム違反歴のある雇用主の場合に限られています。
大統領宣言では、特定の企業・業界および外国人個人に対して国家利益に基づく例外措置が適用されると示されていました。トランプ大統領自身も医師は手数料免除の対象となり得ると発言していました。しかし、USCISのガイドラインでは「特定の外国人」に対する例外を国土安全保障省(DHS)が承認することのみ言及されており、企業全体や業界全体の国家利益に基づく例外については言及されていません。雇用主がこうした例外をどのように申請できるのか、あるいは申請可能かどうかは依然として不明です。
10月20日付けのガイダンスによれば、申請者は大統領令の対象となる申請書を提出する前に、事前に国土安全保障省から国家利益例外の承認を得なければなりません。
10万ドルの手数料の支払い
新たなガイダンスでは、H-1B申請書をUSCISに提出する前に、米国財務省のpay.govポータルで10万ドルの手数料を支払う必要があると規定されています。H-1B申請書に、手数料支払いの証明、または国土安全保障省(DHS)が承認した国家利益例外の証拠を添付して提出しなければなりません。これらのいずれかを添付せずに申請書を提出した場合、追加情報要求(RFE)なしに申請が却下される見込みです。
唯一の例外は、延長・修正・在留資格変更申請のための申請書を提出したが、USCISが領事通知のための申請のみを承認できる場合であり、これにより手数料が発生する場合です。このような場合、USCISは延長・変更・修正の承認が不可能であることを請願者に通知する際に、手数料支払いの指示を請願者に発行するものと見られています。
係争中の訴訟
9月19日の大統領宣言に異議を唱える訴訟がこれまでに2件提起されていています。いずれも宣言の無効を宣言する確認判決と、その実施を差し止める恒久的差止命令を求めています。これらの訴訟の原告は現時点で宣言に対する仮差し止め命令や仮処分を請求していませんが、たな指針を受けて暫定的な救済措置の請求が行われる可能性があります。
フラゴメンは大統領令の実施状況及びこれに対する訴訟動向を注視しております。進展があり次第、最新情報をご提供いたします。
2. 新しいH-1B手数料について、雇用主および外国人労働者が知っておくべきこと
概要
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- 米国移民局(USCIS)の新たなガイダンスによると、9月19日の大統領令に基づき課される10万ドルの手数料は、H-1Bビザ受益者が米国外から入国してH-1Bステータスを取得または継続する必要がある場合に支払う必要があります。一方で、H-1Bの延長申請、ステータス変更申請、または修正申請については、この手数料の支払いは不要とされています。
- 移民局のガイダンスにより、この大統領令および手数料に関するいくつかの点が明確になりましたが、現在有効なH-1Bビザを保持する外国人に対して新たに提出されるH-1B申請がこの手数料の対象外となるかどうかという重要な点については、依然として不明確なままです。
- フラゴメンでは、この新しいH-1B手数料の影響に関して、よく寄せられる質問への回答をまとめています。
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問題点
今週初め、移民局は、トランプ大統領が9月19日に発出した大統領令の実施に関する追加ガイダンスを公表しました。同令は、雇用主がH-1B専門職従業員1名につき10万ドルの手数料を支払わない限り、当該従業員の米国入国を禁止するものです。大統領令は9月21日より発効しており、これまでに連邦移民当局から暫定的なガイダンスが発表されていましたが、多くの点で不明確な部分が残っていました。今回移民局のウェブサイト上で発表された新たなガイダンスは、多くの点に回答するものの、すべてを明確にしたわけではありません。
以下は、フラゴメンがまとめた、大統領令および新しいH-1B手数料に関する「よくある質問」への回答です。
手数料の対象となるH-1B申請
1. 大統領令はH-1B申請にどのような影響を与え、どのH-1B申請が大統領令および10万ドルの手数料の対象となりますか?
H-1Bに関する大統領令は、米国への入国を制限する措置であり、米国の利益に反すると判断される場合に、外国籍個人または特定のグループの入国を一時停止または制限する大統領の法的権限に基づいて発令されたものです。
この大統領令および移民局による関連ガイダンスによれば、もし外国人が、2025年9月20日以降に提出されたH-1B申請の受益者であり、H-1Bステータスを取得または継続するために一度国外に出て米国に再入国する必要がある場合、申請雇用主は例外が認められない限り10万ドルの手数料の対象となります。つまり、以下の場合に大統領令が適用されます:
- 受益者が米国外にいて、有効なビザを保持していない場合
- 申請が領事通知(consular notification)用に提出される場合(受益者が米国内にいるか海外にいるかは問いません)
- 移民局がH-1Bの延長、修正、またはステータス変更の申請を却下し、根拠となるH-1B申請を領事通知用としてのみ承認した場合
2. 領事通知(Consular Notification)申請とは何ですか?なぜ手数料の対象となるのですか?
雇用主が外国人をH-1B非移民として指定するためにフォームI-129を提出する際、申請が承認された後に移民局にどのような対応を求めるかを選択する必要があります。雇用主が領事通知を選択するのは、移民局が受益者のH-1B非移民としての認定承認を米国領事館に通知し、受益者がその承認を用いて領事館でH-1Bビザを申請できるようにしたい場合です。
領事通知申請は、受益者の現行ステータスに直接影響を与えるものではありません。受益者はH-1Bステータスを取得するために、(ビザ免除でない限り)有効なH-1Bビザを持って米国に入国するという追加の手続きを行う必要があります。領事通知申請は、H-1Bステータスを実現するために米国への入国を伴うため、大統領令によるH-1B入国制限の対象となります。領事通知申請は、現在H-1Bステータスにある外国人に対しても提出可能ですが、その場合でも新たに承認された申請に基づいてH-1Bとして就労を開始するには、(ビザ免除でない限り)米国を出国し、H-1Bビザで再入国する必要があります。
一方、外国人が米国内に滞在しており、適法なステータスを維持している場合、雇用主はH-1B申請の提出時に、延長、ステータス変更、または修正を移民局に請願することができます。これらのオプションは、受益者の現行ステータスに直接影響を与える手続きであり、H-1Bステータスを取得または継続するために米国を出入国する必要はありません。これらのオプションおよび申請雇用主が10万ドルの手数料を支払う可能性への影響については、以下で詳しく説明します。
3. H-1Bステータス変更申請は、大統領令および手数料の対象となりますか?
原則として、対象にはなりません。ステータス変更が移民局に申請され承認された場合、そのH-1B申請には10万ドルの手数料は適用されません。ただし、ステータス変更の申請が却下された場合(例:外国人がステータス違反と判断された場合や、申請中に出国したためステータス変更申請を放棄したとみなされた場合など)、移民局は10万ドルの手数料の支払い、もしくは国家利益例外の承認がない限り、根拠となるH-1B申請を承認しません。外国人がすでに有効なH-1Bビザを所持している場合は例外があり得ます(詳細は下記質問7を参照)。
4. H-1Bステータスの延長申請は、手数料の対象となりますか?
原則として、対象にはなりません。延長が移民局に申請され承認された場合、そのH-1B申請には10万ドルの手数料は適用されません。ただし、前述のステータス変更申請と同様に、延長申請が却下された場合、移民局は10万ドルの手数料の支払い、もしくは国家利益例外の承認がない限り、根拠となるH-1B申請を承認しません。受益者がすでに有効なH-1Bビザを所持している場合は例外があり得ます(詳細は下記質問7を参照)。
5. 雇用主変更のH-1B申請は、大統領令および手数料の対象となりますか?
場合によります。雇用主変更申請で延長を同時に申請し、その延長申請が承認された場合、当該申請には手数料は適用されません。ただし、雇用主が延長申請をせず、領事通知として雇用主変更申請を提出した場合は、手数料が適用されます。同様に、雇用主が雇用主変更申請とともに延長申請をしたにもかかわらず、移民局が申請自体は承認したものの延長申請を却下した場合も、手数料が適用されます。
6. 受益者の滞在内容を修正するH-1B申請は、手数料の対象となりますか?
原則として、対象にはなりません。受益者の滞在内容修正が移民局に申請され承認された場合、その申請には10万ドルの手数料は適用されません。ただし、滞在内容修正申請が却下された場合、移民局は10万ドルの手数料の支払い、もしくは国家利益例外の承認がない限り、根拠となるH-1B申請を承認しません。受益者がすでに有効なH-1Bビザを所持している場合は例外があり得ます(詳細は下記質問7を参照)。
7. 受益者が以前の申請に基づく有効なH-1Bビザを保持しており、2025年9月20日以降に新たな申請が行われ、その申請が領事通知を要請、または領事通知のみ認可された場合、10万ドルの手数料は適用されますか?
外国人がすでに有効なH-1Bビザを保持しており、通常であれば手数料の対象となる新しい申請の受益者である場合に、手数料の対象となるかどうかは現時点では明確ではありません。例えば、外国人が以前の雇用主または現在の雇用主に基づく有効なH-1Bビザを保持しており、かつ新たに承認された領事通知申請がある場合などです。この質問に回答するには、政府からの更なる指針が必要です。
8. H-1B発給枠の対象から免除されている団体は、10万ドルの手数料の対象となりますか?
特定のH-1B雇用主は、法律上、年間H-1B 発給枠から免除されています。対象には、高等教育機関およびその関連非営利団体、政府系・非営利の研究機関が含まれます。
しかしながら、大統領令および移民局の実施ガイダンスでは、これらの組織に特別な除外規制は設けられておらず、他の理由による例外が認められない限り、手数料の対象となります。例えば、延長、ステータス変更、または修正のいずれかを申請し承認された場合、あるいは雇用主が国家利益例外を申請し承認を受けた場合などです。手数料に関する国家利益例外の詳細については、質問9-11をご参照ください。
新しいH-1B手数料に対する国家利益例外
9. 申請を行う雇用主は、新たな手数料に対する例外の適用を求めることはできますか?
新たな手数料を課す大統領令では、国家利益に合致することを立証出来る場合、個々の従業員、企業、および業界に対して例外が認められる可能性があるとされています。
移民局が発表した新たなガイダンスでは、個々の外国人に関して国家利益例外を申請するための手続きおよび基準が示されています。一方で、企業または業界に対する国家利益例外を付与するための手続きについては、政府はまだ発表していません。
10. 雇用主が従業員のために国家利益例外を得るには、どのような点を立証する必要がありますか?
移民局によると、特定の従業員に対する国家利益例外は、「極めてまれ」な状況においてのみ認められます。雇用主は以下の厳格な要件すべてを満たす必要があります:
- 外国人がH-1B労働者として米国内に滞在することが国家の利益にかなうこと
- 当該職務を担うことが出来る米国人労働者が存在しないこと
- 外国人が米国の安全または福祉に脅威を与えないこと
- 雇用主に対して、その外国人のために手数料の支払いを求めることが、米国の利益を著しく損なうことになること
移民局は、個別の国益例外の申請において、どのような証拠を提示すべきかについては明示していません。他方で、一定の移民要件に関する例外や免除が国益に基づき認められることがあります。例えば、永住権申請における労働認定要件の国益免除(NIW)などです。しかし、同じ基準がH-1B手数料の例外にも適用されるかどうかは、現時点では不明です。さらに重要な点として、手数料の例外を受けるには、雇用主からその手数料を求めることが米国の国益を著しく損なうことを示す必要があり、この新しい基準を立証することは難しい可能性があります。
また、雇用主がH-1B職務を担うことが出来る米国人労働者が存在しないことをどのように示すかも不明確です。労働市場のテストは、H-1Bの通常プロセスには含まれておらず、H-1B従業員の割合が高い雇用主(いわゆるH-1B依存雇用主)や、過去にH-1Bプログラム違反の記録がある雇用主の場合にのみ求められています。
国益例外を検討されたい雇用主は、担当のフラゴメン専門家および弊事務所の政府戦略・コンプライアンス部門にご相談ください。
1. 新しいH-1B手数料に関する国益例外を申請する手続きはどのようなものですか?
移民局は、個別の国益例外は、大統領令の対象となる申請を提出する前に申請し、承認を得る必要があるとしています。申請は、国土安全保障省(DHS)の専用のメールアドレスを通じて提出します。
移民局が、申請が延長、修正、またはステータス変更の対象とはならないケースではあるが、根拠となるH-1B申請が領事通知のために承認可能であると判断した場合、雇用主がどのように例外を申請すべきかはまだ明確ではありません。そのような場合、移民局は追加書類の要請(RFE)や却下意向通知(NOID)を発行し、根拠となる申請は、申請者が10万ドルの手数料の支払い証明または国益例外の承認証明を提出しない限り承認できないと通知する可能性があります。その場合、追加書類の要請や却下意向通知への回答期限までに国土安全保障省から国益例外の承認を取得する必要があります。
10万ドルの手数料の支払い方法
12. 雇用主はいつ、どのように新しい手数料を支払う必要がありますか?また、H-1B申請が却下された場合、手数料は返金されますか?
移民局によると、10万ドルの手数料は対象となる申請を提出する前に支払う必要があります。支払いは財務省の pay.gov ポータルを通じて行う必要があります。雇用主は、H-1B申請を提出する際に、手数料支払いの証明(または国家利益例外の承認証明)を提出する必要があります。
移民局が、申請が延長、修正、またはステータス変更の対象とはならないケースではあるが、根拠となるH-1B申請が領事通知のために承認可能であると判断した場合の手数料の支払い方法についてはまだ指示を出していません。そのような場合、移民局は追加書類の要請(RFE)や却下意向通知(NOID)を発行し、根拠となる申請は、雇用主が10万ドルの手数料の支払い証明または国家利益例外の承認証明を提出しない限り承認できないと通知する可能性があります。その場合、追加書類の要請や却下意向通知への回答期限までに手数料を支払い、支払い証明を移民局に提出する必要があります。
移民局によると、手数料の対象となるH-1B申請が却下された場合、10万ドルの手数料は全額返金されるとされています。ただし、その他のH-1B申請料金は、却下された場合でも返金されません。
13. 移民局が、申請を延長、修正、またはステータス変更の対象とはならないケースではあるが、根拠となる領事通知のためのH-1B申請の承認を、10万ドルの手数料の支払いを条件として行うと判断した場合、雇用主は申請を取り下げて手数料を支払わないことは可能ですか?
雇用主がもはや申請の承認を求めない場合、10万ドルの手数料を支払う義務はありません。その場合、雇用主は申請を取り下げるか、要求に応じずに申請が却下されるままにしておくことが出来ます。
14. H-1Bの受益者本人が10万ドルの手数料を自分で支払うことはできますか?
いいえ、H-1B手数料は申請を行う雇用主が支払う必要があります。H-1Bプログラムの規制では、雇用主の事業費として発生するH-1B関連の手数料を外国人が負担することは認められていません。
国際渡航と10万ドル手数料の関係
15. H-1Bの受益者が申請中に渡航した場合、雇用主は10万ドルの手数料を負担する必要がありますか?
H-1Bの受益者で、ステータス変更を申請中の外国人が国際渡航を行った場合、ステータス変更の申請は放棄されたものと見なされ、手数料の支払いが発生します。一方、延長または修正のH-1B申請中の渡航の場合、原則として手数料の対象にはなりませんが、注意が必要です。
H-1Bの申請中で、延長、ステータス変更、または修正の申請を行っている外国人は、国際渡航の計画を立てる前に、必ずフラゴメンの担当者にご相談ください。
16. H-1Bの受益者が申請承認後に海外渡航した場合、雇用主は手数料を負担する必要がありますか?
延長、ステータス変更、または修正が承認された後の渡航は、原則として手数料の対象にはなりません。移民局のガイダンスによれば、米国内に滞在する外国人のために承認された延長、ステータス変更、または修正のH-1B申請は手数料の対象ではなく、承認後に受益者が米国を出国し、承認された申請に基づいてビザを申請したり、現在有効なH-1Bビザで再入国した場合でも、手数料の対象とはみなされません。
今後のH-1B 発給枠対象申請シーズンにおける10万ドル手数料の影響
17. 2027年度H-1B 発給枠対象案件は手数料の対象となりますか?
H-1B 発給枠対象(H-1B Cap)申請案件が申請され、ステータス変更で承認された場合、その申請は10万ドルの手数料の対象にはなりません。
しかし、移民局がステータス変更の承認ができないと判断した場合(例:外国人が現行のステータスを維持しておらず、米国内でのステータス変更の資格がないと判断された場合)、雇用主は10万ドルの手数料を支払うか、国家利益例外を取得することで、根拠となる申請の承認を受ける必要があります。手数料を支払うか国家利益例外を取得すると、根拠となる申請は領事通知用に承認され、受益者は海外渡航してH-1Bビザを取得し(ビザ免除の場合は除く)、H-1Bステータスで米国に再入国できるようになります。移民局は、ステータス変更の承認ができないことを通知する際(追加書類の要請や却下意向通知の形で通知される可能性が高い)、手数料支払いの手順を案内すると予想されます。
18. 多くのH-1B CAP受益者はF-1学生です。10万ドルの手数料は彼らにどのような影響がありますか?
F-1学生を対象に、H-1Bへのステータス変更を求める申請は、提出時点では10万ドルの手数料の対象にはなりません。しかし、移民局が受益者がF-1ステータスを維持していなかったと判断した場合、あるいは申請中にF-1学生が国際渡航を行い、ステータス変更申請が放棄されたと見なされた場合、ステータス変更申請は却下され、雇用主が10万ドルの手数料を支払うか国家利益例外を取得しない限り、根拠となるH-1B申請は承認されません。
そのため、F-1学生は外国人学生としての義務を遵守し、渡航制限など自分のケースに適用される規制に従うことが、以前にも増して重要になります。
F-1学生は、必要なSEVIS報告を期限内に行うこと、在学中であればフルタイム履修を行うこと(ただしDSOにより減免が承認されている場合を除く)、OPTおよびSTEM OPT中に最大失業期間を超えないこと、無許可の就労を避けることなど、さまざまな義務を遵守する必要があります。
外国人学生ステータスを維持できない場合、F-1学生がH-1Bへのステータス変更を申請する際には常に重大な不利益が生じます。移民局がF-1ステータスを維持していなかったことを理由にH-1Bステータス変更申請を却下した場合、その外国人はCAP-GAPの恩恵や60日間のF-1猶予期間の対象外となり、ステータス変更却下日から不法滞在が開始されます。その場合、直ちに就労を停止し、米国を出国する必要があります。さらに、大統領令に基づき、申請者の雇用主は、根拠となるH-1B申請が承認される前に、10万ドルの手数料を支払うか、国家利益例外の承認証明を取得する必要があります。
最後に、H-1Bへのステータス変更を申請中のF-1学生は、国際渡航を避けるべきであり、やむを得ず渡航する場合は潜在的な不利益を理解しておく必要があります。移民局でステータス変更申請中に渡航した場合、ステータス変更は放棄されたものと見なされ、10万ドルの手数料が発生します。しかし、ステータス変更申請の承認後に渡航した場合、承認済みのステータス変更が取り消されることはなく、手数料も発生しません(詳細は上記質問15を参照)。
19. F-1学生に滞在期間の上限を設ける規制案は、彼らのH-1B雇用主が10万ドルの手数料の対象となるかどうかに影響を及ぼす可能性がありますか?
国土安全保障省(DHS)は、留学生、交流訪問者、および外国報道関係者に対して、従来の「滞在期間=ステータス有効期間」という政策を廃止し、特定の滞在期間を設ける規制案を提示しています。
この規制は現在、提案段階にあります。しかし、もし提案通りに最終化された場合、F-1学生(およびJやIビザの非移民)も、指定された入国期間を超えて活動を続ける場合には滞在延長の申請が必要になります。例えば、F-1学生が修学後にOPTを行う場合、通常のOPT就労許可証(EAD)の申請に加え、滞在延長の申請も行う必要があります。滞在延長を適時に申請せずにステータスが途切れたり、移民局がF-1ステータス違反と判断して延長申請を却下した場合、将来H-1Bへのステータス変更申請に影響を与える可能性があり、その結果、雇用主がF-1学生のH-1B申請に際して10万ドルの手数料を支払う必要が生じる可能性があります。
大統領令および手数料に対する訴訟の動向
20. 大統領令および手数料は、裁判所によって一時停止または無効にされる可能性はあるのでしょうか?また、裁判所は大統領令に対して全国的な差し止め命令を出すことができるのでしょうか、それとも特定の地域に限られるのでしょうか?
H-1B大統領令に対して、すでに連邦裁判所に2件の訴訟が提起されています。いずれの訴訟も、大統領令の無効を宣言する判決およびその実施に対する恒久的な差し止め命令を求めています。
これらの訴訟の原告は、現時点で大統領令に対する一時的な執行停止や仮差し止め命令の申立ては行っていませんが、最新の移民局のガイダンスにより、裁判所に対して中間的救済を求める可能性があります。中間的救済が認められた場合、それが全国的に及ぶか、発令裁判所の管轄区域に限定されるかはまだ不明です。しかし、両訴訟は行政手続法に基づく請求を主張しており、全国的な救済を認めることが可能です。裁判所が差し止め命令を発令した場合、全国規模であれ限定的であれ、トランプ政権が判決を控訴する可能性は高いと考えられます。
- USCIS、10月30日以降に提出された多くの就労許可(Employment Authorization Document - EAD)更新申請に対する効力の自動延長を終了
概要
- 米国移民局(USCIS)は、在留資格変更申請者やH-4ビザ就労許可証(EAD)更新申請者を含む多くのEADカテゴリーで適用されていた、最大540日間の自動延長措置を廃止します。
- 暫定最終規則として発効する新方針は、2025年10月30日以降に提出される特定のEAD申請に適用されます。10月30日以前に提出されたEAD申請の自動延長には影響しません。
- 新規定では、EAD更新申請者の就労許可は、別途の就労許可がない限り、EAD有効期限の翌日に失効します。就労許可は新規発行EADの開始日に再開されます。
- 本規則は公示・意見募集の機会なく即時発効されました。法廷で争われる可能性があります。
問題点
国土安全保障省(DHS)の新規暫定最終規則(Interim Final Rule - IFR)により、2025年10月30日以降に雇用許可証(EAD)の更新申請を期限内に提出した特定の外国人に対する、最大540日間の自動延長が廃止されます。
この暫定最終規則は、10月30日以前に自動延長されたEAD、または法律もしくは連邦官報通知により別途延長されたEADの有効性には影響を与えません。
DHSは、行政手続法上の「正当な理由」および「外交上の事情」の例外を根拠として、公的意見聴取を省略する決定を下し、事前通知・意見募集期間を設けることなく本IFRを即時発効させました。
IFRの適用範囲と運用
IFRは既存の国土安全保障省(DHS)規則を改正し、10月30日以降に提出された更新申請における特定の就労許可証(EAD)に対する最大540日間の自動延長を廃止します。影響を受けるEADカテゴリーの一覧は以下の通りです:
- 在留資格変更申請者(C09);
- 難民及び亡命許可者(A3及びA5);
- 庇護及び国外退去・送還保留の申請を適切に提出した非市民(C08);
- 女性への暴力防止法(Violence Against Women Act)に基づく自己申請が承認された者及びその適格な子(A31);
- 有効なH-4ビザ資格の I-94を保持するH-4配偶者(C26);および
- 一時保護ステータス(Temporary Protected Status - TPS)(A12またはC19)(ただし、特定のTPS保持者層に対するTPS就労許可証の自動延長を定める連邦官報の別通知がある場合、TPS就労許可証は包括的自動延長の対象となる可能性があります)
暫定最終規則は、L及びE非移民の配偶者は「在留資格に伴う」就労許可を有し、就労許可証(EAD)を必要としないことを認めています。本規則によれば、配偶者がEADの取得を選択した場合でも、配偶者としての就労許可は、現在のI-94に記載された配偶者非移民ステータスが有効である限り、「ステータスに付随する」就労許可により、EADの有効期限後も有効とみなされます。
さらに、STEM分野における就労許可延長を申請するF-1学生は、本暫定規則の影響を受けません。別途の規制規定に基づきSTEM EAD申請を期限内に提出すれば、180日間の自動延長が適用されます。
新政策の影響を受ける外国人は、更新申請を現行EADの期限内に提出してもEADの自動延長を受けられなくなります。就労許可はEADカードの有効期限翌日に失効し、新たに発行されたEADの開始日まで就労はできません。(当該外国人が空白期間をカバーする別の就労許可を有する場合を除く)。
背景
2016年、米国移民局(USCIS)は、特定の就労許可証(EAD)更新申請者について、同一の就労許可カテゴリーで期限内に更新申請を行った場合、EAD有効期限から最大180日間の就労許可の自動延長を認める規則を公布しました。
2022年春、USCISは自動延長期間を一時的に最大540日間に延長しています。この措置は、EAD更新申請者に就労許可の空白期間が生じるリスクを軽減することを目的としていました。USCISは2024年12月、この540日間の自動延長を恒久化し、2025年1月に発効させました。今回発表された国土安全保障省(DHS)の暫定規則(IFR)は、この特定の自動延長を完全に廃止します。IFRの意思決定プロセスに関する議論の中で、当局は180日間の自動延長を復活させることを検討しましたが、そうしないことを決定したと述べています。
雇用適格性確認
USCISは、新方針に基づくI-9フォーム記入に関する具体的なガイダンスを従業員および雇用主に提供するため、USCISウェブサイトのI-9 Centralおよび雇用主向けハンドブックM-274を更新すると発表しました。
雇用主と外国人労働者への影響
影響を受ける外国人労働者(在留資格変更申請者やH-4ビザに基づく就労許可証保持者を含む)は、就労許可の空白期間を回避または最小限に抑えるため、就労許可証更新申請を可能な限り早期に提出すべきでしょう。通常、就労許可証更新申請は有効期限の6ヶ月前から提出可能ですが、USCISの申請審査期間は6ヶ月を超える場合があります。
4. 国土安全保障省、生体認証情報の収集・利用の大幅拡大を提案
概要
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- 国土安全保障省は、現行の生体認証収集方針を拡大し、掌紋、顔認識、音声認識、虹彩・網膜画像を含む眼球画像、DNAなどの技術を追加する規制を提案しています。
- この規則が提案通り確定した場合、ビザやグリーンカード、就労許可などの移民法上の恩恵を認められた外国人は、米国市民権を取得するまでの滞在期間中、継続的な生体認証スクリーニングと審査の対象となります。
- 新規則では、生体認証収集の対象者が拡大され、ビザ申請に関与する米国市民も含まれるようになります。また、収集対象が14歳未満の個人にも拡大されます。
- 本規則は11月3日に正式に提案され、60日間の一般からの意見公募期間が設けられます。規則は最終決定されるまで発効せず、このプロセスには通常数か月以上を要します。
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問題点
国土安全保障省(DHS)は、移民法の執行および管理における生体認証情報の収集と利用を大幅に拡大しようとする規制案を発表しました。この規則により、外国人は米国入国後に定期的な生体認証情報の収集と継続的な審査の対象となります。生体認証収集の年齢制限を撤廃し、ビザ申請のスポンサー、申請書への署名者、およびビザ申請に関連する者(米国市民を含む)を生体認証収集の対象とします。
規則は2025年11月3日に連邦官報に掲載される予定です。同省は、規則案および関連する米国市民権移民局(USCIS)移民申請書式改訂案について、公示後60日間一般からの意見を受け付けます。
国土安全保障省(DHS)は、トランプ政権第1期の終盤にあたる2020年9月に同様の規則案を発表していました。その後、バイデン政権移行チームが2021年5月にこの提案を撤回しましたが、トランプ政権第2期がこの施策の復活を図っています。
詳細な内容
国土安全保障省(DHS)の提案には、生体認証情報の収集と利用に関する以下の変更が含まれています:
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- 移民法上の恩恵(ビザや就労許可、渡航許可、グリーンカード等)を認められた外国人は、米国市民権を取得するまでの滞在期間中、定期的に生体認証情報を提供し、審査と精査の対象となることを義務付けています。
- ビザ・移民法上の手続きを行う者、またはそのような申請に関与する者(米国市民を含む)全員(免除対象者を除く)に生体認証情報の収集を拡大します。現在、米国市民は生体認証情報の提出義務の対象外です(特定の状況下における家族ベースの移民恩典のスポンサーを除く)。拡大された生体認証情報の提出義務の対象者には、申請者、申請書への署名権限者、スポンサー、支援者、受益者、その他移民法上の申請手続きに関与する者が含まれます。国土安全保障省(DHS)によれば、提案規則の目的上、申請に実質的な関与または参加があった個人は、当該申請に関連するとみなされます。
- 現在、14歳未満の児童は生体認証要件が免除されていますが、今回の拡大された要件は年齢に関係なく適用されます。
- 国土安全保障省(DHS)が使用する生体認証技術の種類を拡大し、顔画像、指紋・掌紋、筆跡署名、眼球画像(虹彩・網膜・強膜画像を含む)、音声(音声パターン・音声認識・声紋を含む)、DNA(部分DNAプロファイル)を含めます。現在、生体認証情報の収集は一般的に指紋、写真、署名のみを対象としています。
- ビザや就労許可、渡航許可などの申請の適格性を判断するため、または米国移民・帰化法の施行・執行に必要な範囲において、申請書類の記載された(または未記載の)遺伝的関係性もしくは個人の生物学的性別の存在を確認するため、DHSが生体情報として生データDNAおよび/またはDNA検査結果の提出を要求・要請・受理することを提案しています。現行法では、DHSは申請者が主張する関係性の証明や生物学的性別の確定のためにDNA検査結果を要求できません。これは、家族ベースの移民申請に際し、親子・兄弟・親族関係の証明や性別確認の為、広くDNAデーターを利用すること意図するものです。
- 移民申請の審査、または法で認められる範囲での法執行目的において、DHSがDNA検査結果を利用、保管、共有することを提案しています。
- 移民申請または請願書を提出する個人から収集する生体認証情報の目的を拡大し、犯罪歴および国家安全保障上の身元調査に加え、身元登録・確認・管理、安全な書類作成、ならびに移民法および帰化法の施行・執行のためのその他の用途を含めて利用されます。
- 義務付けられた面接の再予約、または生体認証予約の2回目以降の再予約を正当化する基準を、現行の「正当な理由の提示」から、予定通りの出頭を妨げる「特別な事情」の提示を要求するより厳格な基準に引き上げます。本規制では、特別な事情に該当する可能性のある事例についてのガイダンスは提供されていません。
- DHSが過去に取得した生体認証データを再利用する権限を、新規申請の対象者が過去の申請で生体認証データを提出した同一の個人であることを、生体認証に基づく確実な検証によってDHSが確認した場合に限定します。
- 外国人の逮捕時には、年齢を問わず、国外退去手続きの処理、保護、拘留、手続き開始の目的で生体認証データの収集を許可します。
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雇用ベースの移民申請に対する提案の影響
もしこの規制案が提案通り最終決定された場合、本規制は主要な雇用ベース移民申請における生体認証情報の収集範囲を次の通り拡大します:
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- 移民上の利益(就労ビザ取得者及びその外国籍扶養家族を含む)を付与された後、米国に滞在する外国人は、米国市民権を取得するまでの間、随時、定期的な生体認証情報の収集及び身元調査の対象となる。
- 特定の雇用ベース申請(I-140移民労働者請願書、雇用ベースの在留資格変更申請における雇用オファー確認書(Supplement J)やポータビリティ請求など)のスポンサー企業及びその署名権限者は、生体認証情報の収集対象となる可能性がある(詳細は未確定)。
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投資ベースのグリーンカード申請であるEmployment Based Fifth Preference (EB-5)地域センタープログラムにおいては、地域センターおよび地域センタープログラム下の新規企業・雇用創出事業体に関連する個人(米国市民または合法的永住者を含む)が、生体認証情報の収集および継続的な審査の対象となります。
提案規則の今後の流れ
11月3日の連邦官報掲載後、60日間の一般からの意見提出期間が設けられ、この期間に今回の提案に対し意見を述べることができます。
意見募集期間終了後、国土安全保障省(DHS)は寄せられた意見を精査し、連邦官報への最終規則公布に向けた準備を進めます。規則の一部は、一般からの意見に基づき修正される可能性があります。最終規則の公布時期は未定ですが、通常このプロセスには数か月を要します。
生体認証情報の収集・保管・審査の拡大はプライバシー保護上敏感な問題であるため、強い反発が予想されます。最終規則が公布された場合、法的異議申し立ての可能性もあるでしょう。













